アグリフッドとは
アグリフッドは、agricultural(農業の) neighborhoods(ご近所・界隈)を略した造語で、農園体験を核とした宅地開発を指します。共同使用できる菜園やキッチンをぐるりと取り囲むように住宅を建築するなど、農園関係の施設が住居と一体となって整備され、アグリフッド区域内で暮らす住人同士が地元の「農」を支えながらコミュニケーションを図るのが特徴です。
現在、米国内では100を超えるアグリフッドが整備されており、なかにはアトランタなどの大都市からほど近いエリアもあるそうです。
田園風景に親しみつつ、都会的な住居に暮らす
カリフォルニア州オレンジカウンティーに位置するランチョ・ミッション・ビエホでは、牧畜に活用されていた広大な土地の宅地開発が進められています。「エセンシア」と「センデロ」の二つのエリアでは、共同農園や住宅が整備され、アグリフッドに魅せられた人々が暮らしています。
エセンシアでは、住民が農園体験に参加する「ファームプロジェクト」を展開。参加を希望する住民は毎月、菜園の利用料金を支払うとともに、ボランティア活動で農作業を行います。かわりに、菜園が開いているときはいつでも新鮮な野菜を採ることができます。
また、収穫した野菜を使ってバーベキューを楽しんだり、定期開催の料理教室に通ったりして交流を深めているそうです。2,000年代に成人となるミレニアル世代が中心ですが、会社をリタイアした世代も入居可能。ソーラーパネルを屋根に搭載した都会的で洗練された住居に暮らしながら、田園風景に親しみ、スローライフを楽しんでいます。
新規就農者の育成にも一役
農地を手に入れることが難しい新規就農者を救済するためのアグリフッドもあります。カリフォルニア州デイビス市内のザ・カナリーでは、トマトの缶詰工場だった土地が、宅地と農地に生まれ変わりました。開発業者から農地を譲り受けた市が、地元NPO法人を通じて新規就農者に貸し出すことで、農業の担い手育成に一役買っています。
日本では、農林水産省が2016年5月、市街地で農業を営む「都市農業」の振興を図る基本計画を策定。農を核としたまちづくりを進める動きが出ています(※1)。アグリフッドが日本に上陸する日もそう遠くないかもしれません。