秋には稲も魚も収穫!太古から続く美しい農法
水田養魚は、漢王朝時代の土器にその様子が描かれており、2,000年以上の歴史があると言われています。
中国東南部の海沿いにある浙江省青田県竜現村という小さな村では、約700年前から水田養魚が行われてきました。竜現村は山に囲まれた地形をしていて、人口当たりの耕作地が少ないため、限られた土地を有効利用しようと、水田で魚の養殖も行われるようになったといいます。村には100ヶ所以上も池があり、水田養魚には適していたのでしょう。
養殖される魚は田魚と呼ばれ、鯉の一種で、赤、黄、白、黒色の4種類があります。稲の隙間から色とりどりの魚がのぞき、昔ながらの青々とした田園風景が広がる村に独特の彩りを添えます。
田魚は、9月の稲刈りシーズンにすくい上げられます。日々の食料としてだけでなく、干物などにして市場で売られ、村人の貴重な収入源ともなっています。村には田魚を嫁入り道具とする風習があり、水田養魚がいかに村人の生活に密接に結びついていたのかが分かります。
一緒に育てれば、美味しくなる!? 驚きの相乗効果
稲作と養魚を同じ場所で同時に行うシステムは、様々な相乗効果を生み出します。
田魚は、肥料や水分をうばうタイワンヤマイやコナギなどの雑草を食べてくれるので除草作業をする手間を省くことができます。さらに、田魚は水中に酸素を供給します。水面を波立てて泥を掘り返しながらエサを探すので、養分を撹拌(かくはん)することで稲の成長を助けてくれるという効果もあります。
一方、稲は魚に日陰やエサを与えます。水田には山から流れてきた良質な水があるので、ここで育つ魚はやわらかく美味しいのだそうです。
このように同じ場所で育てることは稲と魚の双方に多くのメリットがあり、稲作の収穫量と漁獲量を共に増加させるという驚きの効果も報告されています。