【健康をめざす家庭の薬膳】薬膳誕生の歴史

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【健康をめざす家庭の薬膳】薬膳誕生の歴史

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【健康をめざす家庭の薬膳】薬膳誕生の歴史
最終更新日:2019年09月09日

薬膳は、古くから中国において発展してきました。薬膳はいつ頃どのようにして誕生し、発展をしてきたのでしょうか。中国では、各時代において薬膳の発展の過程で重要な役割を果たす書物が記されてきました。その書物には、現在の薬膳の基本となっている考えが著されています。いくつかの書物に記された内容を参考に、薬膳誕生の歴史と中国に受け継がれている「未病の改善」、「医食同源」などの思想について紹介していきます。

薬膳の誕生

薬膳の歴史

薬膳が誕生したのは、紀元前までさかのぼること今から3,000年ほど前の中国でのことになります。その頃、「神農(しんのう)」という中国の伝説上の人物が現れ、神農は手に入る植物を自らの口の中に入れていきました。

空腹のときにお腹をふくらませるのに良い植物はどれか、具合が悪いときに体の調子を整えるのはどの植物か、などを次々と確かめます。それらに毒は含まれていないか、生薬としての効能はどのようなものかを一つ一つ確認していきました。

神農は、生薬学の祖とも呼ばれていて、現在残っている最古の本蔵書である『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』は、神農が確かめたそれらの植物に関する情報をまとめたものです。

薬物の3つの分類:上品、中品、下品

薬膳の歴史

『神農本草経』の中では、薬物を3つの種類に分類しています。長く食べ続けて問題のないもので、不老不死が叶えられるという上品(じょうぼん)、病気の際に治療薬として使うものを中品(ちゅうぼん)、薬としての効力は強いが同時に強い毒性も含んだものを下品(げぼん)として分けられています。

不老不死を目的として食べることのできる上品は、ほとんどが食用となっている植物で、高麗人参や大棗(ナツメ)、胡麻、枸杞(クコ)、山薬(サツマイモ)などが代表的なものとなっています。これらは、現在も中国において日常的な食べ物です。

医師の4つの分類:食医、疾医、瘍医、獣医

薬膳

周の時代に書かれた書物である『周礼(しゅうらい)』には、医師の分類について記されたものがあります。この本の中では、医師は「食医」、「疾医」、「瘍医」、「獣医」の4つに分けられています。

「疾医」は内科医、「瘍医」は外科医、「獣医」は今と同じ獣医を意味します。では、日本では聞きなれない「食医」とはいったいどのような分野の医師を指すのでしょうか。

食医とは

薬膳

「食医」は皇帝に提供する毎日の食事を考え、管理する医師のことです。皇帝が病気にかかることなく、健康で長生きできるように、皇帝の食事と健康の管理を任されていたのが「食医」です。周の時代は、この皇帝に遣える「食医」が医師の中でも最高のランクとされていました。

このことから、中国では古来より食事が健康な体を作るという、食事による予防医学の考えが存在していたことがわかります。また、病気になってから治療を施す「疾医」よりも「食医」が最高ランクの医師としての位を与えられていました。中国では「未病を治す」という病気になる前に病気の発症を未然に抑えることが、医学上重要視されてきたとうかがい知ることができます。

漢の時代にもあった食事の基本ルール

漢の時代に書かれた漢方書である『黄帝内経素問(こうていだいけいそもん)』の中に書かれた言葉に「五穀を養とし、五果を助とし、五畜を益とし、五菜を充とす。気味を合わせて、之を復せば、以て精を補い、気を益す」という考え方があります。

穀は穀類、果は果実類、畜は肉類、菜は野菜類を指しています。同じ種類の食べ物ばかりを食べるのではなくこれらをうまく組み合わせて、バランスよく摂取すれば、精力を補って気力を増すことができるということが書かれています。

現代においても、それぞれに含まれている栄養素を考えて肉や野菜、炭水化物や果物などをバランスよく食べることが大切だと言われています。中国においては、漢の時代からすでにバランスのよい食生活を送ることの重要性が説かれていたことがわかります。

『本草綱目(ほんぞうこうもく)』

薬膳

16世紀に入ると、現在も食べている食べ物についてほぼ網羅された薬物書が刊行されました。『本草綱目(ほんぞうこうもく)』は、李時珍(り じちん)という本草学者によって記されたもので、自身の経験に基づいてさまざまな食品の効能が書かれています。

ここには植物や動物だけでなく、鉱物までも含めた1,897種類の物の性質、薬効、適応症、禁忌、使用方法などが非常に詳しくまとめています。

漢方的薬膳

薬膳

中国では、食べ物を病気の改善や体調の改善に用いる食事療法だけでなく、漢方生薬を料理の中に取り入れた漢方的薬膳も同時に発展してきました。中国において現在も良く料理に用いられる生薬をいくつか紹介します。これらは漢方薬膳として飲食店で提供されるものばかりでなく、中国の一般家庭において料理の中でもよく用いられるものです。

上品(じょうぼん)

大棗(ナツメ)、枸杞(クコ)、薏苡仁(ハトムギ)、山薬(サツマイモ)など

中品(ちゅうぼん)

生姜、葱白(ネギ)、杏仁(アンズ)、烏梅(※1)、当帰(※2)、貝母(※3)、鹿耳(※4)など

下品(げぼん)

附子(※5)、半夏(※6)、連翹(※7)など

※1 烏梅(ウバイ):梅を加工したもの
※2 当帰(トウキ):セリ科トウキ属植物の根を乾燥したもの
※3 貝母(バイモ):アミガサユリの別名
※4 鹿耳(ロクジョウ):シカ科の満州アカジカまたは満州ジカの雄の幼角を乾燥したもの
※5 附子(ブシ):キンポウゲ科シナトリカブトの子根を乾燥させたもの
※6 半夏(ハンゲ):サトイモ科カラスビシャクの球茎の外皮を除いて乾燥させたもの
※7 連翹(レンギョウ):モクセイ科のレンギョウやシナレンギョウの果実を乾燥したもの

このように中国では、医食同源の思想が紀元前の時代から途切れることなく受け継がれ、現在の中国における市民生活の中にも自然に取り入れられています。体に良いものをバランスよく食べて病気を未然に防ぐという未病の考えは、今も中国の人々の間には根強く浸透しています。

薬膳

参考書籍:『台所薬膳 身近な食べ物135種の薬効を活かす』(万来社)

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