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「農業を特別視しない」 生産力・販売力・働きやすさ向上計画(2/2)

「農業を特別視しない」 生産力・販売力・働きやすさ向上計画

全国でも有数の農業産出額を誇る茨城県鉾田市。年間を通して温暖な気候に恵まれた土で、ホウレンソウの周年栽培を手掛ける田口真作(たぐちしんさく)さんが、茨城県職員から転身して、親元に就農したのは2010年のこと。2年目に父から経営を委譲され、すべての責任を担った田口さんは「家族との時間を確保し、私生活を充実させることと、公務員時代より稼げる農業経営」を目標に掲げます。農業を特別視しないで、当たり前の生活を実現するために。選択と集中で「新しい農業の姿」を追い求める農業経営者。昨日より今日、そして明日。その改善の日々の経過をうかがいました。

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田口農園の働き方改革



契約栽培で最も留意するのは欠品を防ぐこと。そのため、田口農園では一年の中でも出荷量が少ない夏を基準に契約数量を設定し、契約数量以外を市場出荷分として栽培しています。収穫したホウレンソウを一定期間在庫として持ち、出荷数の調整を図るために、予冷庫を新設したことで、田口さんの「なぜ」の一つだった生産者の手による〝出荷″の作業を、買い手に担ってもらう〝集荷″への移行も実現しました。

ホウレンソウの専作によってもたらされた収益の安定は、周年雇用という機会を生みます。2015年、田口農園は株式会社として新たな一歩を踏み出しました。就業規則を制定し、社会保険にも加入するなど、安心して働ける職場に整備したことで、それまで外国人技能実習生に求めていた労働力を、正社員に担ってもらえる環境に。2013年にパート3人・実習生3人だった構成を、翌年、正社員2人・パート5人という体制へ切り替えました。実習生は、3年で帰国する制度なので、期間中に最大の収益を得たいために、残業を希望する意識が強い傾向にありました。それは「長期的に技術を習得してほしい、日常業務の中で残業を減らしたい」という田口さんの考えにそぐわないもの。

農業に従事すると同時に会社で働く。正社員として入社してくれたスタッフとは、労使一緒になって働きやすさの改善に取り組んでいます。「毎週日曜日が定休日。就業時間は8時から17時まで。働きたい日に出勤OK」というのが現在の雇用条件。それによってもたらされる長期の安定雇用は、トライ&エラーの共有など、職場内のコミュニケーションを活性化させ、作業能力の向上にも寄与しています。

新しい農業の姿を追い求め、ノンストップの日々



経営者になったときに描いた「所得1000万円、週1日の休日確保、残業ゼロ」という5年後の姿。計画・活動・評価・改善を繰り返し、それを達成して以降も、田口さんの経営者としての挑戦は続きます。ホウレンソウ栽培においては、夏季の収量増加施策の一つである土の研究、ハウス規模の拡大、ICT技術を活用した自動潅水の導入、栽培しやすい冷涼地の第二農場の整備など。雇用面では、子育て世代の雇用の受け皿となるような労働体制づくり。いずれは海外生産やコンサルティングまで。慣習にとらわれず、それまでの常識に縛られない。選択と集中で「新しい農業の姿」を切り開いてきた田口さんの目指す先は、ホウレンソウの日本一。「その日まで、ノンストップ」と自分に誓う田口さんのホウレンソウ物語は始まったばかりです。

株式会社 田口農園
茨城県鉾田市勝下293-3
https://ja-jp.facebook.com/taguchifarm/

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