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提言「農業を核とした地域産業を構築すること」

提言「農業を核とした地域産業を構築すること」

有限会社伊豆沼農産 代表取締役
伊藤秀雄(いとうひでお)
養豚・水稲を中心に、ハム・ソーセージの加工、農家レストランおよび直売所の経営を行う農業生産法人として、1988年に設立。農畜産物の6次産業化の先駆けとして、地域の農家と連携した食品の一貫生産販売システムを確立するほか、「伊豆沼ハム」「伊達の純粋赤豚」などの食品ブランドを展開している。

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提言「農業を核とした地域産業を構築すること」

私ども伊豆沼農産は、ラムサール条約にも登録されたわが国最大級の渡り鳥の越冬地、宮城県登米市の伊豆沼のほとりで、農場、加工場、農産物直売所、レストラン、食農の体験スペースを運営しております。今から30年前、稲作と養豚を中心にした農業の複合経営からスタートし、食肉製品の加工・販売・処理業、直売所・飲食店営業に事業範囲を広げてきました。

経営者の視点からは「多角化」を行ってきたと映るでしょうが、実際はそうではありません。私たちは「農業を食業に変える」という目標を掲げ、農業に求められる農産物の生産だけでなく、地域の「人」「もの」「環境」といった価値を加えた農村に最もふさわしい「産業」の創造を目指してきました。「農産物」を「食品」にするその過程すべてに関わること。「農業」の枠に当てはまらない、私たちの「ものづくり農業」が追い求める理想の姿を「食業」という言葉に表わしました。

私は、自分のこれまでの経験と、これからの活動を通して、「農業を核とした地域産業を構築すること」を「農村産業」と称して、そのビジネスモデルを提唱します。

わが国はいま、超高齢化社会を迎えています。その先に明らかになっているのは、経験したことのない急激な人口減少です。地方の活性化が叫ばれる中ですが、どのように地域を維持し、守っていくかは喫緊の課題です。

「農業を核とした地域産業を構築すること」は、農作物を生産するだけだった従来の農業に、そこでしか得られない「地域資源」という付加価値を与えることで、その地域にオンリーワンの魅力を獲得することです。

「そうは言っても、自分の住む場所には資源なんてない」という声もあるでしょうが、私はそうは思いません。なぜなら、「地域資源は見つけ出すもの」だからです。その地で生きる人々が探して、掘り起こす活動を行わなければ、そこにしかない魅力は埋もれたままです。

私は自社で提供する新商品を開発する際に、伊豆沼の自然の力を借りられないかと考えました。パンづくりに必要な酵母は自然界にたくさんあることはわかっています。この土地ならではのパンを作るために、探索・調査した結果、伊豆沼の水から酵母、沼の周りに自生するススキから乳酸菌が得られることがわかりました。その酵母菌は「パン」や「どぶろく」作りに利用していますし、乳酸菌は生サラミを作る工程で使用しています。

ビジネスとして儲かることや、すぐに真似できることは、他の地域と足を引っ張り合うだけですが、誰もが真似することのできない、その土地ならではのオンリーワンは、小さくともナンバーワンの輝きを放つはずだと信じて、私はこれからも、地域の方たちと一緒に、オンリーワン探しを続けます。みんなで見つけ出した地域の魅力を、コンテンツとしてまとめあげ、情報発信していきます。伊豆沼のほとり、登米市新田地区の挑戦が、「農業を核とした地域産業を構築すること」の成功モデルとなるように、企業人としてだけではなく、地域の活性化を願う一住民としても、力を注いでいきます。

これまで、「農業を核とした地域産業を構築すること」という提言内容から、地方に寄せた話を続けてきました。最後に、地方や都市という括りに関係なく、私たち日本人が健康で文化的な生活を維持していくために、私たちができることを提案させていただきます。

「一緒に農を語りましょう。自然に学びましょう」。

自然は時に、私たちに脅威を与えることもありますが、人間の命をつないできたのもまた、自然の力によるものです。

先にわが国の人口減少について触れましたが、世界に目を向けると、急速な人口爆発が予想されています。それは、私たち日本人の価値観を根本から変えることになるでしょう。食料や水が、空気のように当たり前にある環境ではなくなります。すぐそばまで迫っている食料難の時代に眼を背けてはなりません。今こそ、私たち日本人一人一人が食料生産について、真剣に向き合うタイミングだと思います。国民全員で、農業に携わろうというわけではありませんが、「農業」を「食料」に、「農村」を「環境」という言葉に置き換えて、他人ごとではなく、自分ごととして捉える。食料を生産する環境に思いを馳せて、生産者と消費者が、共に支えあう国にしていきましょう。

2018年3月9日(金)開催! NEXT AGRI MEETING

農業活性化をテーマに
「生産者」「農業支援を行う企業」「消費者」たちが集う!

農業支援を行う企業・団体による講演、商談可能なブース設置、交流会を通じ、異なる立場の方と接点を持つことができます。お悩みや課題の解決、情報収集に是非お役立てください。参加のお申し込みはこちらから。

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