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東京・大阪で稼働中 手軽さが魅力の「カットリンゴの自販機」とは

東京・大阪で稼働中 手軽さが魅力の「カットリンゴの自販機」とは

農産物の販売やマーケティング等を行うエム・ヴイ・エム商事株式会社は、2007年にカットリンゴの製造・販売を開始しました。2011年には、カットリンゴ自販機を地下鉄駅構内に設置。現在は、東京と大阪を中心に22台が稼働しています。手軽に新鮮なリンゴが食べられるので人気も高いそうです。今回は、エム・ヴイ・エム商事株式会社の奥田七理恵(おくだなりえ)さんに、話をうかがいました。

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リンゴの栄養価と機能性の高さに潜在需要を見込む

近年、日本では「値段が高い」、「皮をむく手間が面倒」、「1人では食べきれない」といった理由から、若者の果物離れが進んでいるといいます。一方で、手軽に食べられて栄養価も高い、キウイやバナナの消費は好調で、果物を使ったスムージーなど加工品の需要が伸びているという現実もあります。

そこで、エム・ヴイ・エム商事株式会社は「国内消費量が減っているリンゴを、もっと多くの人に食べて欲しい」という思いで、カットリンゴ『アップルスイーツ』の販売を始めました。

「リンゴには、昔より健康に良い果物として広く知られています。そこで、リンゴもスナック感覚で手軽に食べられるようにすれば、多くの人が手に取るのではないかと考えたのです」と奥田さんは語ります。

アメリカで、カットしたリンゴがファーストフード店やスーパーで販売されているのを見たことも、事業の後押しとなりました。「現在、世界各国でカットフルーツの需要が伸びており、日本でも販売のチャンスがあると思ったからです」。

変色を抑える技術開発で、カットリンゴの販売を実現

優れた果物であるリンゴですが、切った後にすぐ茶色く変色してしまう理由などから、これまでカットリンゴの販売は難しいとされていたそう。

リンゴの変色は、果実が切られる際に、果肉に含まれるポリフェノールが空気中の酸素に触れ、酸化することで起こります。変色を防ぐためには、リンゴの切り口を空気に触れさせない、あるいは、酸化を促進させる酸化酵素の働きを抑える物質を加える必要があるそうです。

「家庭でもよく、カットしたリンゴを塩水につけたり、レモン汁をかけたりしますよね。当社はレモン汁や塩水の代わりに、ビタミンCとカルシウムを使う独自の技術を開発しました。

ビタミンCはポリフェノールの酸化を防ぎ、カルシウムは酸化酵素の働きを抑えます。カルシウムがリンゴの細胞内にある、空気の層に入り込むことで、パリッとした食感と瑞々しさを保つことも可能となります。当社で販売しているカットリンゴ『アップルスイーツ』は鮮度を11日間保つことができます」。

リンゴは青森県つがる市産をはじめ、長野県産、山形県産などを使用。皮をむいて使用するため、果実の外観はあまり気にしなくて良いそう。そのため、リンゴが赤く綺麗に色付いているかを確認する着色管理作業の手間が減るので、農家の省力化にもなるといいます。

地下鉄駅構内にカットリンゴの自販機を設置

「当初、『アップルスイーツは80g(4切入)のものを、スーパーで販売しようと考えていた」と奥田さん。しかし、売れ行きは芳しくなく、エム・ヴイ・エム商事株式会社は販売手法を再考。コンビニエンスストアで販売を始めたところ、スーパーよりも売り上げが好調だったとそうです。

その後、コンビニエンスストアよりも手軽で便利な販売手法として、自販機での販売を考案。2011年1月には、東京メトロ霞ヶ関駅に世界初のカットリンゴの自販機が設置されました。

「設置に至ったきっかけは、当社の社員が築地駅の駅長に、『カットリンゴを自販機で販売してみたい』と相談したことでした。

その後、東京メトロの物販会社を紹介してもらい訪問したところ、自販機の売り上げが頭打ちであることや、自販機の商品ラインナップが男性目線のものが多いことに悩んでいらっしゃるようでした。

そこで、当社の『アップルスイーツ』が、悩みの解消につながると、自販機を設置してもらえることになったのです。」

自販機での販売を開始すると、『アップルスイーツ』の売れ行きはさらに向上。会計待ちもなく、店員と会話をする必要もなく、手軽に切り立てのおいしいリンゴを買えるという点が、受け入れられた理由だと考えているといいます。

ミニサイズからファミリーパックまで豊富なラインナップ

現在、カットリンゴの自販機は、東京都内、大阪府内で22台が稼働しています。通勤・通学などの途中で、駅構内で気軽に買えるので、オフィスでの朝食や、ランチ後のデザート、スナック菓子やスイーツに代わるおやつなど、幅広いシーンで食べられているそうです。

また、よりスイーツ感覚でカットリンゴを食べられるよう、2013年より、はちみつやキャラメルソースの付いた商品も販売。そのほか、ミニサイズの『アップルスイーツ』や、梨が新たにラインナップに加わりました。

スーパーでは、食べ切りサイズの個食包装が入っているファミリーパックを販売。こちらも売れ行きは好調で、北海道から九州まで、多くの店舗で取り扱っているといいます。

「『アップルスイーツ』が広く一般的な存在になることで、老若男女問わず、多くの方がリンゴを食べるようになって欲しいと思います」。

食生活の変化から敬遠されがちなリンゴ。しかし、その原因を解決すれば、現代人にも喜んで受け入れられるということが『アップルスイーツ』の事例でわかります。消費が伸び悩んでいる果実や野菜でも、発想を変えてみると解決策が見つかるかもしれません。
 
エム・ヴイ・エム商事株式会社

画像提供:エム・ヴイ・エム商事株式会社

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