2019年 設置構想中の福島大学食農学類(仮称)
100名程度の学生を募る
2017年9月、福島大学から新たな学部の入試情報が公表されました。
2019年4月の設置を構想している、食農学類(仮称、2018年3月現在)です。一般入試やAO入試により募集する入試定員は100名程度。農学の専門知識や地域社会の課題解決などを学ぼうとしている学生を募ります。
福島県初の農学系学部
福島県は、農地面積で全国7位、森林面積で全国4位です。日本トップクラスで農林業が盛んです。
にもかかわらず、これまで県内には農学系の学部がありませんでした。将来の就農を見据えても、進路選択の際には、隣接県の大学などを選ばざるを得ませんでした。
そのような状況下、県で初めての農学系学部設置に向けて、福島大学が動きました。
時代からのニーズが、設置の機運を高める
食や農に関する学部の志望者が増えた
「農業を学びたいという若い人が増えていると思います」と話すのは、福島大学の農学系研究組織設置準備室の林薫平(はやしくんぺい)先生。
県内の高校生の社会貢献活動を対象としたコンテスト「ふくしま高校生 社会貢献活動コンテスト」でも、農業系の発表が目立ったと言います。
2017年度の最優秀賞は、会津伝統野菜を継承して発展させる取り組みを発表した会津農林高校。福島大学のアドミッションセンターが選ぶ福島大学アドミッションセンター長賞には、地元産の菜種油を高校生たちが商品プロデュースしていく取り組みが選ばれました。
全国的にも、農業への関心は高まっています。文部科学省の「学校基本調査」によれば、農学部の志願者数は、2007年から2017年にかけて、47,797人から63,660人と約3割増えました。
2011年の原発事故でダメージを受けた福島県の農業
2011年の福島第一原子力発電所事故。事故自体と、それが引き起こした風評被害により、県の農業は大きなダメージを受けました。
先のとおり、県外には、農業系学部を持つ大学は多くありました。
「それが県内にどうしても必要だということになった。原発事故の後、地域のこと、農業のことを、自分たちの県の中で、動いて研究して広げていくことが不可欠。越境して学べばいいとは済まなくなりました」と林先生。
2013年に農業系の社会人大学院をスタート
福島大学では、2013年に農業系の社会人大学院をスタートさせました。
林先生も、この社会人大学院に参加し、毎週、地域が直面する課題に足を運んで議論をしていました。原発の影響は強く、大学院生のテーマも放射能対策や、安全な農作物の作り方など、とても具体的なものだったと言います。
年を重ね、少しずつ復興が進み、広い意味での農業復興に課題意識が向かっていく中で、アンケートやヒアリングにより意見を集めながら、学部の設置準備へ動くことになったのです。