絶滅危惧種の薬草「ムラサキ」を栽培!コスメ開発で地域おこし

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絶滅危惧種の薬草「ムラサキ」を栽培!コスメ開発で地域おこし

絶滅危惧種の薬草「ムラサキ」を栽培!コスメ開発で地域おこし

最終更新日:2018年09月25日

滋賀県東近江市の奥永源寺地域で、地域おこしに関する活動を行う株式会社みんなの奥永源寺。絶滅危惧種の薬草「ニホンムラサキ」を栽培し、地域の活性化を目指しています。また、同社ではムラサキの根「シコン」を活用したコスメを開発・販売し、百貨店などから注文が相次ぐなど、各所で注目を浴びています。株式会社みんなの奥永源寺の代表取締役・前川真司(まえかわしんじ)さんに、話をうかがいました。

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製薬会社や美容業界が注目!希少な薬草ムラサキの根「シコン」

ムラサキは、厚生労働省が法律に基づいて定めた、医薬品の規格基準書「日本薬局方」に登録されている漢方薬で、火傷や傷に良いとされている「紫雲膏(しうんこう)」の主原料などに用いられている薬草です。

ムラサキの根に含まれるシコンエキスに抗菌や、肌に良い働きが期待されるといわれています。また養毛促進作用もあるとされ整髪料などに利用されています。このことから、ムラサキは今、製薬会社や美容業界の注目を集めています。

ところが、日本固有種のニホンムラサキは地球温暖化の影響で数が減少し、環境省の絶滅危惧種に登録されるなど、希少な品種となっています。そのため、近年は、その希少性に注目した農家や製薬会社が、「地域活性化に繋げたい」、「商品に付加価値を加えたい」という思いから、栽培と復活に挑戦しているそうです。

「ムラサキ」の栽培で地域活性化を目指す

東近江市は古くからムラサキの産地で、「日本書紀」で天智天皇一行が東近江地域に薬猟(くすりがり)にきてムラサキを収穫したとされています。また、東近江市のムラサキは「万葉集」にも記されており、市はムラサキが群生する風景が蘇ることを期待し、全国で唯一、市の花にムラサキを指定しているといいます。

前川さんがニホンムラサキの栽培に乗り出したのは、2014年のことでした。
元々は滋賀県東近江市にある八日市南高校で、農業の教員を務めていました。しかし、ムラサキが市の花である理由を知ったことや、市民団体「紫草を育てる会」で、ムラサキを守るための栽培・普及啓発活動に参加したことを通じて、「地域活性化活動として、ムラサキの栽培や加工品販売を行いたい」と考えるようになったそうです。

そこで前川さんは、ムラサキの栽培を本格的に行うため、教員から地域おこし協力隊に就任。東近江市の奥永源寺地域にある君ヶ畑町に移住して、耕作放棄地を開墾し、無農薬・有機栽培にこだわって、ムラサキの栽培をはじめました。

「就任から3年間、毎年ムラサキの収穫に成功しました。そして終了年度に、地域おこし協力隊の集大成として『みんなの奥永源寺』を設立。その後は、株式会社みんなの奥永源寺として、ムラサキの栽培に取り組んでいます。

栽培技術の革新や、栽培環境の調査、育種研究、発芽率向上の研究といった八日市南高校との学術連携に加え、東近江市役所のバックアップがありました。そして地域おこし協力隊の活動を通じて築いた、奥永源寺地域の住民との連携があって、栽培に成功できたと思います」。

最適な環境とこだわりの栽培方法で育てられる「ムラサキ」

耕作放棄地を開墾している様子

前川さんは現在、毎年約1,000株のムラサキを栽培しています。標高500メートル以上の場所にある畑は冷涼な気候環境で、ムラサキの栽培に最適です。肥料は地元産の有機肥料を使っており、無農薬・有機栽培にこだわって育てられています。

「ムラサキは発芽率が約3%と非常に低いうえ、夏の暑さや根腐れが原因で、死滅率が98%を超える年もあります。そのため、栽培と収穫は非常に困難を極めます。しかし、私たちは、栽培環境と栽培方法の改善を重ねて、ようやく現在、安定した生産を実現するに至りました」。

また、ムラサキを栽培する畑は、奥永源寺地域の耕作放棄地を開墾して作られています。毎年500平方メートルの土地を開墾しており、前川さんは「耕作放棄地でムラサキを栽培する取り組みが確立すれば、地域の農産業の再生と活性化に繋がると思います。そうなれば、地方創生と雇用の創出にもつながっていくのではないでしょうか」と話しています。

ムラサキの根「シコン」で作られるオーガニックコスメ

みんなの奥永源寺では、栽培したムラサキの根「シコン」を加工し、オーガニックコスメ「MURASAKIno(むらさきの)」として販売しています。「あえて効果効能をうたう化粧品ではなく、人や環境に配慮したライフスタイルを提案するオーガニックコスメを開発しようと考えました」。

MURASAKInoは、化粧品、乳液、美容オイル、洗顔フォーム、ハンドクリームの全5種類で展開。添加物や着色料は一切使用していないため、コスメの色は、シコンのエキスによって、淡い紫色になっています。また、基材には滋賀県産のナタネ油やヒマワリ油を使用しているそうです。

「化粧品の製造は、化粧品製造販売許可を持つOEMメーカー(※)に委託しており、国産オーガニックにこだわった、地域コスメの開発に取り組みました」。

※OEMメーカー:発注元のブランド名で販売される製品を造るメーカーのこと。

コスメは、2018年4月26日から発売開始ですが、発売前から、大手百貨店やセレクトショップなど、多くの店舗から発注や注文があったそうです。

「今後は地域の活性化を目指す『地域株式会社』として、過疎化が進行し、社会単位として存続することが難しいとされる限界集落に、雇用を生み出すような事業の展開を目指していきたい」と前川さんは語ります。

ムラサキという絶滅危惧種を、農業の活性化だけでなく、地域全体の活性化に繋げつつある、みんなの奥永源寺。地域活性化のチャンスは思わぬところに、意外とすぐ近くにあるかもしれません。
 
 
株式会社みんなの奥永源寺

画像提供:みんなの奥永源寺

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