食育から一歩踏み込んだ、様々な楽しみ方のできる絵本
「子供の野菜嫌いを治したい」「好き嫌いのない子に育てたい」など、野菜を題材にした絵本を手に取る目的は様々。本屋の絵本コーナーであれこれと見てみるものの、なかなか選べない方も多いのではないでしょうか。
今回紹介するのは、いわさゆうこの『どーんとやさい』シリーズ(童心社)。2012年の第1作目の『きゃっきゃ キャベツ』に始まり、昨年10月発行の最新作『にににん にんじん』まで、計7作を刊行。どの作品も、細部まで書き込まれた絵の精緻さと美しさで、野菜を擬人化することなくありのままの野菜の姿を伝えています。
赤ちゃんの頃から絵本で野菜に親しむ
生まれてすぐの赤ちゃん期から読み聞かせをしている方もいらっしゃるでしょう。いわさゆうこの絵は色彩がとても美しく、思わず手を伸ばして触ってみたくなる本物のような質感。まだ野菜そのものを食べられない時期の赤ちゃんでも、見て楽しめる絵本です。(※童心社の推奨年齢は3歳から)
思わず笑顔 面白い擬音がたくさん
題名でもわかるとおり、本作には耳で聞くだけでも面白い擬音表現がたくさん。言葉をしゃべりだした時期には、一緒に「いち、に、さん、し…、よいしょーっ!」とじゃがいもほりを疑似体験したり、「わっしょいわっしょい」とだいこんまつりを楽しんだりと、エンターテインメント性もたっぷりです。
大げさに動きを加えながら読み聞かせると、赤ちゃんが一緒に体を動かして真似をしはじめることも。
大人にも読み応えのある野菜の知識が満載
絵は実物大の表現が多く、野菜の姿に迫力を感じます。図鑑のように細部まで丁寧に描かれているため、野菜それぞれの特徴が正確に伝わってきます。地図を使って産地や品種を紹介するなど、新しい知識を吸収することが大好きな学童期の子供や大人にも十分な読み応え。
それぞれの作品の最後には読み物のページもあり、さらに知識だけでなく野菜への理解が深まります。
今回は前編として、7作のうち3作『きゃっきゃ キャベツ』『つやっつや なす』『どっかん だいこん』を紹介します。
きゃっきゃ キャベツ
シリーズ1作目。サラダに野菜炒めに一年中重宝するキャベツ。旬の時期には外側の固い葉(外葉)がついたものも店頭で見かけます。この姿は知っていても、どんなふうに畑に植えられているのか、どんな花が咲くのか、大人でも知らない人は多いのでは?
意外なものがキャベツの仲間という事実も再発見。キャベツの花が咲く迫力のシーンは、ぜひ本を開いて確かめてください。何の花に似ているか、お子さんと調べてみると盛り上がるかもしれません。
つやっつや なす
作者が「魔力を秘めた大きな宝石のよう」と表現するなすの美しい色は、題名さながらに「つやっつや」に描かれ、なめらかな皮の質感が伝わります。
本作では様々な品種のなすが紹介され、その形や色の多様さも驚きです。今では年中売られているなすですが、やはり旬は夏。お子さんの夏休みの自由研究に、本作で初めて知った品種について調べてみるのも勉強になりますね。あちこちから産地直送で野菜を買える時代ですから、取り寄せて比べてみるのも面白いでしょう。
どっかん だいこん
古事記にも「おほね」として登場するだいこんは、日本で古くから親しまれてきた野菜の代表格。おかゆに慣れた頃の赤ちゃんの離乳食に、柔らかく煮ただいこんは重宝します。
本作では、カブとの違いや全国各地の品種など、身近なのに知らない大根の知識が満載です。色のついた珍しいだいこんも掲載。よく食卓に上る食材なので、お子さんと一緒に料理をしたり食べたりしながら、絵本をネタに会話がはずむといいですね。
後編では、『ごんごろ じゃがいも』『まっかっか トマト』『どででん かぼちゃ』『にににん にんじん』の4作を紹介します。お楽しみに!
【参考】 童心社 どーんとやさいシリーズ
【後編はコチラ】超食育!野菜のチカラを感じる絵本「どーんとやさい」シリーズ(後編)