切り花用バラ苗生産からガーデン用バラ苗の世界へ。
1949年の創業以前、水谷農園の前身は、現・代表の水谷勇さんの実父が営んでいた稲作農家でした。当時の農地政策に伴って、切り花生産者向けのバラ苗の生産に転換して以来、切り花生産農家のニーズに応えた苗の生産を行ってきました。水谷さん自身は、1980年に玉川大学農学部を卒業後、実家に戻り、バラ苗生産の現場に立ちました。
アメリカの切り花生産者との交流に参加する機会を得て、渡米。現地の果樹、野菜の大規模農業に刺激を受ける一方、「花の需要に光を見いだした」と言います。
当時は国が切り花の助成に力を入れていた時期。水谷農園は、切り花生産者に求められる苗の生産と開発に注力していましたが「これからは欧米のように、一般家庭でガーデニングを楽しむ時代がやってくる」と確信し、帰国後、切り花生産者向けから、一般消費者に向けたガーデニングに適したバラの品種、苗の生産にシフトしました。
世界中で愛されるバラ
「花の中でもバラは別格。世界中に届けられる」と水谷さんは言います。
バラは生活の中にある花。イヤリングやブローチのモチーフとして使われることも多いし、香りは香水やせっけんなどのフレグランス、お茶など、香りを楽しむ場面でも好まれます。ラブストーリー映画で、ここぞという場面に登場するのは何と言っても〝真っ赤なバラ″。
「バラのある潤いと安らぎの空間で、至福の時を過ごす演出づくりのお手伝い」をコンセプトに掲げ、人を幸せにする花、愛されるバラを、日本の風土気候に合わせて品種改良を行うこと、日本人の趣味趣向に合った品種を開発すること、世界各国の品種を紹介することに、力を注いできました。
水谷農園オリジナルの品種は、オランダで開かれたコンクールで入賞するまでになり、それを海外で生産できるようにもなりました。
2000年ごろから海外のブリーダーとの契約栽培を進め、自社の品種を輸出し、海外の希少品種を輸入する交流も積極的に行い、今では、アメリカ、フランス、ドイツ、ベルギー、オランダ、イギリス、韓国、中国、南アフリカと取引を行っています。
また国内では、長崎県佐世保市の「ハウステンボス」と、愛知県蒲郡市の「ラグーナテンボス」、2つのテーマパークで行われるバラのイベントで、水谷農園で生産したディスプレイ用のバラが使用されるなど、生産だけに止まらず、事業の幅が広がりを見せています。