なかでも大坂さんを魅きつけたのは、ワイナリー敷地内の「ファームレストラン」でした。レストランが主催する収穫祭では、オーナーであるホストファーザーが、自分でブドウから育てたワインを片手に客をもてなします。美味しいワインと手作りの料理を求めて集まった客は、まさに今自分が味わっているワインが持つストーリーに耳を傾けながら、農家や醸造家と陽気な時間を共有します。
言い知れぬ一体感に、「こんな面白い農業って、ないな」と、大坂さんは感銘を受けます。元々、飲食店でのアルバイトを通して、飲食業にも興味を抱いていました。自分の農作物を通して接客がしたい、という具体的な目標を抱きます。そして「いつかは、“農家レストラン”を開くために、おいしい野菜を作れる農家になる」。神戸大大学院在学中の2016年に決意を固め、中退。慣れ親しんだ篠山の地で畑を借り受け、思い描いた将来像のための一歩を踏み出しました。
就農1年目は収入を補うため、早朝に新聞配達のアルバイトをしてから、畑に向かう日々が続きました。消費者にとって実用的で、かつ篠山の土地に合う野菜を見つけようと、「手あたり次第の野菜を作ってみた」といいます。
試行錯誤の大坂さんを支えたものとは-?後編へ続きます。
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