3団体共同で行われるフードバンクの取り組み
JA甘楽富岡がフードバンクに参加したきっかけは、取引先である西友のバイヤーと「生産現場では、商品にならない規格外野菜の廃棄が多い」と話をしたことからスタートしました。
JA甘楽富岡の野菜を西友店舗の専用コーナーで販売する「産地直送プログラム」を共同で行うなど、両者はおよそ40年来の協力関係にあります。一方で、西友は2009年よりセカンドハーベスト・ジャパンとフードバンク事業を行っており、継続的に事業を拡大させてきました。
「そこに、JA甘楽富岡が加わることになり、2013年4月から取り組みを始めました」と高田さんは語ります。
規格外野菜が、必要とする人のもとに届くまで
規格外野菜は、どのようにして必要とする人のもとへ届くのでしょうか。
まず、JA甘楽富岡がフードバンクに協力する農家20名から規格外野菜を無償で譲り受け、西友の販売用の野菜と一緒に、西友の物流センターの一つである川越センターへ持ち込みます。
川越センターは、西友の規定に基づき、賞味期限前に店頭から撤去された食品などの「寄付食品」が、店舗から集められる集荷拠点でもあります。そこで規格外野菜を西友の寄付食品と混載し、セカンドハーベスト・ジャパンに納品します。
その後、規格外野菜と寄付食品をセカンドハーベスト・ジャパンの車に積載し、福祉施設などに配送。集荷したその日のうちに、寄付先に配分されるそうです。
「JA甘楽富岡では、果菜類、根菜類、ネギなど、品質が劣化しにくい野菜を提供しています。また、キュウリやピーマン、タマネギ、ジャガイモ、サトイモ、ニンジン、長ネギなど、一般的に消費しやすいとされている野菜も選定して送るようにしています。
これらの野菜は、『形が大きく曲がっている』、『小さすぎる、あるいは大きすぎる』、『傷がある』などの理由から、出荷できないものです」。
規格外野菜は、鮮度を維持したまま届けられる
毎日の食卓に欠かせない野菜類は、福祉施設でも常に必要とされています。しかし、生鮮品は鮮度管理が難しく、寄付するのが困難なため、福祉施設への寄付品はこれまでは加工品が中心となっていました。
とはいえ、規格外野菜は市場や店舗を経由せずに、収穫した野菜をそのまま寄付用のルートに乗せることができます。鮮度を保ったまま施設に届けることが可能となりました。
収穫体験を通じた子どもとのふれあいで農家にもたらす効果
JA甘楽富岡の管轄地域では、年2回、フードバンクの寄付先である児童養護施設の子どもたちを招き、収穫体験を実施しています。これは西友と共同で行っていて、野菜の寄付活動に参加している生産者の畑へ、子どもたちを招待して行われています。
そして、女性の生産者が作った昼食を子どもと生産者が一緒に食べることで、コミュニケーションを育んでいるそうです。
「収穫体験を行うたびに、参加した子どもからは『楽しかった』、『おいしかった』、『また来たい』といった手紙や絵画が届きます」と高田さん。
「子どもたちは、畑にいる虫を見てはしゃいだり、泥だらけになって走り回ったりするなど、普段できないような体験ができたのではないかと思います。この経験が、子どもたちにとって食育になることを願っています。将来、彼らが成人した際に『子供の頃に楽しい体験をしたなぁ』と、甘楽富岡のことを思い出してもらえたら嬉しいです」。
収穫体験を通じた子どもたちとのふれあいは、生産者にも良い刺激を与えているそう。喜びの声が手紙等で伝えられ、農業生産の活力となっています。また、「食べ物を大事にする」という意識が、生産者の中でもいっそう強まったように感じられるといいます。
「何よりも良かったのは、参加した子どもたちと生産者が一緒に収穫の喜びを分かち合えて楽しめたことだと思いますね」。
「今後も、フードバンクの取り組みを長く継続していきたい」と高田さん。今の時代は食べられるにも関わらず、たくさんの食材が廃棄されています。JA甘楽富岡が行っているようなフードバンク活動は、食べ物の大切さや物があふれている時代に食べ物を必要としている人の存在を、改めて気づかせてくれることでしょう。