オランダの農業が発達している理由
ヨーロッパの北西部にあるオランダは、国土面積が約4万1000平方キロメートルと、九州ほどの大きさしかありません。加えて、年間を通じて気温が低めの日が多く、日照時間も短め。農業に不利な環境がそろってしまっています。
しかし、オランダの農産物輸出量は、アメリカに次ぎ世界第2位です。一体なぜでしょうか。決して、農業にチャレンジする人が多いわけでもありません。人口は少なく、農業従事者の高齢化も顕著です。
そんなオランダで農業生産が増えた理由、それは「スマートアグリ」と呼ばれる農業のIT化、機械化です。
オランダの農業は、ハウス栽培・温室栽培が多め。その室内の温度や湿度、日照状況などについては、コンピュータを使ってITで管理しています。オランダの農家においては、土よりパソコンと向き合いながら野菜を育てることがめずらしくありません。
こうしたハイテク化が、少ない土地、少ない人手での大量生産を可能したというわけです。
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オランダの野菜栽培はLEDで
オランダのハイテク農業を支えている技術の一つがLEDです。日照時間の少ないオランダで温室栽培を行う場合、光源の確保は重要な問題です。たとえばある家電メーカーでは、それぞれの作物の成長に適したLEDを研究開発し、品種ごとに適切な波長、角度、光の強さなどを緻密に把握しているといいます。
実際、そのメーカーのLED照明で育てたレタスは、栄養価が高く、味わいも豊かとのこと。さらに、育成期間も通常より10~14週間も短くてすむというのだから驚きです。
また、ハーブ栽培に従事する農業生産法人の温室では、ピンク色のLEDが使われています。赤一色のLEDでは作物の生育が良くなりすぎるため、青を足してピンクになったそう。その農家によると、LEDの経費が売り上げに占める割合はたった1~2%ほどとのことです。これならコストを気にせずハイテク化に乗り出せそうです。
オランダのハイテク農業はどうなる!?
オランダの農業ハイテク化は、LED以外にも進んでいます。先に述べたコンピュータによる作物の一括管理のほか、ハウスの日照状況や二酸化炭素の濃度などをセンサーが感知しながら、自動で供給量の調節を行うソフトウェアも使われています。また、水やりや作物への栄養補給、二酸化炭素を与える作業などにおいても、チューブを使って自動で行うハウスも発明されています。
さらには、作物を生産した後、出荷をした作物の流通・販売ルートを管理できるクラウドサービスも登場。トレーサビリティを確かなものにすることで、消費者はもちろん、農家にとっても安心・安全な体制が作られているのです。
オランダでは、国と企業が一体となってハイテク化・自動化を進めることで、農業従事者の高齢対策を早めに行っていました。 先進国の農業が後継者不足に直面している現在、オランダはその生産量を維持し、他国が見習うべきモデルケースとして存在感を強めていくかもしれません。
上記の情報は2018年3月20日現在のものです。