オランダ農業は日本と何が違うの? ~流通編~

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オランダ農業は日本と何が違うの? ~流通編~

連載企画:オランダ農業の現場から

オランダ農業は日本と何が違うの? ~流通編~
最終更新日:2019年04月22日

「農業先進国はどこでしょうか?」と聞かれると、多くの人が「オランダ」と答えるのではないでしょうか? 私は「トビタテ!留学JAPAN」(官民協働海外留学支援制度)7期生として、オランダのナスの農家で6カ月、パプリカの農家で3カ月研修をしています。第1回ではオランダの生産現場について説明しました。第2回となる今回は、オランダ農業の流通についてご紹介します。

販売先の選択肢はたくさん!

Purple Prideで生産している7種類のナス。上段左からkonasu(小ナス)、nasu(ナス)、grafiti(グラフィティ)、下段左からwhite(白ナス)、normal(ノーマル)、purpura(ポーピュラ)、minigrafiti(ミニグラフィティ)になります

私が研修をしていた農場は、3兄弟で3カ所のナス農場を運営しています。そして、他の2つのナス農場を加えて、計5つの農場で計42ヘクタールの「Purple Pride(パープル・プライド)」というブランドを立ち上げて販売しています。

以前は、全てナスは競り売りに出されていたようです。大型スーパーマーケットが台頭する1980年代までは、オランダの出荷した野菜の行き先は、競り売りがメインでした。農家は自分たちでその競り売りの会場に野菜を出荷するのですが、その時々で値段が安定せず、自分たちが出荷した野菜がどう売られて誰が買っているのかを把握できなかったそうです。スーパーマーケットが台頭するようになってからは、競り売りを通すよりも、直接スーパーマーケットなどに野菜を卸すことが主流になりました。

Purple Prideの本部には7人のセールスチームがいて、日々営業先と取引を行っています。
消費者のニーズに応えるために、7種類のナスを生産し、多様な出荷先に対応するため、20種類以上の箱を使い分けています。また取引先としては、現在は年間契約が20パーセント、月間が50パーセント、単日契約が30パーセントほどで、価格が安定している年間契約をより多くすることを目指しています。

また、Purple Prideとして「DOOR(ドア)」という生産者組合に入っています。DOORは、品質管理、ブランド戦略などの消費者と生産者をつなぐ役割を果たしています。消費者の目が厳しくなり、品質を問われることが多くなった中、DOORに加盟することで、その品質が保証されます。DOORに加盟している生産者は全て「グローバルGAP(※)」を取得し、衛生管理と食品安全を保証するBRC FoodとIFSの認定を受けなくてはなりません。厳しい基準があるので、消費者は安心してDOORに加盟している野菜を購入できます。また、オランダの生産者組合は、日本とは違い、地区ごとで所属する組合が決まるということがありません。どの地区に農場があっても、自分が好きな生産者組合に加盟することができます。
実際に、私の研修先の農家も以前は別の生産者組合に入っていたそうですが、方針が合わなかったそうで今のところに所属しているようです。このように、オランダの農業では、複数の生産者組合が健全な競争を行って市場が成り立っているようです。

※グローバルGAP:適正な農業を実践する安全・安心な農業生産者であることを証明するための国際基準。

作物が店頭に並ぶまで

オランダの店頭の様子

私の研修していた農家は、さまざまな国に販路を持っていました。出荷先は、隣国のドイツが一番多く、イギリスやスカンディナビアなどのヨーロッパの他に、アメリカや日本などに向けた長距離を飛行機で出荷するものもあります。

ナスは傷みやすく、10日で食べられなくなります。朝6時の早い時間にナスの収穫が始まり、昼には出荷されます。アメリカなど遠くに出荷する場合も、出荷されたナスはトラックで直接空港まで行き、8時間でアメリカに到着し市場に出回ります。日本に出荷する場合もアメリカに出荷する場合も、出荷先をニューヨーク、横浜など1カ所に集中させ、効率的に出荷できるようにしています。

オランダは、EU圏内での競争もあり、スペインの動向を頭に入れながら生産しなければなりません。スペインでは春から夏にかけてナスが多く出荷されるので、その時期は値段が下落します。私の研修先は、10月下旬あたりには収穫をストップするのですが、秋だけで1年間の半分の売り上げを出すと言っていました。作物の特性に加えて、スペインなどの隣国の動きを見ながら栽培計画を作っているようです。

他にイチゴ農家やパプリカ農場や有機農家などを取材させてもらったのですが、どこの農家も複数の卸し先を持っていて、収入の安定化やリスクの分散を図っているようです。

値段だけじゃない! 消費者が作物を選ぶ大事な基準

Sustainable(持続可能)の認証をもつ商品。有機認証とアニマルウェルフェアを示す

オランダのスーパーマーケットを歩いてみると“Sustainable(サスティナブル:持続可能)”の商品が目立ちます。Sustainableとは、人間・社会・地球環境の持続可能な発展を意味し、具体的には、有機農業、アニマルウェルフェア(動物福祉)やフェアトレードなどがあげられます。

オランダでは、これらSustainableの認証を持った商品の消費が非常に伸びていて、Sustainableと認定された食品に対する消費者支出の合計は、2016年から2017年の間で、19%増加しました。また、2017年の食料品全体の支出におけるSustainable認定の商品の支出の割合は全体の11%になります(ワーヘニンゲン大学調べ)。

実際に、オランダ人の主婦に話を聞いてみると、「国内のものを選ぶようにしている」「環境のことを考えて、肉をあまり食べないようにしている」「卵は必ずBeterLeven(その家畜がどのような環境下で育ったかを示す指標。高い順に1~3まである)のレベル3を購入するようにしている」など、もちろん健康面や安全面も気にしてこれらの商品を購入していると思うのですが、環境や社会などより大きなところへ自分たちの消費行動を結びつけている人も目立ちます。
その食品が安全かどうかはもちろんですが、自分の行動が社会にどう影響しているのか?ということを考えた消費活動は、日本でも重要になってくるのかなと思います。

次回はオランダの農業現場の「人材」について紹介していこうと思います。
 

Purple Pride
DOOR

 
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