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世界の農業事情からヒントを得る ~オランダ前編~

世界の農業事情からヒントを得る ~オランダ前編~

最終更新日:2018年08月09日

世界の施設園芸をリードするといわれるオランダ。日本の九州程度の土地しか持たず、海抜がマイナスの場所が多いという過酷な状況のなか、アメリカに次いで世界第2位の農業輸出額を誇っています。果たして、何が小国のオランダをここまでの農業大国にしたのでしょうか。そこには、各農家の創意工夫だけではなく、国家的な戦略転換や、従来の方法に縛られない生産体制の導入がありました。この記事では、オランダ農業の今をさまざまな角度からご紹介します。

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世界第2位の農業生産国オランダ

オランダの国名は、英語で「ネザーランド」=「低い土地」と呼ばれ、国土の1/4の海抜がマイナスとなる埋め立てで出来た国です。チューリップや風車、運河といったイメージの強いこの国ですが、実はヨーロッパの食を支える農業輸出国で、輸出高は世界2位の農業生産国となっています(下表参照)。

出典:FAOSTAT(国連食糧農業機関統計データベース)

実は、オランダが農業国として発展してきたのは、そう昔ではありませんでした。1980年代にEC(ヨーロッパ共同体)によりヨーロッパの市場から国境が事実上撤廃されたとき、オランダの現地農業はスペインやポルトガルからの安い農作物に脅かされます。危機感を覚えたオランダは、農業を産業として強化することを国家戦略として推し進めました。その戦略のもと、農業省は経済省に統合され、農業はあくまで産業の一分野として扱われる事になり、「選択と集中」が徹底して行われました。その結果、施設園芸分野(特にトマト、パプリカ、キュウリ)での産業育成・研究開発が強化されました。

高い生産力を支える太陽光植物工場

海外農業

施設園芸を中心に高い生産力を誇るオランダですが、その源泉はなんでしょう。その一つは、非常に高度化された生産体制にあります。トマトやパプリカ、キュウリ等の施設園芸作物のほとんどは太陽光植物工場で栽培されています。人工光植物工場とは異なり、外部の光を取り込んではいますが、密閉され温度・湿度等の環境制御がなされた近代的な施設で行う栽培方法です(上の写真は太陽光植物工場のもの)。トマトの場合、写真にあるような日本で主流の方法とは異なり、長期多段栽培が多く用いられています。植物は土ではなくロックウールという素材に植えられ、かんがいチューブで水分や養分が与えられています。この方法により、慣行栽培では3、4カ月程度の収穫期間を、9カ月程度まで延ばす事が可能になっています。太陽光をメインで利用していますが、冬場は日本に比べて日照時間が短くなりますので、それを補うためのLED等を使った補光技術も多くの施設で導入されています。この太陽光植物工場を使った栽培方法を用いる事で、1平方メートル当たり70キログラム程度と日本の2倍以上の収量を得ることが可能になります(通常の日本のトマト収量は平均20キログラム程度)。

施設には植物栽培を効率化するだけでなく、作業効率を上げるためのさまざまな仕組みが導入されています。たとえば、施設内には収穫機器等を流すレールがあり、その上をカーゴが自動で流れて、収穫物等を輸送します。作業者は収穫をしてそのカーゴのトレーに入れれば、自分で運ばなくても収穫物が選果場に運ばれるわけです。

他にも、周辺施設も充実させている所が多く、地熱や天然ガスを活用した温度管理施設や発電施設を準備しているところや、収穫後レールによって流れてきたトマトがすぐにコンベアに載せられ選果・梱包できるような施設を持っている圃場もあります。

農業生産を支える産学官エコシステム「グリーンポート」

高度な生産体制ですので、工場のように、全体を管理する経営者、実際の作業を行う作業者、高度技術を管理する技術者など明確に分業され経営がなされています。また、最新技術や地域インフラを巻き込んだ設計が必要になるため、企業外の人を巻き込む必要があります。

そこでオランダはグリーンポートと呼ばれる、農業に関する産業を集めた地域をさだめ、そこで産学官のコミュニティーの連携を強めました。写真はGoogle Mapのサテライト画像で、Westland市にあるグリーンポート地域周辺を写したものです。この白くなっている部分はすべて農業施設で、産業集積が進んでいる事がわかります。

画像 ©2018 Google、DigitalGlobe、Data SIO, NOAA, U.S. Navy, NGA, GEBCO、地図データ ©2018 Google

この物理的にも密なコミュニティーの中、複数の企業や産業、研究機関や政府による連携が行われています。知り合いの話では、同じ地域で農業関連の仕事をしている人だと、子供のサッカーチームが一緒のため既に知り合い同士だった、ということもあるそうです。

日本の農業のヒントを得るために、日本政府や企業は積極的に情報交換を行っているようです。もちろんさまざまな背景の違いがあるので、その通りにまねればよいとは言えませんが、日本でもオランダを参考に新しい取り組みが進めばうれしいですね。

※ 情報は2018年7月時点のものです。

【関連記事はこちら】
世界の農業事情からヒントを得る ~オランダ後編~

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