コンプレックスが基になって生まれた漫画
編集長:マイナビ農業のオープン(2017年8月1日)に合わせて、描いてくださいというお話が7月くらいですかね。
つき:そうですね。たまたま私が兼業農家出身だったので、描かせていただくことになりました。
編集長:マイナビ農業というサイトと聞いて、どう思いました?
つき:なんか…なんだろう。栄えるのかな、という。
編集長:「いけるのかな、これ?」みたいな(笑)。
つき:どんな人が見るんだろうとも思いました。がっつり農業技術系の内容だと、私にも分からなくて。私が描けるものといったら、農家育ちがコンプレックスだった自分のことくらいで。
編集長:漫画でもありましたよね(第5話)。
つき:朝シャンとかも全然できないし。友達の家がすごくオシャレに思えてました。実家は広島県福山市という岡山県との県境なのですが、母親の子供時代に、山を崩して新しい住宅地ができました。なので、うちだけちょっとぼろいんですよ。平屋だったので、2階建てもうらやましかった。結局、そういうのを描いて、喜んでいただけたのはすごく良かったなとは思うんですが。
編集長:つきさんの漫画をFacebookやTwitterで投稿すると、「農家出身だけど、すごい『あるある』だよね」のようなコメントがあったりします。一番反響が良い。
つき:自分じゃ、面白いことすらよく分からないんですよ。私にとっては、普通だったけれどもという部分もあるので。似たような境遇の人も結構いるんですかね。思ったより。
編集長:いるでしょうね。また、そういうコンプレックスを基にした漫画を今まで見なかったから新鮮だったのかもしれないですよね。
つき:ありがたいです。
ちょっとした会話からネタが出てくることも
編集長:ファンや、読者の方からの反応はいかがでした?
つき:20代の子から「私の家もそうなんですよ」というメッセージをいただいたこともありましたね。第1話の嫌いな野菜は植えていない話とか。あとは、「薪でくべるお風呂、懐かしいな」とか「自分の家のトイレもこんな感じだったな」というコメントも。
編集長:トイレは、ランキング高いですよ(第7話)。
つき:トイレ、なんで?と思ったんですよ(笑)。
編集長:私は、じいちゃんが素手でカナブンをガッとつかむ話(第6話)は一番笑っちゃいました。私、エア農家の嫁なんですよ。
つき:どういうことですか?
編集長:何も手伝っていませんが、旦那の実家が愛媛でミカン農家です。東京に住んでるので、年一回くらいしか行きませんが、実家のお風呂は薪なんです。それを見て、「あっ、つきさんのお風呂だ!」と思って。
つき:(笑)
編集長:そういう子どもの頃の、しかも日常の話は、どうやって思い起こして漫画に描いていますか。
つき:連載前に、こういうことがあったなみたいな単語だけをずらっと出して、そこから記憶とリンクづけて思い出して、まとめていますね。あと、友達と話したりして思い出すこともあります。友達が結婚式で書いてくれた手紙に「屋根登ったよね」ってあって(第9話)。
編集長:「ネタだ!」っていう感じですか(笑)
つき:あとは母親と話しながら。第11話は、「あんた、蛇に噛まれそうになってたことがあったよ」と言われたことがきっかけです。そうやって、ネタを考えて、早ければ2日くらいで描いています。ペン入れする日、色付けの日というように。
作品のイメージには、あの漫画が
編集長:つきさんは、日常の「あるある」をかわいく上手く切り取っているなという感じがして。それはもともと得意なスタイルなんですか?
つき:思ったことないですね、得意とか。上手く描けてる自覚はないんです。
編集長:そうなんですか。上手く描けてますよ!「農家に憧れなかった農家の娘」シリーズはどういうふうに描いていく予定ですか。
つき:イメージだと、私は「ちびまる子ちゃん」を意識してたんです。
編集長:やっぱり! 私、つきさんにシンパシーを感じていて。この「はなこ」に、私似てませんか? ちびまる子ちゃんも静岡じゃないですか。私に寄せてるのかなって(笑)
つき:「自分なのかも」って思ってもらえるのは嬉しいですね。
つき家の人々はどういう人?
編集長:ちびまる子ちゃんで言えば、クラスメイトや家族がたくさん出てきますよね。つきさんの漫画でもご家族が登場します。お母様は、サメのような女だと。
つき:(笑)なんか常に動いてるイメージで。昔は怖かったんです。おじいちゃんが頑固で。匂いのある野菜が嫌いとか、いつもと違う醤油を買ったら文句言うとか。そこにふわりとしたおばあちゃんが嫁に来て。ひいおばあちゃんも頑固で、おばあちゃんは「キビキビ動け」みたいに言われ。それを見てた母だから、しっかりしなきゃと思ったのでしょうね。男兄弟がいなくて長女で、家を継ぐ立場でしたし。皆が畑に行くから、家のことは母がやって。ちょっとかわいそうかなと思いますけど。
編集長:お父さんは婿として入ってらして。
つき:そうです。そうです。
編集長:お母様はおじいちゃんたちの期待に応えた。農家の娘の鑑ですね。
つき:なかなかすごい母ではありますね。私は全く別の方向に進みましたが。最近は、口うるさいところとか似てきたなとは思います。旦那に話してる時に、母親の口調に似てたなとか。そう思ったことあります?
編集長:性格では似てないですが、背中が大きくなって似てきたかなとか(笑)ちょっと似てくるんでしょうね。旦那さんのお母さんはチャキチャキしてて、座らない感じの人です。ずっと台所にいるか、ハッと思ったら畑行ってくるみたいな。
つき:うちの母も、そんな感じです。多分サメなんでしょうね(笑)。今後、ネタに描こうかな。どう描けばいいか、考えてみます。
(後編に続く)
つきはなこ
堂本剛の嫁になりたかったマンガ家。ふんわりジャンプ「夢見がちなジュピター」でデビューし、現在はWEB媒体をメインに活動中。ツイッターでもマンガ更新しています。
Twitter:@tsuki_hanako
Instagram: tsuki_hanako
聞き手・執筆:三坂 輝
【後編はこちら】「農家に憧れなかった農家の娘」番外編 作者つきはなこ に編集長が迫る!(後編)