農業で障がい者の就労を支援
スクールファーム河辺は、2012年の開設当時から、農業と福祉が連携する「農福連携」をテーマに掲げ、障がい者の就労支援などの事業を行っています。
「日本の食や暮らしに豊かさを生み出せると思い、就労支援の方法として農業を選びました」と曽我さん。施設内の『LEDきらめき菜園』という植物工場では、ホテルや飲食店に卸すハーブ類やエディブルフラワー(※1)を栽培。そのほか、収穫期を早める栽培方法『促成栽培(そくせいさいばい)』で、タラの芽も育てています。
※1 植物の花を食材として用いること、また、食用に供せられる花のこと
さらに2016年、スクールファーム河辺は、農地等自然の保全や、地域活性化を図る取り組みを実施するための団体「ふるさと秋田応援事業」に選ばれたことを機に、球根から育てたサフランの雌しべを摘み取り、香辛料などに製品化する事業も試験的に行いました。
エディブルフラワーやサフランの雌しべなど、例年、花に関する事業を立ち上げていたスクールファーム河辺。曽我さんが、花を使った新事業を探していた時に、ハーバリウムに出会ったそうです。
「インターネットでハーバリウムが流行っていることを知り、その美しさに魅力を感じました。そこで、スクールファーム河辺でもハーバリウムを作ることに。2017年に新規事業として立ち上げました」。
秋田県の稲穂や、オリジナル品種のダリアでハーバリウムを制作
スクールファーム河辺は、県外への展開も見据えたうえで、地元秋田の個性を活かしたハーバリウムを作るために、秋田県のオリジナル品種であるダリア「NAMAHAGEダリア」や、あきたこまちの稲穂をハーバリウムに使用。ダリアは、地元の栽培農家から買い取っており、稲穂は給食のお米の仕入れ先である、近隣の農家さんから譲り受けているそうです。
「ハーバリウムに使う草花は、エディブルフラワー用のビオラなど、スクールファーム河辺で栽培しているものも使っています。2018年からは、近隣の農家さんにご協力いただきながら、1反歩(約300坪)ほどの畑で他の花も栽培していきたいと考えています」。
ハーバリウムは、2017年9月の試作を経て、翌10月にイベント等で販売を開始。数々のメディアで取り組みが紹介され、県内での知名度が一気に高まりました。プレゼントや秋田みやげとしても人気で、現在は累計300本以上が売れているそうです。
一般的なハーバリウムの場合、店頭に並ぶまでの流通経路が長いため、日持ちの良いブリザーブドフラワー(※2)が用いられているといいます。しかし、スクールファーム河辺のハーバリウムは、温風乾燥機や乾燥剤などを使用して、3~7日間の短期間でドライフラワーに加工しているため、自然な発色が楽しめるという特徴があります。そのため、購入した方からは「生け花のような感じが良い」という声が届いているそうです。
※2 生花や葉を特殊液の中に沈めて、水分を抜いた素材のこと
ハーバリウム事業によるスクールファーム河辺の変化
ハーバリウム事業は、スクールファーム河辺の利用者にも変化をもたらしました。
これまでは、障がい者支援の施設であることもあり、なかなか一般の方が施設を訪れることはなかったそうです。しかし、ハーバリウム事業を始めてからは、市内のみならず、秋田県外からの訪問者も増えました。
「開放的な施設になったことで、事業所内清掃に一層力を入れるようになり、利用者の皆さんの姿勢も変わりました。多くの方に注目されている、いつお客様がきても大丈夫なように準備をしようという意識が、強く芽生えたように感じます」。
また、ある方は「花に囲まれた環境で、花に携わる仕事ができて嬉しい」と言っており、ハーバリウムの制作に楽しみとやりがいを感じているそうです。「イベントなどでお客様が笑顔になってくれることも、利用者の皆さんの励みになっています」と曽我さん。
「ハーバリウムをきっかけに、多くの方が施設を訪れてくれるようになったことは、非常に大きな変化です。このきっかけや繋がりを大切にし、これからの新しい事業へ繋げられたらと思います」。
今後も、障がい者が農業の担い手になる「農福連携」に関する取り組みを模索していくスクールファーム河辺。秋田県らしさが詰まったハーバリウムに続く新事業はどのような影響を与えていく存在になっていくのか、これからの活動が楽しみです。
株式会社スクールファーム河辺
画像提供:株式会社スクールファーム河辺