子供が食べられるピーマンを 「Carpy」シリーズの野菜
Carpyが始まったきっかけは、子どものいる親世代から、「苦いという理由で、子どもがピーマンを食べず困っている」という声が寄せられていたことでした。そこで、JA全農ひろしまは、苦みの少ないこども向けピーマンの栽培を始めたといいます。
栽培にあたり、既存のピーマンと差別化する方法として、JA全農ひろしまは、地元のプロ野球チーム「広島東洋カープ」とコラボすることに。球団ブランドを通じて地元の人に親しみを感じてもらい、野菜を購入してもらうことで、生産者の所得向上にも繋げたいという思いもあったそうです。
そして2014年、こどもピーマンに「Carpy(カーピー)」と名付け、販売を開始しました。Carpyは「カープ」と「ピーマン」の一部を繋げた名称で、愛着がわくようなネーミングを意識したそうです。
その後、Carpyはシリーズ化し、2016年に野球のバットとボールに似た見た目から、ズッキーニとミディトマトが新たにラインナップに加わりました。竹林さんは「いずれは品目を増やしたいですが、今はこの3品目の栽培に力を入れていく予定です」と語ります。
Carpyシリーズ野菜ごとの特徴
Carpyの野菜は、味・栄養・見た目に優れている品種を使用しており、これは「走・攻・守」の三拍子が揃ったカープの選手にちなんでいるそう。では、それぞれの野菜には、どのような特徴があるのでしょうか。
シリーズの先駆けでもあるこどもピーマンは、通常のピーマンよりも甘みがあり、食感も肉厚でジューシー。ビタミンCやカロテンなど栄養も豊富で、果実の形が揃いやすいのも特徴です。サラダや肉詰めなどの料理に使いやすいピーマンだそうです。
ズッキーニは、果皮に光沢があり、色も濃く鮮やか。緻密な肉質で、歯ごたえがパリッとしています。焼いたり煮たり加熱調理はもちろん、生のままサラダで食べてもおいしくいただけます。
ミディトマトは、手軽に食べられるサイズが魅力。甘みと酸味のバランスが良く、完熟してから収穫されているので、とても濃厚な味が楽しめます。加熱せず、サラダなどでそのまま食べるとおいしいそうです。
JA全農ひろしまの「結び付き販売」で農家の収入を守る
Carpyは、JA全農ひろしまが野菜を買い取り、スーパーと契約して販売するという「結び付き販売」で取り引きされています。市場で価格が決まる一般的な販売方法と異なり、JAに野菜を売った時点で手取り額を見込めるので、農家は収入の見通しが立ちやすくなります。
では、Carpyを栽培するメリットについて、2つの農家の事例を紹介しましょう。
事例1:Carpyの取り組みで栽培規模を拡大(Aさん)
2016年まで、直売所向けに出荷する野菜としてズッキーニを栽培していたAさん。直売所は手数料が発生するうえ、野菜が売れ残った場合は、自分で持って帰る必要があります。そこで、より確実に収入を得られる買い取り式のCarpyへの取り組みを2017年から始めました。
Carpyの取り組みで、作ったものを確実に売上げに繋げることができるようになったため、Aさんは、ズッキーニの栽培数を約20株から約200株に増やし、栽培規模を拡大しています。
事例2:新規就農でCarpy生産へ(Bさん)
Carpyの生産者には新規就農した方もいます。2016年2月に「高齢化が進む地域の力になりたい」という思いから就農したBさんは、ズッキーニを栽培。結び付き販売は利益が安定しやすいため、新規就農でも安心という理由から、Carpyへの取り組みを始めたといいます。現在は、野菜栽培のスキルを身につけながら、順調にズッキーニを出荷しているそうです。
Carpyの栽培面積は、現在約73アールで、初年度の約10アールから大幅に拡大。Carpyを栽培する農家数も、初年度の約5軒から約30軒に増加しています。
「スーパーなど、販売先からの需要も高まっている」と竹林さん。2016年、2017年と2年連続でリーグ優勝に輝き、近年好調な広島東洋カープの成績と相まって、Carpyシリーズのさらなる販売拡大も期待されそうです。
画像提供:JA全農ひろしま