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農業でブロックチェーンはどう使われるか ~農業金融編~

農業でブロックチェーンはどう使われるか ~農業金融編~

2018年05月31日

今回は日本でなく、発展途上国の農業を変え得る農業金融の事例を紹介します。農業も“事業”として、当然ながら設備や従業員に少なくない投資が必要です。社会インフラが整っておらず補助金や共有設備が少ない途上国農業では、特に金融サービスのニーズが大きいにもかかわらず、十分なサービスが整備されていないのが実情です。本記事では、ブロックチェーン技術を使い新しいアプローチでこの課題の解決を目指す事例を紹介します。

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ブロックチェーンが途上国の金融を変えるかもしれない

前回の記事(農業でブロックチェーンはどう使われるか ~トレーサビリティ編~)で、ブロックチェーンにより信頼性の高い取引データを管理し、トレーサビリティを改善しようとする事例を説明してきました。今回は、集まった取引データを活用して検討されている新しいビジネスを紹介します。それは、取引データを基にした金融サービスです。

中央アジアやアフリカの発展途上国の中でも特に農村地域では、金融サービスが十分発展していないため、市場機会を発見し優れたアイデアを持っていても、多額の資金が必要な事業を始める事ができません。この背景にあるのは、各事業者がどういった経営をしており、信頼に足りるのかを評価するための「経営情報」を示すための情報インフラがない、もしくは、あったとしても十分に信用できないためです。途上国の農村部では会計の概念や制度が十分に普及しておらず、簿記の記帳や、領収書の発行等が一般的ではありません。また、裏金のやり取りや改ざんが往々にして行われます。結果として、金融サービスが発展せず、農村部では従来の金持ちでない限り新しい事業を始めるのは難しい状況にあります。

この課題を解決しようとする一つの方法にはマイクロファイナンス(※)があり、課題解決に貢献しています。一方で、より事業者の経営状況を把握し、より低金利な融資を実行するために、ブロックチェーンで集めた改ざん不能で信頼性の高い取引データが活用できるのではないかと期待が寄せられています。

※ 貧しい人々に小口の融資や貯蓄などのサービスを提供し、彼らが零細事業の運営に役立て、自立し、貧困から脱出することを目指す金融サービス。代表的な提供機関としてグラミン銀行がある。

IBMとインド大手財閥が展開するサプライチェーンファイナンス

2016年11月にインド財閥グループのマヒンドラグループとIBMは、サプライチェーンファイナンス(※)の安全性・透明性・オペレーション効率を高めるために、ブロックチェーンの共同開発に着手することを発表しました。ブロックチェーン上にサプライヤー(仕入先業者)の全取引履歴を残す事で、改ざん不能な形で全関係者のアクセスを可能にし、第三者の融資システムに活用する事を目指しています。マヒンドラグループは商社のような存在で、農業だけでなく、自動車事業や航空事業等を展開しており、農業分野へのブロックチェーン導入の優先順位はわかりません。しかし、彼らはインド全土に同社ブランドのトラクターを全体シェアの半分近く展開する販売網を持ち、現金を持たない農家向けに融資サービスを展開する、農村部最大のノンバンクです。ブロックチェーン技術と相性がよければ、導入は早いかもしれません。

※ 企業の仕入先企業の資金繰りを円滑にし、コスト削減や流動性向上などを図る金融サービス。

参考:Mahindra and IBM to Develop Blockchain Solution for Supply Chain Finance|IBM News room(英文)

アフリカでの小規模八百屋への金融サービス

融資が必要になるのは農業生産者だけでなく、小売店も同じです。IBMはケニアの食品卸企業Twigaと共同で、食品小売店向けにブロックチェーンベースの小口金融サービスを2018年4月に開始しました。小規模な小売店(日本でいう所の八百屋)の売上履歴等の経営データを把握し、販売量増加の可能性がある場合に優先的に融資を行うサービスです。既に試験プロジェクトを実施しており、平均30米ドルの融資を200件以上実行しています。

参考:IBM and Twiga Foods Use Blockchain Technology to Offer Loans to Retailers in Kenya|BTCMANAGER(英文)

今回は途上国の事例をメインに紹介させていただきました。ブロックチェーンのような最新技術が先進国ではなく、上述のような地域で使われるのは違和感があるという意見を聞く事があります。しかし、既存の社会インフラがなく、規制も少ない国の方が大胆な技術導入が進む可能性があります。実際に、電子決済や送金等に使われるフィンテック技術は日本よりも、アフリカやアジアの地域に普及している印象を受けます。農業金融の領域でも、今までのプロセスとはかけ離れた発展があるかもしれません。
 
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