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農業でブロックチェーンはどう使われるか ~トレーサビリティ編~

農業でブロックチェーンはどう使われるか ~トレーサビリティ編~

ニュースで話題になる事も多いブロックチェーン。インターネットに次ぐ革命的な技術と呼ばれ、各分野での実用が少しずつ行われています。農業分野でもブロックチェーン活用の可能性があると言われており、トレーサビリティ、資金調達、与信等さまざまな用途でプロジェクトが動いています。本記事では、注目されるブロックチェーンの特性と、その実用例をまとめて紹介します。

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ブロックチェーンとは

ブロックチェーン

ブロックチェーンとは、近年注目されるビットコイン等の仮想通貨を支える技術です。今はまだ仮想通貨としての活用が有名なところですが、ブロックチェーンの仕組みと特徴は他の分野でも活用できると多方面から注目を集めています。
ブロックチェーンは「分散型台帳技術」の一つで、中央集権的に一つの組織(会社や国家)でデータを管理するのではなく、分散して情報を管理する事を可能とする技術です。ここでは技術的な説明を飛ばしますが、ブロックチェーンを活用すると、オープンかつ安全なデータ蓄積が可能になり、さらに、結果として仮想通貨に代表されるような「価値」のやり取りも可能になります。農業分野ではこの特性を生かして、下記4点での事例が生まれてきています。

1.信頼性のある取引データを生かしたトレーサビリティ(※)改善
2.信頼性のある取引データを与信とした農業金融(ex. インドのマヒンドラ・グループ)
3.新しい資金調達手段としてのICO(ex. ミルクコイン、バナナコイン)
4.条件に応じた取引の自動化=スマートコントラクト(ex. AgriDigital)

本記事では特に注目される「トレーサビリティ改善」に焦点をあて、事例をご紹介します。

※ 「追跡可能性」ともいい、栽培や飼育から加工・製造・流通・消費・廃棄までの過程などがわかるよう明確にすること、またその仕組み。主に食品の安全や環境保護のために用いられる。

強固なトレーサビリティシステムが構築可能に。国内外で実証が進む

ブロックチェーンが作り出す、改ざんが困難で信用できるデータベースは、農業分野のトレーサビリティ改善と非常に相性がよいと言われています。農作物の流通にはさまざまな業者が介在し、ときには国をまたぐ事もあるような、複雑で長いサプライチェーンを持ちます。この流通情報を、オープンで信頼できる一つの台帳で管理しようというのが、トレーサビリティ改善のコンセプトです。

例えば、野生の鳥獣の食肉「ジビエ」の流通を追跡確認するトレーサビリティのシステムにも、ブロックチェーンを活用した実証が進んでいます。ジビエは鳥獣被害を食い止めるための食材として注目を集めていますが、トレーサビリティシステムはほとんど存在していません。しかし病原菌や寄生虫のリスク等もあり、システムの導入が必要となっていました。そこで、一般社団法人日本ジビエ振興協会は、改ざんが困難なブロックチェーンに注目し、2017年10月から試験運用して調達、加工、流通、消費のデータを一元的に管理し、消費者が食材の情報にアクセスできる仕組みの構築を目指しています。

ブロックチェーン

ブランドワインの偽造防止にもブロックチェーン

また、ブランド食材を守るためにもブロックチェーン活用が検討されています。EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングは、ブロックチェーンを活用し、商品の流通加工プロセスを管理する「ワイン・ブロックチェーン」の実証実験を日本で始めました。生産から消費まで流通データを管理する事で、現在1~5億ドルあると言われている偽造ワインの削減に努めます。

ブロックチェーン

中国では大手企業がタッグを組みシステム構築を目指す

中国では、経済発展が進み、現在、食の安心への関心が非常に高まっている一方で、食のトレーサビリティの整備は進んでいません。結果、安全でない材料の混入や、汚染された食材での事故が後を絶たず、富裕層は国内食材に不安を感じて、高額だとしても日本産や他の国の安全な食材を購入しています。

この問題の解決に取り組むべく、中国の2つの大手企業グループがブロックチェーンを使った食品トレーサビリティシステムの構築に取り組んでいます。

一つは中国eコマース市場の雄、アリババ・グループ・ホールディングス(阿里巴巴集団)等が推進する「フード・トラスト・フレームワーク」です。PwC(プライスウォーターハウスクーパース)、オーストラリア郵便公社、サプリメーカー・ブラックモアズとともに、偽造食品の追跡とその削減を目指しています。

もう一つの取り組みは、IBM、ウォルマート、JD.com、精華大学の国立電子商取引技術研究所が発足させた「Blockchain Food Safety Alliance(ブロックチェーン食品安全同盟)」です。各企業のノウハウを生かして、生産段階から消費までのデータを収集し、消費者に提供する事で食の安全を実現しようとしています。

実際に使われる日はいつか

この例の他にも、スターバックスやフランス大手小売店カルフールといったグローバル大手企業が進めるトレーサビリティにブロックチェーンを活用する実証プロジェクトや、日本でも宮崎県東諸県郡綾町が電通国際情報サービスと連携して行う有機農産物トレーサビリティ改善プロジェクト等、さまざまな形で実証が進んでいます。

現在、このようにさまざまな実証が行われているブロックチェーン技術。期待も大きい一方で、大きな社会課題の解決を目指すため、数々の技術的・社会的なハードルが存在します。一朝一夕に導入が進み改善される事はないかもしれませんが、インターネットが少しずつ、しかし、大きく世界を変えているように、ブロックチェーンが農業界を5年後、10年後に大きく変えているかもしれません。

 
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