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生産者の試み

馬ふん×マッシュルーム×地熱 馬を中心とした新たな循環の形

馬ふん×マッシュルーム×地熱 馬を中心とした新たな循環の形

2018年06月09日

岩手県八幡平で、地熱を活用したマッシュルーム栽培とプレミアム馬ふん堆肥製造を行い、馬と人との共生モデルを目指すジオファーム八幡平。長らく競走馬の育成に関わってきた経験から、引退競走馬のセカンドキャリアの構築や、余生を安心して過ごせる仕組みづくりを目指し、馬ふんを活用して良質な堆肥やマッシュルームを作ります。馬ふん堆肥の特徴や、馬と密接な関係にあるマッシュルームの生産方法について、ジオファーム八幡平代表の船橋慶延(ふなはし・よしのぶ)さんにお話を伺いました。

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馬ふん堆肥は優秀な有機肥料

キノコ

──ジオファーム八幡平で行われている、馬から始まる循環について教えてください。

私たちは、八幡平の牧草地で草を食べた馬のふんで堆肥をつくり、その堆肥を元に農業を行っています。

馬ふん堆肥は、とても安全な肥料です。馬ふんが発酵する時に発生する熱で、雑菌は全て死滅するからです。また、臭いがないことも特徴です。私たちが育てる馬は、ほとんど草しか食べません。ふんの中に穀類などはほとんど含まれず、食物繊維が豊富。放牧時間をしっかりとる事によってストレスが少ないので腸内環境も良く、堆肥が完熟した後は、山の土のような香りがするだけで、ほぼ無臭に近い状態になります。

さらに、堆肥としての効果は抜群です。成分が濃すぎず、農家からは、馬の堆肥が一番良いと評判です。また、土に混ぜ込むのではなく、文字通り土代わりに使っていただくこともあります。たとえば、都会のビルの屋上緑化プロジェクトのひとつ、「銀座ミツバチプロジェクト」では、屋上庭園の土として馬ふん堆肥を利用してもらっています。

伝統的なマッシュルームづくりに欠かせない馬ふん

キノコ

──馬ふんは、堆肥にするだけでなく、マッシュルーム栽培にも生かしていると聞きました。

はい、馬の堆肥を元にしたマッシュルームの生産も行っています。そもそも、マッシュルームの人工栽培は馬小屋から生まれたと言われており、フランスで確立された栽培方法では伝統的に馬の堆肥=「馬厩肥(ばきゅうひ)」が使われていました。

馬厩肥とは、厩舎(きゅうしゃ)の敷わらと馬ふんを混ぜて作られた堆肥です。敷わらには麦わらや稲わらなどの種類がありますが、わらを確保するのが難しいため、現在私たちはおがくずを馬房に敷いています。しかし木質であるおがくずではマッシュルーム栽培はできません。そこで別途、馬厩肥をベースとしたマッシュルームの菌床を仕入れて栽培しています。

「八幡平マッシュルーム」は、本州の中では最北端の生産地で、他の産地よりも標高が高く、温度や湿度が低いところで作られているため、パリッと割れるように身がしまっているのが特徴だと思います。岩手山からの伏流水による良質な湧き水も重要で、香りも豊かです。大手の居酒屋チェーンをはじめとして、こだわった商品を扱うスーパーなどに出荷しています。

一つのハウスに菌床を詰めることで、同じ菌床から約3回はマッシュルームを育てることができます。使い終わった廃菌床は堆肥として再利用します。おがくずベースの馬ふん堆肥と比べると、成分がだいぶ濃くなっているので、栄養が足りていない土に追肥をする時に使われることが多いですね。

マッシュルームの安定供給体制を整え、次のステージへ

キノコ

──活動を続ける中での課題や難しさを教えてください。

マッシュルームづくりは、安定した生産体制を作るのが大変でした。技術や経験不足で、菌が定着しなかったり、収穫できなかったり、病気が蔓延してしまうこともあり、計画通りの収穫量にはなりませんでした。

その課題は、千葉県のマッシュルーム農家から技術提供をしてもらえることになってから、解消されつつあります。温度や湿度の管理などを指導してもらい、収穫量は少しずつ増えました。2017年度は、年間50トン程の収穫量になりました。

ただ、技術以外にも、馬厩肥を作る上で欠かせない、わらの確保にも苦労しています。ジオファームを始めた2012年当時は、東日本大震災での福島第1原発の事故の影響で、牧草や敷わらの放射線物質による汚染の可能性が疑われ、東北のわらが使えない時期もありました。適切な検査でその懸念はなくなりましたが、それでも十分なわらを確保するには至りません。ただ、日本全国で見れば、未利用のわらや、田んぼや畑の肥料として使われているわらも多くあります。生産を安定させるために、欧州からのマッシュルームの菌床を輸入して栽培したりもしますが、コスト高ですし、今後はより一層効率的にわらを集められる体制づくりを検討しなければと考えています。

──マッシュルームの生産が安定し始めた今、次の一手を教えてください。

今後は、マッシュルームだけでなく、他の野菜も作っていきます。この数年、馬ふん堆肥を使った野菜の試験栽培をしてきて、完熟した良い堆肥を使っていれば、農薬を使わなくても作物ができることは分かりました。2018年度からは地元の有機農家と連携して、ジオファームとしての年間作付け計画を立てて、野菜づくりを行っていきます。また、農泊体験を受け入れる体制も整ってきました。農業や自然に触れたり、温泉に入ったり、馬と遊んだりできるような場所にしていきたいと考えています。

そして、馬が普通に暮らす中で生まれる馬ふんを活用した循環を作ることで、馬と人が共生する社会を実現したいですね。

ジオファーム八幡平

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