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次に来るスーパーフード「はだか麦」とは? 美しい讃岐の麦畑の救世主

次に来るスーパーフード「はだか麦」とは? 美しい讃岐の麦畑の救世主

日本人が昔から食べてきた麦ごはんに使われてきた大麦。その一種の「はだか麦」が、次に来るスーパーフードとして注目されつつあります。うどん県として知られる香川県では、古くから小麦だけでなく様々な大麦が生産され、中でもはだか麦は全国2位の生産量。「讃岐はだか麦本舗」の店主、高畑実代子(たかばたけ・みよこ)さんがはだか麦の販路拡大を通じて守ろうとしているものを追いました。

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はじめまして「はだか麦」


「はだか麦」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。大麦は食物繊維を多く含み、その量は玄米の3倍、白米の20倍。はだか麦は手で簡単に外皮がはがれ、無理に皮を削り取ることがないため、その栄養素を余すところなく取り入れることができます。
ちなみに、大麦は米と同じようにうるち性ともち性があり、最近話題のもち麦はもち性の大麦です。
はだか麦は古くから日本で食されてきましたが、最近では焼酎やみその原料として使われることが多く、一般消費者にその名が知られることはほとんどありませんでした。

しかし、最近「次に来るスーパーフード」として、はだか麦を使った商品がじわじわと注目を集めています。
はだか麦生産量第2位の香川県善通寺市で、130年間精麦業を営む株式会社高畑精麦の高畑実代子さんは、「はだか麦」そのものを主役とした商品を開発。「讃岐はだか麦本舗」というブランドを立ち上げ、はだか麦の普及活動に奔走しています。

故郷の風景を守るために

讃岐はだか麦本舗の店主・高畑実代子さん

讃岐はだか麦本舗の店主・高畑実代子さんはとてもエネルギッシュ。小柄ながら、印象的な目と聞き心地の良い声で、はだか麦について語る様はとても魅力的です。
高畑さんは、香川県で明治時代から続く精麦会社の娘として生まれ、通学路は麦畑という環境に育ちました。大好きだけれどあまりに当たり前だったその風景を後にし、東京の音楽大学に進学。家業とは無縁の生活を送っていました。
2004年に香川に戻り、実家の高畑精麦(たかばたけせいばく)に入社。同社の主な業務は焼酎やみそなど食品の原料となる大麦を精麦することです。実代子さんは当初、品質管理を担当していました。
精麦は製粉とは違い、どちらかというと精米に近い加工作業です。それぞれの取引先の希望に応じ、この先製造する商品ごとに細かく麦を削っていく、とても緻密な作業の積み重ね。この作業があってこそ、各社の麦焼酎や麦みその味と品質が守られるのです。

実代子さんはただ品質管理をするだけにとどまらず、その品質維持の要となる工場の隅々まで見て回り、精麦の技術や機械のメンテナンスについて知識を深めていきます。そして、そもそも取り扱っているはだか麦がどのように生産されているかを知るため、麦畑にも飛び出していくことに。

はだか麦を刈る様子

麦は二毛作で作られるため、稲刈りの後からが麦の季節です。10月から11月にかけて土づくりをし、12月までに種まきをします。1月・2月は麦農家の腕の見せ所。発育状況を確認しながら技術を駆使します。あとは“麦作に合った”土地の力に任せて、5月半ばに収穫となります。麦づくりに合うのは水はけのよい温暖で雨の少ない土地。香川の讃岐平野は、まさしく麦づくりにピッタリの土地なのです。

しかし、気が付くと麦畑はどんどん宅地化されたり耕作放棄地となったりして、姿を消しつつありました。1955年頃2万5000ヘクタールだった作付面積は現在900ヘクタール程度まで減少。原因は担い手の不足です。麦づくりの技術を持った麦の生産者は年々高齢化し、若い新規就農者は少なく、技術も土地も受け継がれなくなってしまっていました。
この麦畑の風景が消えてしまう現実に気づいた実代子さんは、この状況を止めるための手立てを考え始めました。

はだか麦をかわいがってもらいたい

もっとはだか麦と、その背景にある香川の自然風土を広く知ってもらうにはどうすればいいか。
ここで実代子さんの行動力が発揮されました。2014年9月、ブランディングの専門家である吉田透(よしだ・とおる)氏を迎え、はだか麦の新商品を売り出すためのプロジェクトチームを立ち上げることに。
一昔前は、麦ごはんは「くさい飯」の代名詞のように言われたこともあり、どちらかというと嫌われ者。それを健康志向とオシャレさで全く新しいものに生まれ変わらせるため、2014年12月、「讃岐はだか麦本舗」というブランドが生まれました。

まずは、お米に混ぜて炊く商品の開発から着手。
ご飯と一緒に炊いたときの食感を良くするのに、これまで高畑精麦で培われた「麦をアルファ化(※)して吸水しやすくする技術」が使われました。削りの度合いなど、細かな調整が行われ、中身は自信作が完成。

※糊化ともいう。デンプンに水分を加え加熱することでデンプン分子に規則性を失わせ,糊状(α状)にすること。それをもう一度乾燥させることで麦の吸収力を増す効果がある。

加えて、これまでの麦のイメージを一新する「ブランディング」のため、パッケージにも非常にこだわりました。
「はだか麦をかわいがってもらいたい」
その一心で、デザインのプロ、写真のプロなど各方面のプロを巻き込んで試作を重ね、思わず手に取ってみたくなるオシャレな3種類の商品が出来上がりました。

左から、はだか押麦75g、はだか玄麦75g、はだか丸麦75g

「はだか押麦」「はだか玄麦」「はだか丸麦」は、国産農産物の消費拡大事業者を表彰する「フードアクション・ニッポンアワード2015」の商品部門で優秀賞を受賞。販路拡大の第一歩を大きく踏み出しました。

左から、NUDE GRANOLAプレーン50g、NUDE GRANOLAオリジナル45g、左から、NUDE GRANOLAフルーツ50g

そして、さらに「グラノーラ」シリーズを開発。朝食として食卓に上ることの多いシリアルとして、はだか麦を変身させた商品です。はだか麦をそのままパフ状に膨らませ、サクサクとした食感に。そのまま食べてもおいしい商品です。栄養価の高さで、地元の保育園のおやつとしても採用されています。

はだか麦のこれからは明るい!

新規就農者の梶原大介さん(左)と吉森翼さん(右)

実は3年前、はだか麦を作る新規就農者が現れました。いろいろな麦を並行して作る生産者が多い中、二人ははだか麦一筋です。
はだか麦が彼らのような就農者にとって魅力的な作物であり続けるために、実代子さんはさらに普及活動のために東奔西走しています。各地のイベントで店頭に立ち、また、はだか麦の食べ方を伝えるための講座なども積極的に開催しています。

はだか押麦で作るグリーンサラダ

讃岐はだか麦本舗の商品はインターネットで入手できますが、次第に店舗での取り扱いも増えています。
もし店頭で手に取ったなら、そのかわいらしい商品の背景に、一面に広がる黄金色の麦畑と多くの生産者、そしてはだか麦を守ろうとする実代子さんの姿を想像してみてください。その一粒一粒がいとおしく思えてくるに違いありません。

讃岐はだか麦本舗
写真提供:株式会社高畑精麦

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