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香港で日本の農産物を売るには? 販売店に聞く日本産品のニーズ

香港で日本の農産物を売るには? 販売店に聞く日本産品のニーズ

最終更新日:2018年06月18日

你好! 香港在住ライターの寺田綾子です。アジアでの日本の農産物について、現地の方の視点を交えながらお伝えするシリーズ第2回。今回は、販売事情からみる日本の農産物の販路拡大の可能性に焦点を当てます。食の安全や品質に対して比較的意識の高い香港では、農産物をはじめとする日本の食品が人気です。そんな香港でどのように日本の農作物が販売されているのか、また、実際に販売されている方から見たニーズや課題など、生の声をお伝えします。

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日本の農産物はどこで買える? 香港での販売状況

果物はローカルなお店でも買えるが、野菜類は日系のお店中心

シリーズ第1回でもお伝えしましたが、糖度の高い日本の果物は香港で人気が高く、ローカルなスーパーや青果品店、市場でも販売されています。一方で野菜類は、日系を始めとする外資系のスーパーや小型商店での取り扱いが中心です。
現地でも有名な日系のお店としては、1980年代から香港に出店している小売り大手のイオングループと百貨店のそごうが挙げられます。特にイオングループは香港全土に多数の店舗があり、日本人だけでなく現地の方にも広く利用されています。販売されているのは日本からの食材だけでなく、中国産のものや世界各地からの輸入食材があります。
その他にも、日本人が多く居住するエリアを中心に、日本の農産物を扱った小さなお店があります。それらは、日本人駐在員などが多く住む高層マンションや街なかのマンションの1階にある店舗スペースに入っています。

日本の生鮮品は高需要! 販売して分かったニーズ

顧客の声に押されて青果品の販売が始まった

M’Martでは、日本の食品を販売していることが一目でわかるように配慮している

では、販売されている方から見た日本の農産物のニーズは、どういったものなのでしょう。日本人が多く住む紅磡(ホンハム)エリアにある日本食品の専門店「M’Mart」の店長、稲葉さんにお話を聞きました。

M’Martは2015年7月から紅磡エリアで路面店を運営してきました。当初は廃棄ロス・輸送費などのリスクを避けて、常温で日持ちのする加工食を扱っていましたが、実際の需要と合っていない事もあり、野菜などの生鮮食品の販売を始めたそうです。
今は、長野県にある「あめつち農園」を中心に野菜や果物を仕入れている同店ですが、当初は仕入れルートが見つからず苦労したと言います。「お客様がほしがる野菜や果物を仕入れるにも、ルートがなかったんです。どうしようかと思っているときに、あるお客様からご相談をいただきました。ご家族の実家が日本で農家をしていて、農産物が余って捨てているのでそれをどうにか輸出できないか、というお話でした。サンプル商品をいただいて検討し、すぐに仕入れを開始しました」
年中安定的に販売したい種類のものや、季節性のあるものを仕入れていくためにも、これからも仕入れ先を広げていきたいと稲葉さんは語ります。
生鮮品を取り入れたことが功を奏したのか、固定客も順調に増え、仕入れ量も増えてきています。同店では、店頭での通常販売のほかに、季節の野菜を中心に数種類のものを組み合わせたセット販売のお届けをしていますが、香港全土への通販は現在週30件ほどと、昨年の2倍になったそうです。

ニーズに国境はない?!

同店の約半分の面積に、野菜などの生鮮品が並ぶ
野菜の隣の棚には、納豆や豆腐、こんにゃく、ハム、卵などが陳列されている

同店を訪れる人の割合は香港人が6割ですが、実際の購買客の比率では日本人が6割ほどと、日本人客の割合が高くなっています。日々店頭に立って来店客とやり取りする中で、「日本人のお客様も、それ以外のお客様も、求めるものにあまり違いはない」と稲葉さんは感じています。「香港は基本的に年中温暖なので、夏野菜が比較的よく売れる、というところが特徴でしょうか。納豆や日本のキュウリなども、国籍を問わず人気です」。一昔前はべたべたしているなどと言われることのあった日本米も、今は地元客も購入していくそうです。
稲葉さんはまた、香港の方がよく日本の商品を知っているという印象を持っています。食品の安全性などについて意識が高く、良いものを買いたいという姿勢が感じられると言います。「知る人ぞ知るという感じの、こだわりの米油を日本から仕入れているのですが、ある香港人のお客様がまとめて8本購入されたことがあります。成人した子どもさんの分も含めての購入とのことでしたが、よく知っているんだな、と驚きました」

来店客にわかりやすいように、値札は日本語と広東語(または英語)の2か国語で表記

香港での販売の課題

ネックになるのは輸送費

先述した仕入れ先の確保以外にある課題として、稲葉さんは流通費を挙げます。「小さなお店なので大型店や、中国産などのものを売っている市場との価格競争はしていません。その代わりに、日本産のものに限定して、お客様から要望のあった商品を仕入れていますが、ネックになってくるのは輸送費です」。
もともと流通業にかかわる会社からスタートしたお店であり、農家から仕入れた作物の輸出入の手続きは同店ですべて行っています。農家と直接取引を行うことで経費を抑え、販売価格を抑える努力をしていますが、それでも香港への生鮮品の輸送は航空輸送になるので、経費を削るにも限度があります。
香港ではなかなか販売されていないものや、同じ野菜でも日本産か否かで種類が異なるものなど、顧客から希望があれば個別に仕入れもしている同店ですが、その場合も輸送費の問題などから必然的に量が多くなってしまい、1人・1家族ごとというよりも、複数の方がまとまってグループでの注文になるケースが多いそうです。

日本産「まがい」に注意! 紛らわしい商品も

稲葉さんによると、日本人客でも、生で食べるものは同店で購入し、加熱して食べるためのものは一般のスーパーや市場で購入する、と上手に使い分けていらっしゃる方が多いそうです。「個人的な感想ですが、日本のものに比べてほかの国のものは、大味だなと感じることがあります。生で食べるには、衛生的なこともありますが、アクの強さなど素材そのものの味が影響するのではないでしょうか」。
買い分けをすることは、稲葉さんからお客様に勧めることもあります。その際に注意すべきこととして、本物かどうかの見極めが大切だと言います。

「市場や地元のお店でも、日本の果物や野菜を販売されていることがあります。ただ、買うときには注意が必要です。たとえば、香港でも人気の高いイチゴの『あまおう』。地元のお店でも『あまおう』は販売されているのですが、以前あるお店で、『あうおま』『JAふくお女八か』などと書かれたイチゴを見たことがあります。ぱっと見るだけではわかりにくいですが、日本産ではありませんでした」
ひらがなやカタカナなどの日本語で表記をされていると日本人にも紛らわしいですが、日本人以外の方にとってはより分かりにくいことは想像に難くありません。日本産のものがいい、というイメージがあってこその状況と言えますが、これからより多くの方に日本の農産物を正しく知ってもらうためにも、消費者だけでなく生産者・販売者もともに注意が必要かもしれません。
 
 
【取材協力】M’Mart 日本食品直送専門店 Japanese Store
G/F, Lux Theatre Building, 2-18 Ming On Street, Hung Hom, Kowloon, HK
電話+852-2375-1081
 
 
【香港レポート】第1回目はこちら

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