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日本の農産物の需要高し! 香港在住ライターが実体験した現地の食事情

日本の農産物の需要高し! 香港在住ライターが実体験した現地の食事情

最終更新日:2018年09月07日

你好(ニーハオ)! 香港在住ライターの寺田綾子です。アジアでの日本の農産物について、現地の方の視点を交えながら日本の皆様にお伝えするシリーズ第1回。今回は香港での日本の農作物が、現地の一般の方からどのように見られているのかについて、またそこから見えてくる日本の農産物の販路拡大の可能性を探ります。
香港では、香港内での農産物の生産が限られていることから、中国本土の農産物を中心とした食品が広く出回っています。物価の高騰が進む香港において、日本の農産物は決して安くありませんが、特に「味」の面で、現地の一般の方々からも高い支持を得ています。

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香港での「食」事情

香港の人は家で料理しない?

香港は、アジア圏の中でも教育水準や収入が平均的に高く、食品への安全意識も比較的高いと言えます。香港に滞在する間には、「あそこのお店は衛生面がよくない」「○○製のものは気を付けたほうがいい」という助言を、地元の方から受けたこともありました。しかしながら毎日自分で調理をするという方は多くありません。その背景には、手軽に利用できる外食・中食の普及や、できるだけ手間をかけずに食事をしたいという人々の意識があります。ある女性(30代前半)は、「平日に自分で料理をするのは多くても1、2回ほど。忙しいし、台所も広くないので、買ったほうが手間も負担も省けてよい」と話し、40代男性も「ここ20年ほどで外食・中食がとても便利になり、人々のライフスタイルも核家族化や孤立化が進んで、家で調理する割合は減っているように思う」と話していました。

家族向け賃貸の台所。ガスコンロが備え付けられておらず、その代わりに電子レンジや炊飯器などを利用している。

また、人々が成長する中での調理体験の少なさも関係していると言えるでしょう。一定以上の収入があり子どもを持つ家庭を中心に、家事全般や子どもの世話のために、フィリピンやインドネシアなど近隣諸国出身のメイドさんを雇うことも一般的です。家庭内だけでなく、学校で調理技術を身に付ける機会も少ないことから、成人するまで野菜などの食材を触ったことがなく、「泥や臭いが気になるので、(食材を)素手で触りたくない」という意見も聞かれました。賃貸物件を見ても、たいていコンロなどの調理設備は備わっておらず、調理をするよりもテイクアウトで手軽に済ませる傾向に拍車をかけています。

朝から外食もアリ! 外食や中食が充実

現地香港の方でにぎわうお店で食べた一般的なランチメニュー。野菜より肉類のインパクトが強い。

外食やテイクアウトはごくごく一般的で、伝統的なお粥店やファストフード店などに朝から家族で食べに行くケースも。話を聞いた香港の30代のご夫婦は、「食事は基本的にすべてテイクアウトか外食で済ませている」と言っていました。食事の準備にかける時間や手間を省くため、朝食は食べないという人も。その代わりに、仕事の終わる夕方までエネルギーが持つように昼食はしっかりと食べるようにしている、と教えてくれた方も複数いました。香港人を支えるランチメニューでは、付け合わせにハクサイやサイシン(菜心)というアブラナ科の青菜がよく料理に添えられていますが、メインは肉類です。
また、外食・中食などのうち、地元の方に広く利用されるのは、お手頃価格な香港のローカルな料理を供するお店です。それらのお店は、1食40~50HKドル前後(約600~750円)の価格帯になっており、価格を抑えるためにも日本産の農産物が使用されることはあまりありません。ピザなどの西洋風ファストフードや寿司・焼き鳥などの日本食もありますが、ローカルなものと比べると価格は高くなる傾向にあります。中でも日本産の材料を使っている店舗では、それが大きな売りとなっており、価格にも反映されています。

野菜が不足しがち? 野菜摂取の実情は?

香港では、野菜は生よりも加工して食べることを好む食習慣があります。産地にもよりますが、野菜そのものの価格は香港でもそこまで高くありません。しかし、加工調理された野菜は肉料理とほぼ同じ価格になることが多く、「比べてみるとお得感がある肉料理を選びがち。高い価格になるなら、野菜料理は家で食べればいいと思う」そうです。結果として、外食・中食では肉類の比重が高くなりがちで、特に若い世代でその傾向が高くなるようです。
野菜は食べないのかと聞いてみたところ、「野菜を煮込んだスープを週に1~2回食べる。毎日食べるというより、2~3日や1週間単位で考えて、野菜を取れていればいいと思う」(30、40代男性)、「肉類メインの食事でも、お茶をたくさん飲めば胃もたれしない」(30代女性)という答えでした。しかし、「野菜は調理に手間や時間がかかるけれど時間はなく、買うとなるとお得感がないので、実のところ野菜は不足しがち」という状況もあるようです。

香港における「日本製」へのイメージ 

日本のものに対して、食に関するものから日用品まで「質が良い」というイメージを抱いている香港の方は多く、「日本製」はある種のブランドとして認識されていると言えます。商品のパッケージや店舗の看板などに、日本製の材料などを使っていなくとも、ひらがなやカタカナが取り入れられている例を見かけます。

ひらがなが使われた製品パッケージ。日本語の中でも「の」は、よく使われている。

日本のものの「質が良い」というイメージには、材料がよい、安全であるといったことだけでなく、食材が一口大に切られていることや、パッケージの装飾性や開けやすさなど、使い手への配慮がされていることも含まれています。来日経験もある男性(40代)によると、「日本では、野菜などが一口大に切られていて食べやすい。食べる人のことを考えている」と思ったそうです。
また、食の嗜好として香港では甘いものが好まれるようです。日本の食材や日本食は甘みがあり、香港の方の口にもなじみやすいのかもしれません。街なかやローカルなスーパーでも、日本の食材やお寿司などの日本(風)の加工食品を見かけます。

ローカルな店で販売されていたお寿司。日本では見かけないネタがあったり、酢飯が乾燥していて食感が異なったりするケースも。

香港での日本の農産物への評価

甘くてジューシー! 日本の果物は大人気

日本産の果物が売りでもある、人気のフルーツジューススタンド兼果物店の店頭にて(写真協力=陽光) 。

甘いもの好きな香港にあって、糖度の高い日本の果物は大人気です。地元の方がメインの購買者であるローカルなスーパーや小売店でも、果物を中心とした日本の農産物が販売されている場面を見かけることがあります。
日本製の農産物についての意見を聞いてみたところ、「安全性は欧米のものと同じくらいだと思うけれど、日本製の果物はもっと甘くておいしい」という意見が複数聞かれました。筆者も後日、イギリス産のイチゴを買って食べてみましたが、日本産のイチゴになじんでいるからか、はたまた当たり外れなのか、甘みがあまり感じられず驚きました。
おいしさ、ブランドイメージとも兼ね備えた日本の食材ですが、「価格が高いので、気軽に買えない。もっと安ければ買うのに」と残念がる声も。スーパーなどで見てみると、確かに日本産の果物は、欧米産のものと比べても少し割高な価格設定になっているようです。日本産のイチゴが1パック3,000円近い値段になっていることもありました。

日本の野菜はまだまだこれから?

一方で日本の野菜は、果物ほどポピュラーではありません。日系をはじめとする外資系のスーパーや個人商店での取り扱いが基本で、香港の一般家庭が利用する地元のスーパーや街なかの市場での取り扱いは限られています。前述したように、外食・中食では肉類がメインとなった料理が多い傾向があり、家庭で調理するにも価格が比較的高いことから、一般の方への普及はまだまだこれからのようです。「安全面などを考えて、日本産の野菜にも興味があるけれど、価格的に日々の食事に取り入れるのは難しい」という意見がある一方で、「野菜を摂取したほうが健康に良いのは知っているので、取りたいとは思っている。もし、加工調理済みの野菜が手軽に安く買えるのなら、ぜひ食べたい」という声も出ました。
その中で関心の高い日本の野菜というと、甘みのあるサツマイモがあります。紫イモを使ったラテやケーキなどのお菓子が人気です。性別を問わずに紫色が人気な香港で、味・色ともに受けているのかもしれません。また、日本風の抹茶は数年前からブームになり、今も大人気。お菓子やドリンク類を中心に、日本よりも多くの「抹茶」製品を見かけます。

抹茶を使ったドリンク(左)と、紫イモアイス(右)。

日本の食材のこれから

香港に来てみて個人的に驚いたのは、日本ほど食文化が西洋化していなかったことです。外国人の多い地域では西洋式のカフェやバーも多いですが、日本と比較すると、特にフランス料理や西洋菓子の一般への普及はこれからなのかもしれない、という印象を受けました。これに関して現地の方から、「西洋風な料理がより広まってきているので、日本産の野菜はサラダの材料としていいかもしれない」という意見が。日本製品というブランドと品質を保ちつつ、より多くの方に日本の食材を利用してもらうためには、日本料理の枠組みを超えた視点や、現地での利用や保存のしやすさなどを考慮することがこれからの需要拡大のカギになるかもしれません。

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