市民に親しまれる枝豆。かわいいバスが走る街、野田市
取材に訪れたのは6月中旬。野田市に到着すると、かわいらしいバスを見つけました。

屋根の上に枝豆を載せた、まめバス。枝豆・大豆・小豆をイメージしたカラーリング
野田市のコミュニティバス、まめバスは2004年に運行を開始して以来、市民の足として活躍しています。まめバスという愛称は公募で決められ、「小回りのきくミニサイズのバス」「こまめに乗ってもらいたい」「全国有数の枝豆の産地」などの意味が込められています。

まめバスは市内各所を運行し、多くの市民に利用されています
また野田市では、地元の人に、より枝豆に親しんでもらおうと「えだまめオーナー制度」を実施しています。これは枝豆農家が栽培した枝豆をオーナーが自分で収穫できるという取り組みで、「新鮮でおいしい枝豆を食べられる」と、年々人気が高まっているそうです。市を挙げて「野田の枝豆」ブランドを盛り上げている様子が感じられます。
即完売! 新鮮な「野田の枝豆」を購入できる場所はここ

野田市の農作物や加工品を、卸売業者などを通さず直接販売する「ゆめあぐり野田」
続いて、おいしい枝豆を購入するべく、野田市の農産物直売所・ゆめあぐり野田へ向かいました。

大人気の枝豆や新鮮な野菜を求め、連日多くのお客さんでにぎわいます
ゆめあぐり野田の店頭に枝豆が並ぶのは5月上旬から8月上旬までで、価格は時期によって異なります。毎朝農家の方が持ち込み、売り切れ次第再入荷するそうですが、朝の入荷分は昼前には完売してしまうとのこと。ゆめあぐり野田が契約する枝豆農家は13軒。品種や生産者によって味も異なるため、好みの枝豆をピンポイントで購入していくお客さんもいるのだとか。

この日は170袋の枝豆が営業開始からわずか30分で完売! 「野田の枝豆」の人気の高さがうかがえます
ゆめあぐり野田では電話注文も受け付けています。興味のある方はぜひお問い合わせを。
おいしい「野田の枝豆」は、手間ひまかけて作られていました

祖父の代から続く、荒木さんの枝豆畑
多くの人に愛される「野田の枝豆」はどのように作られているのでしょうか。若手枝豆農家・荒木大輔さんのもとへ伺いました。
他産地より早い「野田の枝豆」の旬
荒木さんが枝豆作りを始めたのは4年前。JA全中(全国農業協同組合中央会)に11年ほど勤務したのち、祖父が昭和40(1965)年ごろから続けていた枝豆作りを継ぎました。枝豆以外にも季節に合わせてネギ・春菊・ホウレンソウなどを生産しており、今年は90アールほどの畑で枝豆を育てています。
枝豆出荷の最盛期を迎え、荒木さんたちは忙しく出荷準備を行っていました。

地域の農協集荷場に枝豆を持ち込む荒木さん。トラックで1時間ほどかけ、東京の大田市場へ運ばれます
「野田の枝豆は全国の他の地域よりも出荷時期が早いんです。4月末から出荷を始め、父の日ごろが出荷のピーク。海の日を過ぎると群馬や新潟、東北など他の地域の枝豆が出て相場が下がるので、その前に出荷を終わらせてしまいたいです」
鮮度が命。「野田の枝豆」のおいしさの秘密とは
「野田の枝豆」は、全て「枝付き」で出荷されるのが特徴。
「枝豆は『鍋を火に掛けてから取りに行け』と言われるほど、収穫した途端に味が落ちていってしまうんです。野田の枝豆は“枝付き規格”で出荷していますが、これは枝付きのほうがサヤのみの場合と比べて甘みが残るから。祖父の代には、束規格(収穫した枝豆を、葉を付けた長い枝のまま針金で縛った状態)で売っていた時代もあったほどです」

枝付き規格の枝豆。高品質の袋を使用するなど、鮮度を保つさまざまな工夫がなされています
しかし、枝を付けたまま出荷するのは非常に手間が掛かることだそう。
「機械でサヤだけをもぎ取るのとは違って、枝付き規格は人の手で葉を取り、豆の選別を行い、袋に入るようカットしなくてはいけません。今日は72キロ分の商品を出荷しましたが、収穫に1時間、枝を切って選別して洗って袋に詰めて……という作業に3人で5時間かかりました。大変な作業です」

人の手で一つずつ葉を取り、豆を選別していきます
枝豆農家直伝・おいしい枝豆の選び方&食べ方
枝豆の収穫適期(最もおいしいものが収穫できる時期)は約1週間、一番おいしいのはそのうち3日ほどだと荒木さんは言います。
「枝豆は収穫タイミングがとても重要。収穫適期を過ぎると実や枝が黄色くなり、見た目も悪くなってしまいます。出荷時期に合わせて一番おいしく美しい枝豆を次々と収穫できるよう、何回にも時期を分けて播種(種まき)し、順に育てていくんですよ」
店頭で枝豆を選ぶ際も、なるべく黄色味がなく緑色の濃いものを選ぶと良いそうです。

まもなく収穫を迎える枝豆。実が膨らんで葉が少し黄色味を帯びてきたら収穫の合図です
今回はなんと、畑から取ったばかりの枝豆をその場で塩ゆでしてもらい、ごちそうになりました!
「サヤには味が染みづらいから、塩で傷を付けるくらい塩もみすること。ゆでる時も少し塩分を濃いめにするといいですよ。ゆで加減は『少し固め』で」
試しに食べて火の通りを見つつ、しばらくゆでたらザルにあげて冷まします。湯気の上がる枝豆に更に塩を振って、いただきました。

収穫したばかりの枝豆を沸騰した湯に入れると、サヤの色がぱっと鮮やかな緑色に
いただいた枝豆は──生まれて初めて食べる味と食感で、今まで食べてきた枝豆とは全く別の食べ物のよう! 弾力のある豆をかじると、フレッシュな香りを残しつつも濃厚なうまみと甘みが広がります。「枝豆は鍋を火に掛けてから取りに行け」という言葉は決して大げさではなさそうです。この取れたてのおいしさをできるだけ保てるよう、「野田の枝豆」は枝付きで出荷されているのですね。
若者たちの力で「野田の枝豆」を守りたい
枝豆をはじめ、さまざまな農作物が作られている野田市ですが、農業従事者の高齢化に伴って使われない土地も増えてきているそう。そんな中、荒木さんが中心となり2017年にJAちば東葛野田地区(福田支部)の青年部を発足。農業や経営に関する勉強会を開いたり、都心でのマルシェへ出店したりと、今後の野田の農業を変えていこうと活動しています。
「後継者がいないまま、あと20年経ったらどうなってしまうのか。若者がもっと取り組みやすいよう、規格も含めよく考えていかないといけません。法人化など、うまく経営できる組織や仕組みを作っていけたら。子どもの頃の遊び場だった枝豆畑が、また一面に広がるような野田になったらうれしいです」
「野田の枝豆」は市民に愛され、若手農家が守り続けていこうとしていました。今年の夏は枝豆を食べながら、そのふるさとに思いをはせてみてはいかがでしょうか。
取材協力:
野田市役所
ゆめあぐり野田
荒木農園
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