日本酒の価値とは? きき酒師の漫才師と酒蔵の7代目が酒談義【後編】

マイナビ農業TOP > ニュース > 日本酒の価値とは? きき酒師の漫才師と酒蔵の7代目が酒談義【後編】

ニュース

日本酒の価値とは? きき酒師の漫才師と酒蔵の7代目が酒談義【後編】

日本酒の価値とは? きき酒師の漫才師と酒蔵の7代目が酒談義【後編】

最終更新日:2018年09月11日

きき酒師の漫才師「にほんしゅ」が、「この人はかっこいい!」とリスペクトする三重県の酒蔵「元坂酒造」を訪ねました。自分達は自分達のピラミッドを作る。そこには挑戦とロマンがあります。自分達ができることを自分達の方法で取り組む。熱い3人の情熱がほとばしります。7代目八兵衛こと元坂新平さんとお酒を酌み交わしての日本酒談義。【後編】では元坂新平さんが取り組んでいる自然農法と、新平さん、にほんしゅのお二人の末来について語ります。

  • twitter
  • facebook
  • LINE

「マイナビ農業 1周年プレゼントフォロー&リツイートキャンペーン」は終了いたしました。
プレゼントの発送をもって当選の発表とさせていただきます。


うんち味のお酒

元坂新平さんが育てている田んぼ

新平さんが未来のために取り組んでいる自然農法は今、どのような状態ですか?

北井

元坂

自然農法は今年からトライしていることです。今年は自然で育った米の味を知りたい、というのがテーマ。そのため、原始的な方法で育てています。来年からは自分で決めた原始的方法を緩和していって、5年くらいかけて持続可能な農法にしていきます。
大変な取り組みですよね。

あさやん

元坂

原料米の味は、土地の土と、手間をかけることによって生まれるもので決まると思っているんです。“農業肥料”という概念がなく、肥だめの人糞(じんぷん)を堆肥(たいひ)として使っていた時代は、もしかしたら米はその人たちのうんちの味がしたんじゃないかと。
うんち味のお米で造ったお酒はちょっとイヤやな~(笑)

あさやん

元坂

じゃ、化学肥料を使わずに作った米で造った酒はどんな味になるのか? それを僕は知りたかったんです。だから、環境に配慮した自然農法で米作りをする。そのことで誰でも再現可能な酒の味ではなく、大きな単位で言えば三重県という風土が造り出す酒はどんな味やねんと。できるだけ人間の手をかけずに原料米を育てることがベストだと思ったんです。
新平さんは草刈りも機械でやれば15分で終わるところを手でやるものだから8時間かけたりしている。

あさやん

元坂

草刈りを機械でやれば早いですが、そうすると虫がつかなくなる。僕はカマキリを残してカメムシを撲滅したかった。カマキリが卵を付けている草を残すために鎌で一本一本、草刈りする。だから8時間かかる(笑)
カマキリが米に有害なカメムシを食べてくれるから、カマキリは大切なんですよね。

北井

ロマンと収益のバランス

日本の農業を熱く語る三人

元坂

田んぼの命の相互作用をうまく利用して恵みをいただく。そこに生まれる命は偶然ではなく、必然であり、その必然を大切にしましょう、という取り組みなんです。また、人間も生態系のひとつとして考え、人間の都合が関与することも必要だと思っています。
新平さんのロマンですよね。

あさやん

元坂

しかし、僕は自己満足のため、ロマンだけで自然農法をやっているわけではありません。しっかりと経済活動に乗せることが大事。経済活動の一環としてやるときは収益のバランスも大切です。
そういうお米で造ったお酒が欲しい人は通常のお米で造ったお酒の3倍の値段でも買う、というのが成立しますよね。

北井

自分が主流になる

米の苗を植えるあさやん

三重県の土地でできた原料米で美味しいお酒ができたら、米の価値も高まって、生産する農家さんも増えてくる?

北井

元坂

可能性としてはありますね。もう少し言うと、別の土地の酒造さんでも土着の品種を探して復活させて、そこの環境で造った、その土地の味を再現する酒造が増えてくれば、そこの土着の米を生産する農家さんも救われると思うんですよ。
めちゃめちゃいいですね。

あさやん

そのモデルを作りたいということですね。

北井

元坂

そんな取り組みを業界全体に広げたい。それが持続可能な道のひとつだと思うんです。海外から輸入するのもいいけれど、もっと内需を活発にしないといけない。農家と酒造の関係を作ることも大切だと思っています。
そういう取り組みはかっこいいですよね。

北井

元坂

そのためには、僕の目指すものが主流になっていかないとダメだと思っています。言葉だけでなく、実際に売れて成功しないといけません。僕がフェラーリに乗るようになったら、若手が集まってくると思う。まあ、フェラーリに乗るくらいならキャビン付きのコンバイントラクターを買いますけどね(笑)

自分でピラミッドを作る

お酒を真剣な顔で飲む北井さん

僕らも芸人の主流にならないといけないなと思っているんですよ。

あさやん

活動を始めて3年くらいでテレビにも出してもらえるようになったけど、「あの子らは漫才師で、お酒とか日本の文化にも詳しいよ」と世間に浸透するまではぜんぜんいけていないわけです。
いまだに「きき酒師なの? 漫才師なの?」と言われる。「僕らはきき酒師の漫才師ですと言っているじゃないですか」と返すんだけど、その真意がなかなか伝わらない。僕らが目指しているのは日本酒や日本の文化を伝えること。きき酒師の漫才師という二足のわらじではなく、一足なんです。

北井

一足の右足と左足。

あさやん

今のお笑いの主流はM-1で決勝に出ること。「M-1どこまで行ったの?」って決まって聞かれます。でも、そこを目指すのではなくて、今の時代に合った手法があるはず。そこで主流になることを目指しているんです。

北井

元坂

サッカー元日本代表でお酒のプロデュースをしている中田英寿(なかた・ひでとし)さんとお話をさせていただく機会がありました。「こんなことをやっているんですよ」と言ったら、「それは個性でしょ。じゃ、上はどう目指すんですか?」と投げかけられて衝撃を受けました。「確かに、僕が目指しているのは個性と言われても仕方ないな」と。主流はピラミッド構造になっていて、人は上を目指していくんですけど、僕はその順位争いには加わりたくない。自分でピラミッドを作りたい。でも、自分一人だとピラミッドにはなりません。
僕らも同じです。人から見たら低いピラミッドなんです。

北井

元坂

だから、どうやって上を目指すか? そこをもっと考えないとダメだと思うんです。

お酒は日本の文化

お酒を飲むときは笑みがこぼれるあさやん

元坂

にほんしゅさんは上を目指す方法についてどう考えているんですか?
僕も元坂さんの自然農法のように、ボケを原始的に浅くやっていこうかと(笑)

あさやん

ボケは浅くなくて、できるだけ深くして(笑)
マジで言うと、僕らはメディアに出ることが目標ではないんです。

北井

新平さんが語るようなストーリーをどれだけ多くの人に伝えられるかがテーマやな。

あさやん

国際きき酒師という英語で日本酒を伝える資格があるんですが、それを2人とも取ったんです。自分が好きな日本酒と漫才の活動だから、そこの能力を磨いて発揮しようと。活躍する場を増やせば、影響力も高まる。楽しみながら正確な情報を発信できる漫才師になりたいですね。

北井

お酒や米って日本の文化そのもの。その文化を創っている方々と触れ合えるのは僕らが漫才師をやっているからこそ、やからな。

あさやん

ただの日本酒好き、でなくてね。だから英語で海外の人に日本のお酒の魅力を伝えたい。

北井

ツッコミは「そんなあほな!」を「no way(ノーウェイ)!」と言ってるだけでいいからラクやけど、英語でボケるのは難しいで(笑)

あさやん

僕たちは孤独ではない


元坂酒造の居間で記念撮影

僕は新平さんのような人に会うことが励みになっているんですよ。話が通じて理解してもらえるのは、お笑い芸人より酒造家の方のが多いんじゃないか? と思うくらいです。孤独な戦い、といえばそうかもしれないけれど、ぜんぜん孤独とは思っていないし、ストレスフリー。楽しくて仕方ない。

北井

元坂

僕も仕事でお酒が飲めるのは幸せではありますね。しかも、今まで誰も飲んだことのないお酒を最初に飲める。誰も飲んだことのないお酒を造ることが喜び。確かに孤独と言えば孤独です。けれど、全国から「君、何してんねん」と見学に来る人はたくさんいます。先日は、日本一いい山田錦を兵庫県で作っている農家の息子さんが来ました。
反応はどうでした?

北井

元坂

「バカですね」と引いていました(笑)
自分でも8時間かけて何してんねん、と思いますけど、そういうことを通じていろんな人とつながることができる。

あさやん

でも、その「バカ馬鹿ですね」には新平さんへのリスペクトがあっての発言ですよね。

北井

元坂

それはそうなんですね。僕が本気で自然農法をやっているのが伝わったから「バカですね」と言ってくれたんだと思う。逆に、ロマンだけでやっていたら「バカですね」とは言われなかったでしょう。
僕らもバカだからバカな新平さんに共感できるのかもしれないですね(笑)

あさやん

【関連記事】日本酒の価値とは? きき酒師の漫才師と酒蔵の7代目が酒談義【前編】

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

あなたにおススメ

タイアップ企画

関連記事

カテゴリー一覧