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「飛騨トマト研修所」って何だ? 新規就農者を失敗させない飛騨モデル

「飛騨トマト研修所」って何だ? 新規就農者を失敗させない飛騨モデル

岐阜県北部の飛騨地方は、夏秋トマトの一大生産地です。「飛騨トマト」のブランドで有名な産地ですが、ここでも担い手不足は深刻な問題です。JAひだが若手生産者を育成しようと岐阜県・飛騨市とともに就農支援事業を立ち上げ、「JAひだ飛騨地域トマト研修所」を設立。2015年度から研修生を受け入れ、現在までに5名の若者が飛騨市内でトマト生産をスタート。来年度は新たに2組3名のトマト農家が誕生します。この飛騨モデルを興味津々で取材に伺い、飛騨市役所 農林部 農業振興課の清水浩美さんと堀辺洸介さんの案内で、研修中の3期生と今年就農した2期生を訪ねました。

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2年間の研修で「飛騨トマト」の担い手を育成

山懐にビニールハウスが連なる飛騨市古川町信包(のぶか)に「JAひだ飛騨地域トマト研修所」(以下、「飛騨トマト研修所」)があります。研修生の募集は毎年4名。

飛騨市役所

現役トマト農家の研修指導マネージャーや、岐阜県の普及指導員が、初めの一歩から指導を行います。研修生は15棟ある研修ハウスの内1人で3棟を担当し、就農開始時を想定した規模での実践的なトマト栽培を学ぶことができます。

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研修期間は2年。毎年4月に研修生を迎え、育苗や圃場の準備に始まり、6月から11月にかけては苗の定植、肥培管理、収穫・出荷、収穫終了後の圃場の片付けまでを実践。冬期には充実した座学や研修会で、経営管理や営農知識を学ぶカリキュラムになっています。

それと並行して就農準備で飛騨市内に自分の圃場を確保します。2年目は、1年目と同様の研修を受けながら、自分の圃場の整地やハウス建設を行います。

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飛騨でトマトを栽培する強みとは

飛騨市が新規就農者にトマト栽培を推すのには理由があります――。

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担い手支援係長の清水さんは「飛騨地域には大規模なトマト選果場が整備され、JAひだが出荷作業を一括して行ってくれるので、生産者は栽培に集中することができます。飛騨トマトは販路も関西や中部圏を中心に確立されているので、収穫すれば安定した収入が見込めます」と力説します。

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また、行政のサポートも手厚く、ハウスや農機の購入費用は岐阜県の支援事業に飛騨市が上乗せして半額を補助。就農開始時から5年以内に作付面積を増やす生産者には、飛騨市の単独事業として費用の一部を助成するなど、積極的な支援が行われています。

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「就農で一番ハードルが高いのは圃場の確保です。飛騨市では、就農者の希望を聞いて市が地権者と交渉します。地権者には協力金や補助金を給付するので、就農者はなんと10年間も賃借料の負担がありません。それ以外にも、飛騨でトマト栽培を行う約380戸の生産者とのネットワークや地域の若手農業者との交流も盛んで、新規就農者が孤立することはありません」と同係員の堀辺さんは微笑みます。

生活の基盤を整えて就農に前進

飛騨市は新規就農者を生活面でもバックアップ。研修生には毎月2万円の家賃補助を行い、移住して3年以内に市内に住宅を購入する際には、定住支援として最大180万円の助成金を給付しています。

他にも、転入後3年以内に住宅を取得すれば毎年1俵(約60㎏)の米が10年間贈呈されるなど、市を挙げて移住を歓迎しています。さらにJAひだからは就農開始時から3年間、農業経営にかかる費用の一部助成(年間約8万円)に加え、「飛騨トマト研修所」の修了生であれば応援資金として毎月2万円を給付するなど、手厚いフォローをしています。

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3期生の加藤雅彦さん・紀衣さん(ともに30歳)は、2017年に「飛騨トマト研修所」に入所。同年に入籍し、飛騨市の助成金を利用して中古住宅を購入。家の近くに圃場を確保して、2019年度の就農を目指しています。

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雅彦さんは愛知県の大学を卒業後、勤務先の福祉施設で紀衣さんと出会いました。二人で遊びに行った農業体験施設で採れたて野菜のおいしさを知り、農業を志したそうです。

一方、紀衣さんは子供の頃に祖父母が送ってくれた野菜が、偏食を治すきっかけとなったことで農業に関心があったといいます。二人は農業学校に入っていろいろな野菜作りを学ぶことも検討しましたが、飛騨への移住を決めてトマト一本に絞ったそうです。

紀衣さんは研修所初となる女性研修生。「トマトを作るために自分たちでビニールハウスを建てるとは想像していませんでした。1年目は農作業で疲れきって簡単な食事を摂って寝るだけの生活でしたが、2年目には二人でドラマを見て過ごす時間もできました」と打ち明けてくれました。

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雅彦さんも農作業は初めての経験。「2年目は農作業の進め方が分かって、農薬や肥料の内容を把握して、トマトの状態を見て何をすべきか考えられるようになりました」と農業者のまなざしで語ります。

就農初年度は、研修所で習った品種の「麗月」を栽培してJAに出荷する予定とのこと。味が良く厚皮で身が崩れにくいため、大手量販店はもちろん外食産業でも安定した需要があるそうです。

事業計画を立て、就農を成功させる

就農を実現したとしても、農業で生活するだけの収入は得られるのでしょうか――。

「飛騨市としては、研修生に就農5年後に160万円の所得を目指す計画を立ててもらっています。さらに10年後には、認定農業者になれるよう400万円の所得をモデル指標としており、生活コストの安い飛騨では、十分に暮らせます。しかし、皆さんアプローチはさまざまで、小規模から徐々に拡大するプランの方もいれば、初期から大規模に展開するプランを立てる方もいらっしゃいます」と具体的な金額をベースに説明してくれます。

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「飛騨トマト研修所」を今年卒業し、就農した安藤輝明さん(39歳)は、埼玉県の出身で会社員からのキャリアチェンジ組です。第一次産業に興味があり、農業経営者と会社員の所得格差がなく、むしろ逆転可能な飛騨市に移住したといいます。

水田の多いエリアに建設した10棟、延べ面積22aのハウスは、新規就農者としては異例の大規模展開です。そこで「麗月」と「桃太郎ワンダー」の2品種のトマト栽培を行っています。ハウスの建設費は、飛騨市や岐阜県の補助事業、運転資金は国の青年等就農資金を借入れました。将来、さらに規模を拡大するために、圃場を隣接して増やせそうな場所を市と相談して選んだそうです。

「厳しい言い方かもしれませんが、最初の数年間は稼ぎがなくてもやれる覚悟を持たないと、経営の選択肢が限られます」

「規模を拡大させるなら、ある程度の貯金がある方がいい。私が就農初年度から、利益ではなく売上拡大を目指すという選択ができたのも、共働きだった妻のおかげです。業界を問わず、会社を起こして5年以内に社長相応の所得を得ることはひとつの目標です。農業で起業するというマインドを持つ方には絶好のチャンスだと思います」と、安藤さんは起業家視点で話してくれました。

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市の担当者も新規就農者のよきサポーターです。

「農業をビジネスとしてとらえる志の高い方がプロフェッショナルになる人だと思います。飛騨市にはその環境が整っています」と堀辺さん。

「飛騨を好きになってくれる方を応援します。人との繋がりを大切にする方は、自然と溶け込んでいけるでしょう」と清水さん。

飛騨市では「飛騨トマト研修所」の見学、体験を随時受け入れているので、実際に研修生や卒業生と会って、自分なりの就農と暮らしのイメージを膨らませてみてはいかがでしょう。

【お問い合わせ】

飛騨市農業支援協議会
飛騨市役所 農林部 農業振興課 担い手支援係 担当:清水・堀辺
〒509-4292 岐阜県飛騨市古川町本町2番22号
TEL:0577-73-7466(直通)
E-mail:nougyoshinkou@city.hida.gifu.jp

JAひだ(飛騨農業協同組合) 営農推進対策室 TAC推進課 担当:新野・南
〒509-4292 岐阜県高山市冬頭町15-1
TEL:0577-36-3880
E-mail:jahidaeino@jahida.gjadc.jp


【関連リンク】
JAひだ(飛騨農業協同組合)の「トマト研修所紹介」ホームページはこちら

飛騨市就農支援サイトはこちら

飛騨市役所のホームページはこちら

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