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キュウリと“うどん粉病”の果てしなき闘い【枯れ専かーちゃんのベランダ菜園】

連載企画:枯れ専かーちゃんのベランダ菜園

キュウリと“うどん粉病”の果てしなき闘い【枯れ専かーちゃんのベランダ菜園】

野菜を自分で育ててみたいけれど、畑を借りるのは少しハードルが高い。それならプランターで手間をかけずにプチ自給を叶えてみようと始めたベランダ菜園。まずはミニトマトとレタスを植え、続いて7割引きで購入したキュウリの苗も植え付けました。ところが、植えて10日後のキュウリに早くも異変が現れ始めて……。不穏な気配にうろたえて専門家に助けを求めました。

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キュウリと病との闘いの幕開け

たまらず専門家にSOSを発信

白い。誰がどうみてもキュウリの葉に白いものが浮いているのです。

ちょっとゴミがついてしまったのかもしれない。いや、ひょっとするとキュウリの突然変異体じゃなかろうか――。一度は強引に自分を騙そうとしてみたものの、やっぱり無理。うろたえて【畑は小さな大自然】でおなじみの“そーやん ”こと橋口創也さんに助けを求めました。

植え付けて10日後。キュウリに異変が現れはじめた

きくち

そーやんさん、ウチの子が何だか白いものに襲われています。一体どうしちゃったのでしょうか?
あー、これはうどん粉病ですね。

そーやん

きくち

う、うどん粉病? 何ですか、そのおいしそうな名前の病気は。
カビが原因の病気です。特にウリ科の野菜は高温多湿になると発生しやすいんですよ。

そーやん

きくち

えー、どうしてウチの子がそんな病気に(泣)
ベランダだと風通しや日当りが悪くなりやすいです。見たところ、プランターのふちから土の表面がだいぶ低いところにあるので、少なくとも根本の風通しや日当りはよくなさそうですね。

そーやん

きくち

そういえば、余っていた土を使い切った感じです。足りないかもしれないとは考えていませんでした……。
それに竹や木の支柱を使っているとカビがきやすいです。あとは葉っぱ同士ができるだけ重ならないように、支柱やネットで広げてあげるといいですよ。

そーやん

きくち

がーん。一時しのぎにと思ってトマトの支柱を引っこ抜いて適当に挿していました……。早く替えないといけませんね。

ウリ科の作物で要注意の「うどん粉病」とは

そーやんさんが挙げたのは、野菜によく発生すると言われる病気の名前でした。
 
“うどん粉病”。

葉の表面に白いカビが生える病気で、うどん粉をまぶしたような姿になることから名付けられたそう。病気が広がると結実を阻害したり、葉を枯らしたりしてしまうので早めの対策が必要だといいます。うどん粉病、おいしそうな名前をして……恐ろしい子!

そのときは時間がなかったので、被害が広がってしまった下のほうの葉を2枚、思い切って切り落としました。なんとか病気の広がりを防げればと淡い期待を抱いていたのです。

一週間後、また下のほうの葉にうどん粉病が発生してきた

ところが一週間後、また下のほうの葉に白いものが広がってきました。これは放っておいても回復しなそう。しかし、一体どうすれば……?慌てて対処法を調べ始めました。

うどん粉病対策の諸説に出会う

専門家のおすすめの対処法とは?

うどん粉病との診断を受けて改めて対処法を調べると、真偽不明の体験談がわんさか出てきました。いわく、お酢を薄めたものがいいとか、重層水や砂糖水が効いたとか、はたまた微生物資材の「えひめAI-2」なるものがいい、イソジンもイケる、そして最後には薬剤を使うのが早いよねという具合に。

初心者としては、情報が多すぎて何が何だか分かりません。
そこで、またまたそーやんさんに助けを求めることに。

きくち

うどん粉病対策についてネットで調べると、いろいろな体験談がでてきます。お酢や重層水のスプレーが効くとか、農薬を使うのが早いとか……。結局、何がいいんでしょうか?
カビの菌は酸性環境でも平気なので、お酢は効かないのではないかと思います。重層もしくはアルコールを500倍くらいに薄めて散布するのが良いですよ。

そーやん

きくち

重層ならウチにあるのでできそうです!
農薬を使わずにやる場合は、一度病気が広がってしまうと治すのはなかなか難しいです。

そーやん

きくち

げげっ。そうなんですか!?
ですから、できるだけ病気にかからない環境づくりをすることが一番の対策になります。①微生物・ミネラルバランスの良い土を使う、②生命力の高い在来種や無消毒の種を使う、③風通しや日当りのいい場所を選ぶ、④適切な誘引・間引き・剪定を行う――ことなどですね。

そーやん

きくち

なるほどー!とりあえず重層を使ってヤツを退治してみます!

お酢と重層水をスプレーしてみる

そーやんさんのアドバイスを受けて、うどん粉病対策は重層を中心に行うことにしました。

といいつつ、他の方法も試してみたいという好奇心が働いて、まずは20倍に薄めたしたお酢をスプレーしてみます。吹きかけた直後の葉は、表面が濡れたなという程度で、特に変わった様子は見られません。

お酢スプレーをする前(左)と後(右)の様子

翌日、葉の表面は乾きましたが、やはり白いカビ菌が覆っているのが分かります。

お酢スプレーをした翌日。やはり白っぽいものが覆っている

そこで、今度は500倍の濃度で重層水を作ってスプレーします。

重層スプレーをする前(左)と後(右)の様子

すると、水分と一緒に白いものがするすると流れ落ちていくではありませんか。お酢スプレーとは明らかに感触が異なります。例えるなら、ビーチで寝そべった体についた砂をシャワーで洗い流す感じ。なんて、快感。面白くなって、白いところを全部さっぱり洗い流しました。

以来、水やりのついでに目についた白いカビを落とすのがちょっとした楽しみになりました。

栽培の楽しみに目覚める?

支柱とネットでプランターを再建

そんな日々の合間に、プランターの再建にもようやく着手。竹の支柱を撤去し、樹脂コーティングがされたスチールパイプを立て、ネットを張りました。このネット、幅が90センチのものしか店になかったので60センチのプランターに合わせるのに苦労したのですが、ネット通販で探すと半自立式のものなどもあったよう。

苦労してネットを張った。ところどころ痛んでしまった葉を見ると心苦しい

ついでにトマトの脇芽摘みや追肥などもして、気がつけば1時間以上も作業に没頭するルール破り。かいがいしく世話をしながら、もしかしたら自分はえらい思い違いをしていたのではないかと考えていました。

これまで、水やりなどの世話は単純作業で、掃除や洗濯と同様に毎日のルーティンであると思っていました。けれど、実は病気にならないように試行錯誤したり、成長を助けるために創意工夫を凝らしたりすることこそが植物を育てるということではないのか。しかも、植物もそれを取り巻く環境もひとつとして同じではない。だとしたら、これはいくらでも頭を使うことができる遊びなのかもしれない。そんな予感に高揚したのでした。少なくとも、このときは。

キュウリ栽培……なめてました

高揚感が続いたのは、せいぜい一週間でした。関東の梅雨の進行とともに、菜園を見守る胸の内は曇りがちになっていきました。

なんとか持ちこたえていたキュウリは、病原菌の退治と再発を繰り返すうちに、重層スプレーでは対処しきれなくなってきました。やはり環境がよくなかったのでしょうか。始めのうちは表面に浮いていた菌が葉の内部にしっかり根を張ってしまった感じで、一枚、また一枚と枯れていきます。もはや、気分はオー・ヘンリー。雨にも閉じ込められて、“最後の一葉”になるのも時間の問題とばかりに、暗い窓の外を見守るだけの日々が続きました。

だんだん枯れてきたキュウリの葉。もっとちゃんと世話をしてあげればよかった……


 

◆キュウリ、万事休す。次回、梅雨明け。そして気分を変えて、はじめての収穫。

 
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