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銀座の八百屋・りょくけん東京 元祖・永田農法で育てた野菜が評判を呼ぶ

銀座の八百屋・りょくけん東京 元祖・永田農法で育てた野菜が評判を呼ぶ

原生地に近い環境で作物を育てる「緑健農法」(またの名を「永田農法」)。
「りょくけん東京」はその農法で育てた野菜や果物を販売しています。松屋銀座本店に店舗を構え、その界隈の生活者や働く人たちに支えられて成長してきました。元ユニクロの店長という異色の経歴を持つ大森正樹(おおもり・まさき)さんがその代表を務めています。同社を軌道に乗せるまでのストーリーと今後のマーケティングプランについて伺いました。

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ユニクロから農業へ、異色の経歴

「おいしい野菜は子供も野菜好きにする」と語る大森さん

 
ユニクロと永田農法の野菜

大森さんは、ユニクロがフリース商品の大ヒットにより飛ぶ鳥を落とす勢いで成長していた当時の(株)ファーストリテイリングに入社。1年で店長に就任しました。
その後、ファーストリテイリングは(株)エフアール・フーズを立ち上げ、野菜を中心とした食品販売に進出。その時手掛けようとしたのが、「永田農法」で栽培した野菜です。
第1号店は松屋銀座本店で開業しましたが、事業そのものがすぐに頓挫し、わずか1年半ほどで市場から撤退を余儀なくされました。

「銀座の八百屋」を任され独立

食を扱う事業に興味を引かれ、自ら手を挙げてユニクロからエフアール・フーズに移っていた大森さんは、この撤退をきっかけに永田農法創始者の故・永田照喜治(ながた・てるきち)氏が作った(株)りょくけんに転職しました。
エフアール・フーズ撤退後の松屋との交渉役を担うとともに、およそ10年近く全国の契約農家を訪ね歩き、商品の企画開発にも従事します。しかし当時、所属する小売事業部の収支は、決して良いものではありませんでした。
2012年、銀座の店舗をメインとする小売事業、および通販事業を合わせ、「(株)りょくけん東京」として独立。2014年には、大森さんが前任者から代表を引き継ぎました。しかし、それは約9000万円の赤字を抱えてのスタートでした。

原生地の環境に近づけて作物を育てる「永田農法」

個性のあるトマトたち

 
痩せた土で栽培したほうがおいしい?

日本人の多くが豊かさを実感し始めた1980年代後半。一部の消費者はそれまで主流だった大量生産の農作物に疑問を感じるようになっていました。そんな人々に歓迎され、メディアでも盛んに取り上げられたのが「永田農法」です。
水や肥料を与え過ぎず、その野菜や果物の原生地に近い環境で育てること、それによってその作物本来のおいしさを引き出すことが、この農法の基本的な考え方です。

原生地の環境を考える

たとえばトマトの場合、原生地は南米のアンデス山脈。水分や栄養の少ない標高2000~3000メートルの山岳地帯という、一見過酷な土地で育つ作物です。そのため、この農法では、水や肥料を極力与えずにトマトを育てます。
逆にピーマンは中南米の熱帯地域が原生地なので、水分を好みます。つまり、水をしっかりあげることが重要。このように、栽培方法はその作物によってまったく異なります。

おいしさが詰まった高品質な野菜の追求

実はこうしたことを感じていた農家は他にもおり、彼らは水や肥料のやり方に独自の工夫をしていたそうです。永田氏の功績はそれを理論化して書物やメディアで発表し、世に広めたことです。
また、永田氏は日本各地を回り、トマトの原生地に近い土質の農地を見つけるとその農家にトマト栽培を、良い風が通る農地ならレタス栽培を強く勧めたと言います。
こうした農家がりょくけんと契約して生産。収量が少なかったり、形がいびつで小さかったりするものの、おいしさが詰まった、栄養分が凝縮された高品質な野菜・果物が評価され、世の中に提供されるようになったのです。

銀座の八百屋というポジショニング

松屋銀座本店内店舗

 
苦しい時にも理解ある農家

若い頃、これら全国のりょくけん契約農家を訪ね歩き、熱心に話を聞いた大森さんは信頼を得て、やがて「永田氏の事業を受け継ぐ人」と認識されるようになりました。これが目に見えない貴重な資産となって、独立前後の経営が不安定な時にも、信用し続けてもらえたと言います。

銀座界隈の生活者が顧客

生産者とともに大森さんの支えになったのが、唯一の常設小売店舗(2018年6月現在)である松屋銀座店の顧客です。
繁華街のイメージが強い銀座ですが、築地や晴海周辺のマンション群の住人を含めると生活者の人口は意外と多く、しかも比較的裕福な層が多いのが特徴です。そうした人たちから、同店舗は気軽に立ち寄れ、試食ができ、会話ができる「八百屋」として親しまれています。
また、生鮮品の販売とともに、2006年のオープン時から野菜主役の惣菜を提供していることも人気の要因と言えるでしょう。

通販事業の展開

加工品にも力を入れる。中央の特選トマトジュースは糖度9度以上の生食用桃太郎系品種を使用

もう一つの事業の柱である通販では、昔からの「りょくけんブランド」の根強いファンがおり、その信頼感は子供世代にも引き継がれ、主な購買層になっています。こうした大切な顧客に向けてギフト仕様の商品を開発したり、需要拡大を見込んでパッケージデザインを工夫したりして、若い世代に向けてアピール力を強め、新たな顧客の開拓に努めています。

消費者に品質を伝えるためスタッフも生産現場に

「高級野菜を売るわけでなく、高品質野菜を提供している」と語る大森さん。
「高品質を追求すると生産者の手間ひまが増え小売価格は高額に、つまり結果的に高級野菜にならざるを得ないんです」
仲介役として消費者にそのことをしっかり伝えるため、スタッフを農家に連れて行き、一緒に働いてもらうといったことも実践しています。
独立する前の売り上げを維持しつつ、事務所や倉庫などに掛かるコストを削減して黒字を出し、経営を軌道に乗せ始めたりょくけん東京。今後の展開が期待されます。

 
りょくけん東京

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