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ケーキの素材は鮮度と味が命 日仏で成功したシェフの仕入れの秘密

ケーキの素材は鮮度と味が命 日仏で成功したシェフの仕入れの秘密

最終更新日:2018年09月05日

茨城県結城市にある「アルチザン・パティシエ・イタバシ」は、フランスと日本の両方でパティシエとして成功を収めた板橋恒久さんが、故郷の茨城県に戻ってオープンした製菓店です。
同店では、鮮度と味にこだわった素材を使って、ケーキなどのお菓子を販売しています。看板商品であるモンブランに使うクリと、ケーキに欠かせないイチゴは、「何よりも鮮度と味が違う」と近隣農家から直接仕入れる板橋さんに、直接仕入れの理由や素材選びについて聞きました。
モンブラン撮影:葵ゆき

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地元を元気にしたいから 日仏での成功を経て、故郷に開店

オーナーシェフ板橋さん。「素材を大事にする人だ」とは、取引農家や同店の撮影を手掛ける写真家の弁

茨城県筑西市の米農家の長男に生まれた板橋さんは、フランスに渡って料理の勉強をする中で製菓に興味をもち、パティシエに転身します。260年ほどの歴史を誇るフランスの名だたるホテル「オテル・ド・クリヨン」のレストランや、三ツ星のレストラン「トロワグロ」で研鑽を積んだ後、日本に帰国した板橋さんは1991年から東京は恵比寿の「Q.E.D.CLUB」で製菓長を務めます。その後、「長男なので地元に戻って親の世話を」と思い、茨城に戻って自店を構えました。「実はお米を育てたかった」と語る板橋さんですが、結果として家業であった米農家を継ぐことはありませんでした。ご両親も納得しての決断だったそうです。
お店は武家屋敷跡の竹林のすぐ横にあり、近隣には田んぼが広がります。地元に開店した理由にはご両親のそばにいたいという思いに加えて、「元気がなくなっている地元を元気にしたいという思いもありました」。同店では、毎年4月または6月に「ラ・フェスタ・デ・アルチザン」という1日限定の市場を開いています。店舗の屋外スペースに、お茶やジャム、雑貨などが並びます。お菓子の材料を仕入れている農家による、新鮮な果物の販売もあり、地元の方だけでなく遠方からの来客もあるイベントになっています。

店舗のすぐ右手に広がる竹林。店舗を出て左手には田んぼが広がる

素材選びの基準は「鮮度・味、そして値段」

1皿1皿丁寧に盛り付けられた同店のケーキ。持ち帰りとともに、店内でのイートインが可能

アルチザン・パティシエ・イタバシの看板商品であるモンブランは季節限定販売、遠くは都内からも購入客の訪れる人気商品です。そのモンブランに使うクリは県内茨城町の小松農園より仕入れるもののみを使っています。また、ケーキに欠かせないイチゴは、できる限り栃木県の小島農園から直送のものです。同店のある結城市は県境にあり、栃木県もすぐそば。小島農園は店から車で30分ほどの距離にあります。
「特に『地産地消』にこだわっていることではなくて、よいものを使いたいと思っています。よいものを選んだ結果、近隣の農家からの直送になっているのです。『よい』の判断基準となるのは鮮度に味、そしてビジネスなので、値段も無視できません」。
同店では、ケーキや焼き菓子と言ったお菓子だけでなく、イベント時などにランチを提供することもあります。その時に使う野菜などは、店から車で10分ほどの距離にあるJAの直販所で購入するそうです。「何よりも鮮度がよくて、安い」ことが購入の理由だと言います。「農家の方が朝収穫したものを並んでいて、業者を通して仕入れるものに比べるとずっと新鮮です」

生のクリを使ってクリの味を出したい

看板商品のモンブラン。作り置きができないため、都内から食べにくる人も多数いるという
(写真提供=アルチザン・パティシエ・イタバシ、撮影=葵ゆき)

看板商品のモンブランに使うクリは、県内茨城町にある小松農園から、宅急便で送ってもらっています。収穫した翌日には届くクリは鬼皮がついたままの状態で、皮をむくところから店内で行います。
「フランスで製菓の勉強をしたときから、ペーストされたクリを使っていました。そのほうが手間暇かからないんです。ほとんどのお菓子屋さんは、一次加工されてペーストになったクリを使っています。しかし、加工されたクリは、甘さや質感なども調整されてしまっていて、出したいクリの味が出しにくい。帰国して都内で働いていた時に、なぜペーストのクリを使うのだろう、とふと疑問に思いました」。
当時は製菓店ではなく、モンブランを大量に作る必要もなかったので実験的に生のクリを買って皮を自分でむいてみたそうです。味の違いを実感して、独立して製菓店を開く今も、鬼皮のついたクリを買っています。「採算や手間を考えると加工されたものを使う方が楽ですが…クリの味を生かしたモンブランが作りたくて、9月下旬から季節限定で作って販売しています」。

素材を大事にするお店で使ってもらえることが栽培の励み

「アルチザン・パティシエ・イタバシ」の店内に飾られている、小松農園のクリの写真

モンブランのカギとなるクリは、小松夫妻が運営する農園から届きます。板橋さんとのお付き合いはここ5年ほど。
「板橋さんは素材を大事にして、いいものだけを選んで使っていらっしゃいます。なので、うちでもケーキ作りに適した大きさのクリだけを選んで、粒のそろった良質なものをお送りするようにしています」。クリの鮮度が落ちないように、当日収穫したものを夕方に宅急便で発送し、翌朝にはお店に届くようにしているそうです。また、「最近は、有機肥料を使った土作りをしたり、冬から春先にかけて大きな実をならせるため、枝の剪定に力を入れています」。収穫量も限定されているので販路の拡大は予定していないとのことですが、現在は板橋さんと板橋さん紹介の業者、そして地元の選果場にクリを卸しています。
これまでは9月に収穫してきたクリが、去年は陽気が続いて8月末から収穫したそうです。今年も同じくらいか、少し早くなりそうだ、と語る小松さん。「県内でも大変有名なお店に使っていただいているということが、励みになっています。暑い日が続いていますが、いいクリを作らないといけないと思って育てています」。

足りなくなるとすぐ持ってきてくれることも 小島農園のイチゴ


小島農園のイチゴを使ったケーキ。「粒がそろったものを選別してくださるので助かっています」と板橋さん

小島農園のイチゴは、同市内に住む板橋さんのお姉さんの紹介で知ったそうです。それ以前は、宇都宮の市場からイチゴを仕入れていましたが、日持ちが悪く、2~3日でダメになってしまっていたそうです。
「小島さんのイチゴは味と日持ちが断然違います。『朝摘みイチゴ』ってなんでもてはやされているんだろう、と思っていたのですが、その理由がわかりました。それ以来、11月から5月末までは小島さんがイチゴです」。
小島農園からのイチゴは、デコレーション用、中に入れる用と、用途に分けて選別されて納品されます。「イチゴはよく二段積みにしてありまいすが、そういうことはなく一段で運んできてくれます。距離が近いこともあり、足りなくなりそうだと連絡するとトラックで運んできてくれて助かっています」。
小島さんからイチゴの仕入れが難しい時期は、他の国内産のイチゴやオランダ産のイチゴを使うこともあるそうですが、「いつかは夏イチゴの開発も…」と小島農園に期待しています。

商品となったイチゴを見ることが栽培の励みになる

イチゴにできるだけ傷がつかないよう気を付けながら、ぎっしりと1段に並べている(写真提供=小島農園)

板橋さんから厚い信頼を得る小島農園は、10年ほど前に就農したイチゴ農家です。育て方にこだわって、「とちおとめ」と「とちひめ」を栽培し、板橋さんへの直販以外にも、農園での直販や一般の方を対象にしたいちご狩りなども実施しています。
板橋さんのお店に直接納入することで、自分が育てたイチゴがどのように使われているのかが見られるのがうれしいと語る小島さん。「もちろん、どのイチゴも心をこめて育てていますが、どのように使われているのかがわかっていると、より一層、栽培に心がこもります」。また、納入したイチゴに対して「今回のイチゴはここがよかった、ここはちょっと…」とダイレクトな感想を聞くことが、栽培に生きると言います。
またイチゴだけでなく、夏の間に育てた大カボチャを、秋の装飾用にどうか、と提案もしました。大人が4人がかりでやっと持てるかという大きさのカボチャは店頭に飾られ、イチゴ以外にも同店との関係が深まっています。

【取材協力・写真提供】
アルチザン・パティシエ・イタバシ
小松農園:〒311-3151 茨城県東茨城郡茨城町大字木部 837-1
小島農園

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