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地球温暖化で変わる日本の農業

地球温暖化で変わる日本の農業

最終更新日:2018年08月09日

埼玉県熊谷市では国内観測史上最高気温となる41.1度を記録し、厳しい猛暑が続く2018年の夏。冷房がきいた部屋に逃げることができない農作物の影響は深刻です。そんななか、毎日新聞社が主催する「元村有希子(もとむら・ゆきこ)のScienceCafé」では「地球温暖化に負けない農業」をテーマにセミナーが開催されました。これからの環境変化が日本の農業にどう影響を与えるのか。当日のセミナーの模様をお伝えいたします。

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夏の期間が4カ月になる!?

登壇者の増冨祐司氏(茨城大学農学部准教授)

「これからの深刻な気候影響を避けるためには、産業革命の前と比べて気温の上昇を2度以内に抑えることが必要なんです。」増冨氏の言葉からはじまった本セミナー。現在の生活を考えると、“2度の変化”と言ってもピンときませんが、+2度とはどのくらい暑いのでしょうか。増冨氏曰く、「日本の四季に例えると、現在『夏だ』と感じている期間が6月~9月の約3カ月間として、それが4カ月に延び、『冬だ』と感じている期間が12月~2月の約3カ月から2カ月になってしまうくらいの変化です。」

東京の日平均気温季節変化(1996~2005年)からみる季節変化
出典:江守正多著「地球温暖化の予測は『正しい』か?」(化学同人)


熱中症など人体におよぼす影響もありますが、人間であれば健康管理をし、空調が管理された部屋に移動することもできます。しかし農作物はそうはいきません。過酷な猛暑にさらされた田んぼや果樹園では、米粒の品質の低下や果樹が日焼けしてしまう等の影響がではじめています。
2018年6月には「気候変動適応法」が参院本会議で可決され、成立しました。これは、地球温暖化に伴う農作物被害や気象災害の影響などを軽減するため、自治体等に適切な計画の策定を求める法律です。このような状況から、緊急の対策をとる必要性が増していることがうかがえます。

1980年~1999年平均との気温差映像。世界的に気温が上昇していることがわかる。(制作:増冨氏)

自然の変化に対応するべき“適応元年”

法律まで定められた今年は、まさに“適応元年”ともいえます。気候の変動を可能な限り食い止める取り組みだけでなく、ある程度の変化に対して適応していくことも考えなければいけません。
「人間の健康状態に例えるなら、風邪をひかないようにするのが『緩和策』。手洗いやうがいをすることです。ところが風邪をひいてしまったら、症状を和らげたり、菌を消すために薬を飲んだり休養をとるなどの対処をしなければいけません。それが『適応策』です。私たちは、温暖化を抑制するために、『京都議定書』や『パリ協定』に基づいた取り組みを進めていますが、そうした『緩和策』を進めても今後もある程度の気温の上昇は避けられません。もちろん取り組みは引き続き必要なことですが、すでに現れている影響や目の前に差し迫った危機には対処していく必要があります。」(増冨氏)
そして風邪の種類や人の健康状態にあわせて薬が変わるのと同じく、対処法=「適応策」も、地域、作物、作り手によって千差万別だといいます。
では、日本の農業には適応に向けてどのような対策があるのでしょうか。

日本の農業はどう適応していくのか

農作物の深刻な影響のひとつに、リンゴやぶどうなど果実の日焼けが挙げられます。葉摘みの時期をずらすことや、日焼け軽減のために袋かけ、笠かけをおこなう等、各地で対応策がとられています。それでも日焼けしてしまった果実は出荷できないものや、価値が下がってしまうものも数多くあるそうです。この状況に適応するためには、「色が均一でかたちの整ったものが良い果実である」という固定観念を崩し、日焼けした果実のニーズを探ることかもしれません。

写真左:りんごの着色不良(増冨氏撮影)
写真右:果樹の日焼けの影響(農水省地球温暖化対策計画資料)


一方、稲作の現場でも深刻な影響が出てきています。穀物の種子が発育・肥大する登熟(とうじゅく)の期間に高温や日照不足にさらされると、お米が白濁してしまう、「白未熟粒(しろみじゅくりゅう)」が増加します。白未熟粒の割合はコメの評価そのものに直結するため、コメの等級が落ちてしまうなど、生産者の家計も圧迫する深刻な影響が生じます。
そうした事態に対応していくためには、たとえば白未熟粒の発生を防ぐような栽培技術や品種を開発し、実践していくという適応策が考えられます。現在茨城大学農学部は、地元のJAなどと連携して、そうした技術の調査・研究を進めています。調査をするなかで、気温や日射量がほぼ同じ地域であっても、田んぼや生産者によって白未熟粒の発生率に差があることがわかったそうです。

高温によって米粒が白濁化することがわかる。(増冨氏撮影)


本セミナーに参加し、農家が受けている影響の大きさと共に、既に研究や技術開発が進んでいることもわかりました。一方で適応策においては、研究者と生産者が創意工夫をして作った作物が消費者に受け入れられるかどうかも重要になります。私たち消費者にとっては、今までは当たり前だと考えて疑わなかった作物の価値観や認識を、いま一度見直し、地球の未来を考えながら自分自身で何を食べるかを選ぶ。
それが“適応元年”の今年、まず始めるべきことだと感じました。

(参考)
元村有希子のScienceCafé「地球温暖化に負けない農業」

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