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農業アルバイトで合宿免許を「0円」に!?地域の課題を解決する26歳の名案とは

農業アルバイトで合宿免許を「0円」に!?地域の課題を解決する26歳の名案とは

農作業のアルバイト代を合宿費用に充てることで、実質無料で免許を取得できる―。画期的なシステム「0円免許合宿」が、ちょうど収穫期を迎える農家の人手不足解決に一役買っています。考案したのは、22歳で北海道・厚沢部町へ移住した荒木敬仁(あらき・たかひと)さん(26)。2016年からは狩猟免許合宿もスタートさせ、獣害の多い町の課題解決に向き合っています。厚沢部町で荒木さんにお話を伺いました。

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学生「安く免許合宿に参加したい」×農家「収穫期の人手が欲しい」


大学生は夏休み真っ盛り。長い休み期間中に自動車免許合宿へ参加する人も多いのでは。しかし、合宿費用はなかなか高額。「時間があってもお金がない」というのは、学生の常ではないでしょうか。

そんな学生たちと、夏の収穫ラッシュで人手を求めている農家をマッチングし、双方のニーズを満たして地域の課題を解決する、画期的なシステムを考案した若者がいます。

北海道・厚沢部町の荒木敬仁さんは、千葉大学園芸学部在学中の2013年、地域おこし協力隊員として町へ移住しました。厚沢部町は、日本で初めてメイクイーンの試作を行った「メイクイーンの発祥の地」として知られ、ジャガイモやトウモロコシ、メロンなどの栽培を盛んに行っています。

一方で人口減は止まらず、65歳以上の町民の割合は全体の約35%と、高齢化と過疎化が進んでいます。荒木さんも、農家の深刻な人手不足を目の当たりにしました。

夏は収穫ラッシュ “農バイト”の賃金を合宿費用に

「0円免許合宿」を考案した荒木さん(左)と、地域おこし協力隊の吉田さん(右)

一方で、北海道のキャンパスに通う道外出身の大学生から「寮が閉まる夏休み期間も、せっかくなので北海道に残って、“北海道らしいこと”をやりたい」という意見を耳にしていました。2014年、長万部町にキャンパスがある東京理科大に企画書を持ち込み、学生による厚沢部町内の農家での短期農作業合宿を実行しました。

全国から参加者を集めるためにも、夏休み期間中に免許合宿へ参加するニーズが高いことから、町内にある自動車学校から協賛を得て、農業体験アルバイトと免許合宿を両立できる「0円免許合宿」を2015年に始動させました。ちょうど夏に収穫期を迎える町内の農家の人手不足と、賃金を合宿費用に充てることで費用負担減を叶えた、画期的なシステムです。

合宿開催期間は、毎年7月下旬~9月末のみで、参加者は期間内で任意の日数で参加します。作業は、トウモロコシ、カボチャ、キャベツ、ジャガイモなどの収穫と選定がメイン。日給6,480円(実働8時間:2018年度)×働いた日数分のアルバイト代が、滞在最終日に支払われるので、働く日数が多いほど、費用が安くなる仕組みです。

トラクターが操れるため、本気で就農を考えている人ならぜひ取得したい「大型特殊免許」や、ツーリングの聖地・北海道で使いたい「普通二輪免許」は、条件が揃えば実質0円での取得が可能。「普通免許(AT・MT)」も、0円にはなりませんがアルバイト代を補てんすることで、一般的な免許合宿より出費を抑えて取得することができます。

技能講習は一日に受けられる教習時限数が決まっているため、空き時間を農作業に充てることも可能。スケジュール次第では、丸一日を農作業に充てられます。

派遣先候補の農家は15軒ですが、信頼関係を構築するため、期間中は一人が一軒の農家へ赴きます。空き家を活用した合宿所で共同生活を行い、各自が農家からおすそ分けをしてもらった野菜を使って自炊をしたりと、参加者同士の仲を深めながら過ごせるのも魅力の一つ。

合宿終了後に参加者へ行ったアンケ―トからは、満足度の高さが窺えたといいます。「最初はそこまで農業に興味はなかったけれど、現場で農家さん達と一緒においしい野菜を作るお手伝いをしてから、野菜や農業がとても好きになった」といった感想もありました。

狩猟免許合宿もスタート

運転免許に留まらず、2016年からは狩猟免許の合宿も行っています。運転免許合宿と同じく、参加者は農作業をしつつ、地元猟友会から罠の作り方や掛け方、害獣が捕まれば解体方法を教わります。試験に必要な知識を学びつつ、鳥獣害に悩む農家の声を直接聞くことで、本質的な対策に目を向けられるハンターとして育つことが期待されます。

狩猟免許合宿に参加する吉田さん。厚沢部町ではクマによる農作物被害が多いといいます

かつて狩猟免許合宿に参加した、地域おこし協力隊の吉田典幸(よしだ・のりゆき)さんは、「狩猟に関する詳しい情報は少なく、あったとしても分かりにくいものだったりします。インターネット上なら個人のブログを見るしかない。ベテランハンターから実践的な内容を学べる場は貴重」と話します。

「0円免許合宿」が地域への入り口になる

農家さんや参加者との交流も大きな魅力の一つ

0円免許合宿を毎年運営してきた荒木さんは、あることに気が付きました。「初めは単純に労働力を欲していた農家さんたちが、参加者との交流自体を楽しみにしてくれようになりました」。若者と触れ合うことで、高齢者の多い生産者ら側にも仕事を張り合いが出ていることを感じました。若者側も、卒業後に旅行者として再訪するなど、町に愛着を持って「戻ってきてくれる」(荒木さん)ようになったのです。

「0円免許合宿が、厚沢部町と関りを持つ“関係人口”を増やす理由付けになればいいと思っています。自動車免許や狩猟免許という2つの切り口が、多くの人にとっての町への入口になれば」と話します。

荒木さんらによる任意団体「厚沢部農楽会」がボランティアで運営していることもあり、参加者を増やして継続的に開催できるようにすることが、今後の課題だといいます。
今年度開催分の募集は5月に終了し、まさに合宿真っ最中。広大な自然への農業体験や、安く楽しく免許を取得することに興味がある方はぜひ、来年開催時に応募してみてはいかがでしょうか。

詳細は荒木さんのブログ
※参加は学生以外も可。

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