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北海道・愛媛・沖縄のJAが合同で企画した農作業アルバイト

北海道・愛媛・沖縄のJAが合同で企画した農作業アルバイト

愛媛県の「JAにしうわ」、北海道の「JAふらの」、沖縄県の「JA沖縄」は、農作業の人手不足を補うため2017年より農作業のアルバイトを合同で募集。参加者は季節ごとに3つの地域を移動し、各地域が最も忙しい時期に農作業を手伝います。今回は、3つのJAが合同で行う農作業アルバイトの取り組みについて、JAにしうわの河野晃範(こうのあきのり)さんに話をうかがいました。

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各地を移動し、収穫繁忙期の人手不足を補う

農作業アルバイト

2017年より、JAにしうわ、JAふらの、JA沖縄は合同で、農作業の人手不足を軽減するため、各地域の農作業を手伝うアルバイトの募集を開始しました。

農作業アルバイトの参加者は、4月から10月にJAふらの、11月中旬から12月中旬にJAにしうわ、1月から3月にJA沖縄というように、リレー形式で管轄地域の農家を手伝います。

JAふらのではメロンやアスパラガス、タマネギ、水稲などの収穫・植え付け作業。JAにしうわではミカンの収穫・運搬作業を行います。JA沖縄では、サトウキビ刈りや、製糖工場の作業工員として、黒砂糖の製造を手伝います。

JAにしうわが農作業アルバイトの募集を始めたのは、1994年のこと。ハローワークや大学・専門学校へ求人チラシを用いて募集して、32人の参加者を集めました。「当初の目的には、ミカン産地に若者を呼ぶことで、ファンを増やす狙いもあったと聞いています」と河野さんは語ります。

2016年8月JAにしうわは、昔から繋がりのあるJAふらのと相互連携し、農作業アルバイトを募集するように。さらに同年12月、JA沖縄が加わって、現在の3つのJAによる取り組みによる基盤ができあがったのです。

「エリアの離れた3つのJAが協力体制を築いた背景には、大人数のアルバイトを、それぞれの地域が抱えていた課題があります。そして各地域の作業期間が重ならないように、3つのJAで取り組みを連携することにしたのです。

また、経験や知識が豊富な3つのJAが協力することで、参加者の人間性や、作業に対する姿勢をよく把握することが可能となり、質の高い参加者の確保に繋がります」。

農作物の収穫時期ごとにそれぞれ3つのJAを訪問し、アルバイトの募集活動を行ったり、募集状況や作業状況の情報共有をするなど、強い協力関係を築いています。

農作業アルバイトが農家に与える好影響とは

農作業アルバイト

1年を通じて行われる農作業アルバイトですが、全国区を回って働いている方は一握りだそう。多くの人が富良野と西宇和、沖縄と西宇和というように、部分的に参加しているといいます。

アルバイトを募集している農家数はJAごとに異なりますが、2017年のJAにしうわの農作業アルバイトでは、139軒の農家が募集を表明。約280人の募集をかけたところ、約250人の希望者が集まって農作業に参加しました。

「アルバイトの募集は、『若い人がいると作業に活気が出る』といった良い影響を農家に与えているようです。また、参加者が地元の方と結婚したり、研究生として就農したりする例もあります。農作業アルバイトは各地の農業を維持していくことにも多少なりとも寄与できていると考えています。

2017年の農作業アルバイト参加者の中には、就農希望の方が1人います。その方は2018年4月より、JAにしうわで就農研修を受ける予定です」。

農作業アルバイトの参加方法と条件

農作業アルバイト

では、農作業アルバイトはどのような形で募集されているのでしょうか。

まず、参加希望者は求人サイトから応募をして、事務局からの電話連絡を待ちます。電話がきたら履歴書を送付し、面接を行って採用が決まります。

「遠方の方は電話面接で対応しています。そして、JAにしうわが運営する『西宇和みかん支援隊』のホームページから応募する方法もあります。『西宇和みかん支援隊』は、柑橘農家になりたい人や、柑橘農家でアルバイトをしたい人などに情報提供や、就農・援農を総合的にサポートするウェブサイトです。
他には、農家さんが以前雇ったことのある参加者に直接連絡をとり、手伝いをお願いするケースもありますね」。

JAにしうわの農作業アルバイトは、2017年11月10日から12月20日前後の、約40日間で行われました。その間は、農家でホームステイをしたり、研修施設「マンダリン」で共同生活を行いました。

参加可能な年齢は18歳から70歳で、中でも20代から40代の参加が多いそうです。食費は原則農家負担で、時給は収穫のみだと800円、運搬も担当すると1,000円。交通費も25,000円を上限として付与されます。交通費は作業期間満了後に、給料と一緒に支給されます。また、期間中には、交流会などのイベントも開催しています。募集期間など詳しくはホームページをご確認下さい。

アルバイトの参加者からは「将来は田舎への移住を考えています。このような試みで、地域と関わり生活しながら仕事に就くことは、将来を考えるうえで大変良い経験になった」、「収穫の喜びを感じられた」、「農家に『仕事がはかどった』と喜んでもらえると、自分も嬉しい」といった声が多数寄せられています。

将来を見通して衰退しない仕組みをつくる

農作業アルバイト

農作業アルバイトを受け入れた農家からは、「収穫・運搬作業を手伝ってもらい、体力的に助かった」、「若い人がホームステイに来てくれると、家が明るくなる」といった嬉しい声がたくさん寄せられています。

農作業アルバイトは引き続きJAにしうわ、JAふらの、JA沖縄で募集するそうです。「募集の相互協力という形で、今後は3つのJA以外からも新たに加盟するのではないかと期待しています。最近は、他のJAから紹介を受けたり、JA関係の子会社などの仕事も紹介しています」。

3つのJAは今後も協議を重ね、農作業アルバイトの活動をより活性化させるために、取り組みの細部まで調整していく予定です。

「まだ検討段階なのですが、例えば『全国区を回って働いた方は、時給を上げるなどの特典を与える』『合同募集説明会を開催する』といったことを考えています。

担当者が変わっても、この3つのJAによる取り組みが衰退しないよう、しっかりとした仕組みを作ることは決まっています。まだ検討中な案件が多いのですが、今後の協議を通じてより仕組みが具体的になっていくと思います」。

高齢化や後継者不足に伴い、力を借りたいという農家は多いことでしょう。3つのJAによる取り組みは、今後の人手不足を解消するために大きなヒントになりそうです。

【取材先情報】
JAにしうわ
西宇和みかん支援隊

画像提供:JAにしうわ

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