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元パティシエが目指すカッコいい農業【後編】「若い人たちが集まる農業」

元パティシエが目指すカッコいい農業【後編】「若い人たちが集まる農業」

千葉県山武(さんぶ)郡にあるアグリスリーは、梨、米、加工を柱とした事業を展開しています。代表を務める實川勝之(じつかわ・かつゆき)さんは元パティシエという経歴の持ち主。この「元パティシエだからこそ」の視線で農業に革命を起こそうとしています。現在、新しいお米「恋の予感」をブレークさせようと、「恋の予感農業女子プロジェクト」を推進。アグリスリーにある若い力を結集しようとしています。

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新しいお米「恋の予感」はヒットの予感

「お米は、土地利用型農業といって、面積を拡大しやすい農業のひとつです。お米をはじめたころはコシヒカリを中心に他の品種も少しある程度でしたが、去年、2017年からリスクを分散するために多くの品種を栽培することにしました。変わったところではみどり糯(もち)、紅(べに)染めもち、紫黒苑(しこくえん)といった古代米というものもあります。そのなかで今年、2018年はふさこがねの需要が伸びました」
ふさこがねとは業務用米です。お弁当や外食産業が使うお米で安価ですが、業界的には足りていないため、アグリスリーでは企業と契約を結んでいるそうです。逆に需要が減っているのはコシヒカリ。コシヒカリだけにこだわっていては市場のトレンドを掴めなかっただろうといいます。
「納品先と契約することで市場相場に左右されることもありません。作る前から収益が見えるので安定した経営につながります」

さらに、アグリスリーがユニークなのは、独自で新しいお米の生産に取組んでいることです。それが「恋の予感農業女子プロジェクト」です。『恋の予感』とは、美味しい新しいお米の品種です。このお米の生産を始めることにした理由のひとつにコシヒカリの需要が減っていることがありました。
「コシヒカリは美味しいお米の代表です。でも、消費者に飽きられています。もちろん、新潟県魚沼産コシヒカリといったブランドであれば評価も高く、価格が高くても需要はあります。でも、千葉県産コシヒカリでは格が落ちてしまう。新潟県産のコシヒカリと千葉県産のコシヒカリでは、誰もが新潟県産コシヒカリを選びます」
千葉県産コシヒカリを買ってもらおうとすると価格を下げるしかありません。コストや手間は同じなのに価格を下げるのでは利益は見込めません。
「千葉県産といった時点でどんなお米を作ったところで不利です。だったら新しいブランドを作って独自価値を高めるしかありません」

『恋の予感』プロジェクト

女性の目線で商品を作る

しかし、消費者は『恋の予感』といわれても、どんなお米なのか、よくわかりません。そのため今は、認知と消費拡大に取り組んでいるところです。
「独自価値を高めるためには、どこでも作れるお米では意味はありません。もちろん、同じ稲を取り寄せればどこでも作れます。そのため、アグリスリー独自の価値を融合するため、恋の予感農業女子プロジェクトをスタートさせました」

實川さんはアグリスリーの価値は、若い社員と個性的なメンバーが多いことだといいます。恋の予感農業女子プロジェクトとは、その名の通り、恋の予感を女子だけで展開していく、というプロジェクトです。
プロジェクトでは、おにぎり屋さんと組んで、女子の発想からOL向けのおにぎりを開発したり、女性向けのお酒を造って販売したりしています。
「恋の予感から麹を作って、それをアグリスリーの加工部門で味噌とか、醤油とかを作る。変わったところでは化粧品に活かせないか研究中です」
新しいお米を開発しても買ってもらえないと意味はありません。アグリスリーではお米を加工してさまざまな商品を作り、プロモーションしていく。お米以外の可能性も付加価値としていくといいます。
「アグリスリーは若い女性スタッフが頑張ってくれています。他の農家さんではなかなかできない取組だと自負しています」

「恋の予感」は美味しい、新しいお米を目指す

農業を変えていく若い力

なぜ、アグリスリーに若い人たちが集まるのでしょうか?
「事業を拡大するためには雇用を推進していかなければなりません。会社組織にしたものの最初は求人の方法もわかりませんでした。でも、失敗を繰り返しながらだんだん人が集まるようになってきました」
農業で働きたい人はいる。けれど、働きたい人に情報を届けなければ届かない。しかも、情報は若い人たちが知りたいことでなければならない。例えば、どんな会社で、どんな環境で、どんな仕事があって、どんな人たちが働いていて、どんな人に来て欲しいのか。そんな情報を明確にして発信し続けたといいます。
「さまざまな情報を発信することで、若者が不安なく働けます。若者でも活躍できる、違和感なく働ける、ということを前面にアピールしました」

そして、そこにも實川さんのパティシエとしての目線があります。農家のイメージをケーキ屋のような「清潔感」に変化させることへの取組は、もちろん、社員にも向けられています。AT限定の免許の方でも働きやすいよう、オートマの軽トラックを導入し、社員寮も作る。働きやすい環境づくりのために会社の環境も整備したのです。
「もちろん、それでもなかなか人は来てくれません。苦戦しています。でも、今の若い人たちはお金やステータスを求める人もいる一方、『自分を酷使して、精神的に病んでまで仕事をすることに意味はあるのか?』と疑問を感じている若者も多い。お給料は少ないかもしれないけれど、自分の人生を豊かにしたい、という若者はいて、そんな若者が集まってきます」
農家の求人は生産部門で野菜や米を作る職種が多いものです。でも、アグリスリーは野菜や米の生産だけでなく、営業や広報の仕事もあります。いろんな仕事で活躍することができます。それが魅力となって、新しい人材が集まる。そしてまた、新しい可能性が広がるといいます。
そのため、毎年、明治大学や東京農大、早稲田大学などから年間で100名程が農業体験に参加するようになりました。

父親から受け継いだ農業をただ、継続するのではなく、夢を持って取り組んでいく。だから可能性が広がっていく。實川さんは日本の農業を変えていくひとりだといえるでしょう。

コミュニティカフェ&農家のキッチンラボ farm to


 

株式会社アグリスリー
 

元パティシエが目指すカッコいい農業【前編】「清潔感のある農業」はコチラ!

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