新しくなった「JAS」。そもそもどういうもの?
JASは、成分や性能などについて一定の基準を満たしたモノ(農林水産品、食品)に与えられてきた規格です。例えば、しょうゆだと、見た目や風味などの「性状」のほか、色の濃さ、特定の成分の割合などによって「こいくち」「うすくち」「たまり」「さいしこみ」「しろ」に分類され、さらにそれぞれに特級、上級、標準があるなど、測定方法も含めた細かい基準が定められています。ちなみに、JASは任意の認証制度のため、JASマークがない商品であっても流通させることはできますが、マークがあった方が消費者の安心感は高いでしょう。
「モノ」の“品質”の規格として活用されてきたJASですが、2017年6月のJAS法改正に基づき、規格対象が“品質”だけでなく、モノの生産方法、さらには「事業者」が行う保管・輸送といった取り扱い方法、サービス、経営管理などへと広がり、認証対象は「モノ」から「方法」、その基準を満たす「事業者」といったように、大きく拡大しました。
農家とどんな関係があるの?
新しい制度で、農家にはどのようなメリットがあるのでしょうか。例えば、花き分野では、“長く楽しめる切り花”の人気が高まっています。このため、日持ちする管理・出荷方法を生み出すことが課題となっていますが、従来の制度ではこうした取り扱い方法に対する標準的な規格がなかったため、花き農家の取り組みにばらつきがありました。こうした中、病害虫を防ぐ衛生管理や、切り花を傷みにくくする低温保管など、日持ちさせる製法がJAS法改正後第1号の規格として誕生。切り花を美しい状態で保管する製法の基準が示されたことで、優れた取り組みが普及しやすくなっただけでなく、「この花は日持ちする」というポイントを消費者や流通業者などに訴求することも可能になりました。
他にも、魚の臭み成分において統一的な測定・分析方法を規格化することで、統一された基準で臭みを比較することが可能になるため、臭みの出ない養殖技術のアピールに利用できるように。また、低温保管・輸送方法など事業者の取り扱い方法を規格化し、その技術を持つ事業者を認証することで、新鮮な品を届ける事業者としての売り込みが可能になったりと、法改正により、JASの活用方法は大きく広がりました。
また、新しい制度では、JASマークに「鮮度管理」「有機」など認証の理由を付けることができるようになったため、農家の人々は生産した商品がどうして認証されているのか、情報発信もしやすくなりました。日本の品質基準を満たしたことをアピールする「Japan Quality」や有機を表す「Organic」などの英語表記もできるため、海外市場でも品質面でどのような魅力があるかを伝えやすくなっています。
海外展開にもつながる
JASは国内の標準規格ですが、海外に目を向けると、世界各国で通用する食品規格「CODEX(コーデックス)」、製品や管理システムなど幅広い分野を対象とする国際規格「ISO」など、世界で通用する国際的な標準規格がいろいろあります。今後、新たな製品や管理方法などについてJASを制定する場合、国際的な標準規格の基準を取り入れ、海外の評価基準に適合させることで、海外でも評価されやすくなり、JASそのものの認知度も高まると期待されています。例えば、海外でグルテンフリーの食品に注目が集まっている中、グルテンの含有量が低いことを示すJASを制定する場合、CODEXの基準に合わせることで、海外の消費者にも特徴が伝わりやすくなるでしょう。
このようにJASの認証を受けることで、農家の皆さんの商品の価値や、生産に関する取り組みへの評価は一段と上がる可能性があります。関心がある人は農林水産省のホームページなどを見てみましょう。
参考
JAS規格:農林水産省
上記の情報は2018年8月9日現在のものです。