「営農型発電」とは?
営農型発電とは、農地の上空部分に太陽光発電パネルを並べて発電するなど、農業を営みながら発電を行うシステムのことです。実施する際は、風通しや日光量を確保して、作物の成長を妨げないようにすることがポイントとなります。このため、農地に支柱を何本か立て、藤棚のような設備を作り、天井部分に太陽光発電パネルを斜めに立てかけるように並べるのが一般的です。
茶畑やブルーベリー畑など、全国のさまざまな農地で導入例がある営農型発電。その導入が認められるようになった2013年、設備設置のための農地転用許可を受けた件数は97件でしたが、2016年は494件に増加、現在は合計で1000件以上となるなど、導入する農家も年々増えているようです。中には、売電により得た収入を活用してオーガニック野菜など付加価値の高い作物の栽培に取り組んだり、若手農家の育成など地元の農業戦略の資金に充てたりする農家や団体もいます。
メリット、デメリットとは?
営農型発電のメリットは、売電による収入を安定的に得ることができる点です。国の固定価格買取制度を活用することで、太陽光発電の場合は電力会社が20年間、電力を一定の価格で買い取ります(※)。農家にとっては副収入を得られる手段となり、所得向上が期待できるでしょう。また、太陽光発電パネルを設置していない状況と比べて日陰が多くなるため、収穫など炎天下での農作業が楽になったり、パネル設置によって乾燥を防ぐことができるため、散水作業が楽になったという事例もあります。
一方で、デメリットはあるのでしょうか。営農型発電を行う場合、農地を農業以外の目的で使用することになるため、市町村の「一時転用許可」を取得する手続きが必要となります。この際、農作物の成長に必要な日照量が確保される設計とすること、農業機械が稼働できるよう支柱は高さ2メートル以上、といった要件を満たさなければなりません。許可を受けた後も毎年、農作物の収量などについて報告しなければならず、一定の事務的な手間は増えることになります。
※ なっとく!再生可能エネルギー(固定価格買取制度):経済産業省 資源エネルギー庁
耕作放棄地の解消にもつながる
営農型発電には事務的な手間が伴いますが、収入アップという個々の農家のメリットにとどまらず、近年、高齢化や後継者不足の影響から増加傾向にある耕作放棄地の有効活用につながる手段としても期待されています。
営農型発電は、農業収入だけではなく売電収入も得ることができます。耕作放棄地に取り入れることで、国内の自然エネルギー活用の拠点を増やすことはもちろん、私たちの生活に欠かせない食べ物を育む農地として蘇らせるという、一石二鳥の解決策として期待が高まっています。このように、営農型発電は農家の収入を安定させるだけではなく、地方創生の一翼を担う取り組みとしても注目されているのです。
上記の情報は2018年7月9日現在のものです。