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販路開拓のためにネットで売れる仕組みを作ろう

連載企画:儲かる農業特集

販路開拓のためにネットで売れる仕組みを作ろう

手間暇かけて作った農作物、その新たな販路を開拓したいと思ったら、インターネットで売れる仕組みを自分で作るという方法があります。インターネットの利用者は年々増え続けていて、ネットショッピングの利用率も上がっています。農作物についてもインターネットでの販売需要は高まっています。中には大きな利益を出す農家さんもいますが、やみくもに始めては、逆に損失を出すことになってしまいかねません。今回は、農作物をインターネットで販売するうえで注意する点や工夫できることなどについて、ネット販売アドバイザーの高口大樹さんに話を聞きました。

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高口大樹(たかぐち・ひろき)さんプロフィール

1986年生まれ、香川県出身。埼玉県小学校教員を3年、島根県小学校教員を3年務め、ネット販売アドバイザーとして起業。販路を拡大したい農家さん向けのサポートや、ホームページ作成、ブランド立案などを手がける。2017年3月に書籍を出版し、セミナーの講師なども務める。
ブログ「知識ゼロから始める農家さんの野菜ネット販売」

農家さんたちはなぜネット販売を始めるのが難しいのか

ネット通販農家
——農家さんたちがネット販売について難しいと思うのはなぜなのでしょうか。

まずは、どうやってネット販売をすればいいかという情報がまだまだ少ないことが理由として挙げられます。インターネットをよく知らない農家さんでもわかりやすい、簡単な言葉で説明しているものはほとんどありません。販売代行を請け負ってくれるものはありますが、自分自身で始めるためのサポート体制が整っていないのです。

——地域や家族の中でネット販売に対して賛成、反対が分かれるという例もあるようですね。

農家さんは、地域に根差して生産や販売を行ってきた経緯があるため、これまでと違うことをするという点でのハードルはかなり高いと思います。実際に、後継ぎの子ども世代がネット販売を始めたいと言っても、親世代が反対するという事例もあるのです。また、地域で自分だけ違うことをするのに抵抗を感じてやめてしまうという人もいるようです。

スーパーマーケットで売るのとネット販売との違い(高口さん作成)

——ネット販売をすれば、必ず利益が上がるのでしょうか。

私はネット販売なら何でもいいとは思っていませんし、始めたら魔法のようにお金が稼げるものだとも思っていません。ただ、やり方を選べばネット販売は利益が出せるので、ぜひ取り組んでもらいたいと考えています。
小売店で農作物を売ろうと思ったら、図のようにその都度手数料がとられて、販売価格と農家さんが手にするお金には大きな差が出ます。しかし、ネット販売で自分が直接販売する場合は、販売価格がそのまま自分の利益になるのです。送料や梱包にかかる費用もあるため注意が必要ですが、きちんとした方法や価格で販売すれば、販路開拓は十分に可能で、実店舗を持つよりも簡単です。現状を変えたいという思いがあれば、ぜひネット販売を検討してみてもらいたいですね。

「ネットショップ」ではなく「ネットで売れる仕組み」を作ろう

ネット販売開始で売り上げが約12倍にもなった「那覇マンゴー園」のHP

——まずネット販売をしようと思ったら、何から始めればいいのでしょうか。

私がサポートさせていただいている「那覇マンゴー園」という沖縄の農園は、ネット販売を始めてから約3年で売り上げが約12倍にもなり、販路拡大に成功されています。園主の那覇さんは初めパソコンに詳しくなくスマホも持っておられませんでしたが、販路を拡大したいと考えて私に依頼されました。
そこで、まずはブログを開設して日常的に書くことから始めてもらいました。パソコンで文章を書くことに慣れてもらいたかったのです。また、那覇さんは自らフリマアプリに出品されていましたが、お客さんとのやり取りや、梱包、発送という流れを学ぶうえでとても有効だったようです。今では那覇さんもすっかり発信することに慣れて、楽しみながら販売を継続しておられます。商品は毎年、予約期間中に売り切れてしまうほど人気を集めています。

——ネット販売というと、フリマアプリや大手ネットショッピングサイトに出店するのが一般的かと思うのですが、やはり自分のホームページを作らなければいけないのですか。

こうしたアプリやサイトはもちろんメリットもあるのですが、手数料や維持費がかかるということについて、きちんと認識しておく必要があります。また、多くの商品から選んでもらうために価格を安くしなければならず、自分で決められない不自由もあるかもしれません。結果的に、手元に残る利益がほとんどないということもあり、販路拡大が失敗に終わるケースも見ました。ネットでの売り方を学ぶために短期間行うのであれば、とても有効な方法だと思いますが、必ずその先は自分で「ネットで売れる仕組み」を作ってもらいたいと考えています。

農作物の強みを伝えて安売りしすぎないことが成功の秘訣

那覇さんのホームページには本人の顔写真も掲載

——ホームページを作るのには、費用も手間もかかるので難しいと感じる人も多いですよね。

確かに初期費用は必要ですが、一度ホームページを作ってしまえば、数年~10年程度はメンテナンスをしながら利用できるため、その間に回収すればいいわけです。農家さんには「農作物を効率よく、品質を高く収穫するための投資はいとわないが、販売にはお金をかけたくない」という人が多くいらっしゃいます。しかし、儲かる農業の実現のためには販売に投資することが必須だと言えます。ホームページを、農園運営における仕組みの中心に据えることで、直売所に置いたチラシから誘導したり、レストランやメディアからの連絡の窓口になったりと、今よりもぐっと販路の幅が広がります。ぜひその価値について理解してもらいたいですね。

農作物を作るうえでのこだわりについてしっかりと説明する

——ホームページを作成するとなったら、どのようなことに気を付ければいいですか。

「ネットショップ」を作るのではなく、あくまで「売れる仕組み」を作るということ。つまり、自分が作っている作物の魅力を伝える「メディア」を作って、そこに購入してもらえる仕組みを備えるという認識が大切です。そのためにはまず自分が作る農作物の強みを把握しなければならないので、どんなお客さんがどんな目的で買うのかを分析してみましょう。自分でわからなければ、親戚や知人に贈ってみて、率直な感想を教えてもらうのもいいと思います。そうした自分の商品の強みがわかっていれば、その後の営業活動にも役立ってきますよ。

マンゴーの切り方など、お客さんが必要な情報を提供する

——値段はやはり安い方がいいのでしょうか。

多くの農家さんは、一生懸命作った農作物に値段を安くつけすぎていると感じています。陽が出てから沈むまで毎日真面目に働いて、良い物を作ろうと必死に頑張っていても、「うちの野菜はただの野菜」と言う人もいるのです。
ネット販売においては、送料や梱包に費用がかかってくるので、予想以上に手元に残らないことが多く、単価を安くつけすぎないことが大切です。そのために必要なのが「ブランディング」。この商品にならお金も出していいなと思ってもらえるように工夫することが必要になります。どうやって作っているのか、どんなこだわりがあるのかなど、しっかりと情熱を伝えましょう。共感してくれるお客さんがきっと現れます。

これからの農家さんたちのネット販売戦略

——ネット販売は、お客さんと農家さんとの距離が近くなると言えそうですね。

ネット販売は一見顔が見えない距離の遠いやり取りと思われがちですが、直接販売できる、メールのやり取りができるという意味で、お客さんと農家さんとの距離がとても近いですよね。商品を送ったあとにも感想を聞くことができますし、リピーターになってもらうこともできます。
那覇さんは、大切に栽培してきた自分の農作物がたくさんの人に届いたことに驚かれて、感動しておられました。「自分の農作物は人に喜んでもらえるんだ」という自信を深めることにもつながったようです。

——これからネット販売はさらに拡大していくのでしょうか。いつが始め時なのでしょうか。

ネット通販の利用者はこれからもどんどん増えていき、ネットで農作物を買いたいという需要も、ますます増えていくと予想できます。農家さんたちには自分なりに発信できる仕組みを作り、販売についても学んだうえで、ネット販売を積極的に行ってもらいたいですね。そして、「ネットで売れる仕組み」を経営の柱の中心に据えてほしいと思います。
農業のジャンルでは、まだまだネット販売をしている人が少ないので、今こそ始め時だと言えるでしょう。販路拡大の選択肢として、ぜひ怖がらず飛び込んでみてください。

高口さんは、那覇さんがネットで売れる仕組みを定着させるまでの軌跡をたどった書籍を無料で配布しています。お申し込みの方はコチラへ!ぜひ那覇さんの成功例を参考にして、新たな販路拡大へとつなげていってくださいね。

【取材協力・画像提供】
タカグチデザイン 高口大樹
那覇マンゴー園

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