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国産割り箸は無駄使いではない! 林業ってどんな仕事?【林業を知ろう】

連載企画:林業を知ろう

国産割り箸は無駄使いではない! 林業ってどんな仕事?【林業を知ろう】

割り箸は木の無駄使いだと思っていませんか? 実は、国産割り箸に限って言えば、そうではないのです。日本人の知恵で誕生した割り箸は、木材として使えない端材(はざい)を有効活用したアイデア商品でした。国産割り箸は何からできているの? そもそも林業の仕事って何? 林業のイロハをわかりやすく解説します。

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割り箸は端材の有効活用

割り箸は「国産」か「中国産」

近年、日本では年間約200億膳もの割り箸が消費されており、そのうち9割以上が中国からの輸入品です(林野庁、2012年度森林・林業白書より)。でも、スーパーなどで割り箸売り場をよく見ると、中国産より少し値段の高い「国産の割り箸」も売られています。

私たちが使っているような形の割り箸が誕生したのは、明治時代だと言われています。奈良県の吉野で寺子屋の先生をしていた人が、たるの材料として使われていた吉野杉の端材を有効活用しようと考案したそうです。

赤い矢印で示した四角い部分は木材として建築などに使われます。周りに残るのが端材です

現在でも国産の割り箸は、丸太から四角く木材を切り取った後の端材や、間伐材(かんばつざい)からできています。日本では、割り箸を作る目的で木が伐採されることはまずありません。さて、間伐材とは何でしょうか?

間伐材とは?

林業

「間伐材」という言葉を聞いたことはありますか? 森林は、木が密集しすぎると枝葉に覆われ、日光が差さなくなります。手入れをしなければ森は暗くなり、風通しも悪く、病害虫が増えていきます。山が荒廃するうえ、建築に使うような太い木も育ちません。

そうならないように、適切に木を間引くことを「間伐」と言います。間伐によって切られた木が「間伐材」です。「間伐」は林業家にとって重要な仕事なのです。

林業ってどんな仕事?

では、間伐の他には、林業にはどんな過程があるのでしょうか? 日本の典型的な林業は、人が植林した「人工林」で「木を生産」する仕事です。天然林を伐採すると、人々の木材利用のスピードに森林の再生が追いつかなくなり、はげ山が増え、地すべりが頻発する可能性があります。そうした事態を防ぐため、日本では「人工林」における林業が仕事として成りたってきました。

「木の生産」とはつまり、木を育て、木を収穫することです。

木を育てる

では、木はどうやって育てられているのでしょうか。まず、苗木を植えつける植林からはじまります。

その後、苗木が草に負けてしまわないように、下草を刈る「下刈り」をします。くず、藤などのつる性植物が木に絡まった場合は「つる切り」をします。そして、木の成長とともに、適切に「間伐」を行います。節のない丸太を生産するために、枝葉を落とす「枝打ち」という作業もあります。

林業

木を育てると言っても、農業と大きく違うのは「かかる年月」です。お米なら、春に稲を植えて秋には収穫できますね。しかし、木は、苗木を植えてから収穫まで40~100年かかります。つまり、今収穫している木の多くは「おじいちゃん世代の人」が植えたものだと言うことです。

木を収穫する

木を収穫するというのは、大きくなった木を切り倒して森から運び出すことです。収穫の時期を迎えた木を伐採することを「主伐(しゅばつ)」と言います。

切り倒した木は、枝を払って丸太にする「枝払い」が行われます。続いて、必要とされる長さに丸太を切り分ける「玉切り(たまぎり)」をします。玉切りした丸太は林道沿いなどに設けられた「土場(どば)」へ一時的に集められます。

林業

土場に集められた丸太はトラックに積み込まれ、木材市場や貯木場に運ばれます。木はとても重く巨大ですので、切り倒すのにも輸送にも想像以上に高度な技術が必要です。

林業

これ以外にも、チェーンソーといった道具の手入れや重機のメンテナンス、作業道を作る仕事もあります。

国産割り箸が森林を守る

林業

日本は国土面積の約7割が森林です。そのうちの約4割が人工林で、人が手入れしなければ山は荒廃が進んでしまいます。木を生産するだけではなく、美しい森林を維持するためにも林業はなくてはならない職業です。

“使い捨て”の悪いイメージが強くなってしまった割り箸。実は、国産割り箸は本来捨てられるはずだった端材や間伐材からできていて、森林資源を有効活用した“エコ商品”だったのです。

割り箸に限らず、私たちが間伐材で作られた商品を買えば、林業家の収入源にもなります。それは日本の美しい森林を守ることにつながっています。今度割り箸を買うときには、どの地域のどんな木でできたものなのかチェックしてみてください。一膳の割り箸から林業を身近に感じ、林業をもっと知りたくなるはずです。

 
参考文献:「割り箸が地域と地球を救う」(創森社)、「図解 知識ゼロからの林業入門」(家の光協会)

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