【第4回】資産や負債の引継方法は?農業法人設立時の資産の移転

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【第4回】資産や負債の引継方法は?農業法人設立時の資産の移転

連載企画:明日を拓く農業経営

【第4回】資産や負債の引継方法は?農業法人設立時の資産の移転

最終更新日:2018年10月10日

第3回では、法人設立手続きについて解説しましたが、農業における法人設立する際には他にも大切なプロセスがあります。今回は個人事業主の形態から法人化する際に、個人の事業用資産や負債をどのように法人に引き継いでいくか、また引継ぎの際の留意点について解説していきます。一口に事業用資産とはいっても、農業の場合、生物や果樹、機械装置、建物、土地など多岐にわたります。ご自身の資産・負債を法人にどのように引き継ぐのが適切か想像しながらチェックしてみましょう。

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主な引継資産

事業を開始するためには、様々な事業資産が無ければ経営を行うことが出来ません。個人事業を法人にした場合には、個人資産を法人に移動することで事業を継続することが出来ます。では、法人化の際に引き継ぎの対象となる資産や負債とは何でしょうか? 法人へ引継ぐ資産や負債としては、事業用の棚卸資産や固定資産、事業で借り入れた負債などがあります。業種により異なる部分もありますが、主なものを以下に挙げています。

1.資産

①棚卸資産(肥料、農薬、飼料、未収穫農産物、育成牛、農産物)
②農機具等(農業用機械、果樹、家畜など)
③建物、構築物等(牛舎、倉庫、ハウス等)
④土地

2.負債

借入金(農協、その他金融機関)

資産の引き継ぎについて

①棚卸資産

棚卸資産は、元の所有者である個人から法人へ有償で譲渡することとなります。個人事業者の棚卸資産を引き継ぐことになれば、農業所得の収入金額に計上することになります。
個人が消費税の課税事業者である場合は、消費税の課税対象になります。

課税事業者の判定図

②農機具等

農機具等については、個人から法人へ譲渡や貸付といった方法があります。
譲渡の場合、譲渡価額は時価となります。例えば査定における価額です。時価と帳簿価額とのかい離が少ない場合は帳簿価額で差し支えない場合もあります。
個人事業者の農機具等を引き継ぐことになれば、譲渡所得の課税対象になります。
個人が消費税の課税事業者である場合は、消費税の課税対象になります。
また、補助金で取得した資産などについては圧縮記帳(※1)後の簿価で譲渡した場合、その対価の額が時価の1/2未満の金額の時は低額譲渡に該当し、時価で譲渡を行ったものとして譲渡所得の計算が行われることとなります。所有権を移転することによって補助金の一部を返還しなければならない可能性もあるので、注意が必要です。
貸付の場合は、有償か無償(使用貸借)にするか決める必要があります。動産の有償貸付の場合は、雑所得の課税対象になります。

※1 補助金などで固定資産を購入した場合、その購入価格から補助金を控除したものを帳簿上の購入価格して記帳すること

③建物・構築物等

建物や構築物等の不動産についても、譲渡や貸付といった方法があります。おおむね、農機具等を譲渡した場合と変わりはありませんが、不動産の場合、譲渡すると法人の方で登記費用や不動産取得税が課されてきますので注意が必要です。
また、農機具等の賃貸借と同じように、有償賃借の場合には貸付をしている個人の方でも申告を行う必要があります。

④土地

土地については、貸付が一般的です。土地の貸付による収入は、個人の不動産所得の課税対象になります。
また、農地の場合は、農業委員会で新しく立ち上げた法人に対して利用権の設定を行う必要もあるでしょう。農地については、第6回の「農地所有適確法人」で詳しく説明します。

負債の引き継ぎについて

借入金

資産とともに借入金を重畳的債務引受契約(※2)により、法人に引き継ぐことができます。融資の対象になった資産と借入金を譲渡し、借入金も法人が返済していきます。

※2 債務の引受側(法人化の場合はその設立した法人)が、当初の債務者(法人化の場合は設立した個人)と連帯して債務を負担すること。

資産・負債の引き継ぎについての留意点

1.農業経営基盤強化準備金について

個人で積み立てている準備金については、法人へ引き継ぐことはできません。
残額は全額戻し入れ、収入計上することとなりますので、多額に積み立てている場合は税負担に注意が必要でしょう。

2.農地等に係る贈与税の納税猶予を受けている場合

農地等に係る贈与税の納税猶予を受けている場合には、法人の設立の際の農地の引継については注意が必要です。安易に利用権の設定などを行ってしまうと、納税猶予が打ち切られて贈与税の「納税」が発生する可能性があります。

3.消費税について

個人が消費税の課税事業者である場合、法人への資産の譲渡は、消費税の税負担にも留意する必要がありますので、どのような方法で資産を移していくことが最善なのか探る必要があるでしょう。
また、法人が取得する課税資産が多い場合などには、設立した法人があえて「課税事業者」を選択し、消費税の還付を受けるといったことも考えられますので、専門家に相談されたほうが良いでしょう。

4.引継資産と引継負債のバランスについて

個人から法人へ資産を引き継ぐ際には、そのバランスも重要となってきます。引き継ぐ資産の方が負債よりも大きくなる場合、法人の設立未払金(役員借入金)の多額な計上とその解消に苦労することも考えられます。この辺りもよく考慮し計画的に引き継ぐ資産を決定する必要もあります。

以上、資産の引継等について見ていきました。資産の移転や賃借の際には個人・法人間の契約など多くの手続が必要です。何か不明な点等がある場合には迷わず専門家に相談することをお勧めいたします。

 

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