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島根県が支援する新しい農業のカタチ「半農半X」

島根県が支援する新しい農業のカタチ「半農半X」

皆さんは、いま話題の「半農半X(エックス)」という言葉をご存じでしょうか。これは、農業と農業以外のやりたい仕事(X)を組み合わせたライフスタイルのことで、心にゆとりをもたらす魅力的な暮らしとして近年注目を集めています。今回は、半農半Xの支援を積極的に行っている島根県に、取り組みを始めたきっかけや具体的な支援の内容などについてインタビュー。同県で実際に制度を使って暮らしている半農半X実践者にリアルな声も聞いてみました。

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「半農半X」とは

農業

「半農半X」とは、農業を営みながら他の仕事にも携わり、その両方から生活に必要な所得を確保するライフスタイルのこと。この生き方は、半農半X研究所代表や福知山公立大学准教授などを務める塩見直紀(しおみ・なおき)さんによって1990年代から提唱されています。

近年、半農半X実践者のリアルな生活を描いたエッセイが出版されたり、塩見さんが執筆をした半農半X関連書籍が中国や台湾、韓国といった国々で翻訳されるなど、忙しい日々を生きる現代の人々にとって魅力的なこのライフスタイルは、国内のみならず海外でも注目を集めています。

「半農半X」をバックアップする島根県。その理由は?

農業

今回お話を伺った島根県では、2010年より「半農半X(当初の名称は“農業+α”)支援事業」を開始。“半農半Xとしての就農・定住”を希望する県外からのUIターン者のうち、「半農半X実践者」として認定を受けた人に対して、研修や定住・就農などに必要な経費の助成を行っています。また、県は、実践者が所得を確保して生活できるように、「地域からあっせんされた農地でアスパラガス栽培を行い約50万円の所得 + 冬の間は地域のスキー場へ勤務」といったような、地域に合った「半農半X定住モデル」の作成を行うなど、資金面以外からも実践者の支援を行っています。

このように島根県が半農半X支援事業に力を入れるのは、農業就業人口の減少や農業者の高齢化といった問題を解決するためであると、島根県農業経営課の小川さんは言います。

「中山間地域が多くを占める島根県では、農業の担い手確保が大きな課題です。そこで、心にゆとりをもたらす農のある暮らしへの関心が高まっていることに目を向け、従来の自営就農や雇用就農だけではなく、それぞれが多様なライフスタイルを実現できる『半農半X』型の就農を支援することにしました。移住から定住までの各段階において県が総合的な支援を行うことで、就農希望者の農村への定住・定着促進と、県内農業・農村の担い手の育成や確保を目指しています」

この取り組みの結果、2016年度の島根県の新規就農者数は173人と、2000年度以降で過去最多を記録したそうです。

半農半X実践者のリアルな声を聞いてみよう

酒造会社で蔵人として働く沼田さん

島根県で半農半Xを実践している人は、実際にどのような生活をしているのでしょうか。邑智(おおち)郡邑南(おおなん)町で「半農半蔵人(くらびと)」として暮らす沼田さんにお話を伺いました。

──始めに、「半農半蔵人」の具体的な暮らしについて教えてください。

私は、夏場に農業、冬場に酒造会社で蔵人として働いています。メインで育てている農作物は、キャベツ、トウモロコシ、ナスなどの野菜ですね。少しだけですが酒米も作っていて、勤めている酒造会社に卸しています。

──農業と“X”のお仕事につながりがあるんですね。沼田さんは、なぜ島根県で半農半蔵人をしようと思ったんですか?

半農半蔵人になる前は、地元の兵庫県でフリーターをしていました。東日本大震災をきっかけに、将来のことを考えて定職に就こうと考えた時、昔から漠然と興味のあった農業をやりたいなと思ったんです。しかし、どうすれば就農できるかがわからず、いろいろと手段を探していました。そんな時、島根県の半農半X支援事業を見つけて、助成金の面だけではなく、研修や就農後のアフターフォローがしっかりしている点にも興味を持って、県が行う就農相談会に参加しました。そこで、邑南町が勧めている「半農半蔵人」という定住モデルの話を聞いて面白いと思ったのがきっかけです。

──それで、移住を決めたんですね。農業は初心者からのスタートだったと思いますが、研修ではどんなことをしたんですか?

今は制度が異なるかもしれませんが、当時は、地域の農家さんのところで実際に1年間一緒に働かせてもらって仕事を覚えました。その研修先の農家さんがとても良い人で、技術や知識はもちろん、「農業で食っていくっていうのはこういうことだよ」という農家として大切な姿勢も教えてもらいました。本当にこの人のところに研修に行けてよかったと思います。

──素敵な出会いですね! 最後に、「半農半蔵人」として暮らしてみての感想をお願いします。

農業と酒造り、両方ともにとても奥が深い仕事で面白いと思います。それぞれの仕事のつながりを感じられるところに、やりがいも感じます。昨年、小さなタンク1本分だけ、自分が育てた酒米を使った酒の仕込みを任せてもらったのですが、その時は、酒米を育てている段階から「このお米だったらこういうお酒になるんじゃないかな」ということを考えながら造ることができて、すごく面白い経験ができました。

半農半蔵人として充実した日々を送る沼田さん。皆さんも半農半Xとして、島根県でゆとりある暮らしへの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

 
島根県は「半農半X」を応援します:島根県

情報は2018年9月時点のものです。

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