21日目の二十日大根
芽が、出ません。
意気揚々とまいたラディッシュの種でしたが、申し訳程度にいくつかの芽が出たほかは、新しいものが出て来ないプランターがあります。
種をまいて水をやったら、その後はできることがありません。芽が出るか出ないか、おみくじを引くような気分です。そして、今回のおみくじにはこう書かれていたのだと観念しました。
「待ち人来たらず、障りあり」——。
原因を探るべく、おなじみの“そーやん師匠”こと橋口創也さんにSOSを発します。
芽が出ない原因は?
今回の種まきのどこがいけなかったのか。手順を振り返りながら、間違い探しといきましょう。
土に問題は?
まずはプランターに土を入れました。ここは間違えようがないですね。
使用したのは2種類の土です。
A | 再利用の土 | 夏にキュウリを育てた時に使ったもの(日光消毒済み)
ヤシの繊維を使ったもので、ふんわりと軽い感じが特徴 |
B | 新しい培養土 | ホームセンターで買ったばかり。 |
種のまき方が悪かった?
プランターを土で満たしたところで、土の表面に溝を作って種をまきました。間隔はいいかげんです。むむ、ここがいけなかったのでしょうか。
きくち
そーやん
種まきの間隔はどうやらセーフです。
土のかぶせすぎ?
種をまいたら土をかぶせました。かぶせた土は2センチほど。芽が出なかった新しい培養土(B)は、水やり後に土の表面が固く締まった感触が少しありました。再利用の土(A)はすぐに芽が出たので、(B)の方は土の抵抗に負けて芽を出せなかったのかと心配になりました。
きくち
そーやん
うーん、これはアウトかセーフか判然としませんが、「空気」も重要な要素だと言うことが分かりました。
やっぱりこれが原因? 水やり
土をかぶせた後は、表面を軽く押さえて水をたっぷりやりました。プランターはベランダの厚い塀の上に置きました。
きくち
そーやん
きくち
そーやん
きくち
ア、アウト〜。ここのところ日なた至上主義者だっただけに、日陰に置くという発想は全くありませんでした。
そーやん師匠によると、この他にも土の温度が適温であることも大切だと言います。「水」「空気」「温度」の3つの条件が種の発芽にとって重要なよう。
考えられる原因について少し学んだところで、種をまき直すことにしました。
土ごとに水の浸透具合の違いを確かめる
土の異変に気がついたのは、種をまき直そうとして何気なく土を掘り返した時です。
土の表面は水で湿っているのに、掘り返した土の中の方がカラカラに乾燥していたのです。部分的に水が染みているところもあるようですが、大部分には水が浸透しないままです。なんと。これでは種に十分な水が届きません。
確かに表面に水が溜まることが気になっていたのです。そこで、試しにベランダにあった5種類の土をそれぞれプラスチックカップにとって、同量の水を上からかけて染み込み具合を確かめてみました。
A | プランターAの土と同じもので、前シーズンの再利用。 ヤシの繊維や細かいチップでできた軽い土。 |
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B | プランターBと同じもので、新しく買ったばかり。 赤玉土や鹿沼土にピートモスやバーミキュライトを加えた一般的な培養土。 |
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C | 細かくしたヤシの繊維や樹皮が原料。黒っぽく、しっとりしている。 | |
D | ヤシの繊維にチップや籾殻燻炭が混ざっている。しっとりしている。 | |
E | 草炭やバーミキュライトなど大小の欠片のようなものでできている。パラパラした感触。 |
結果は一目瞭然でした。
芽が出なかった土(B)を入れたプラスチックカップを横から見ると、水がしみているところと乾いたままのところがハッキリ見て取れました。浸透するまでしばらく時間を置いても同様でした。
もちろん大きなプランターに入れた場合とは条件が異なりますが、同じようにまだらに水が浸透していった可能性は考えられます。
ちなみに、キュウリの再利用の土を入れたカップ(A)にも驚くようなことが起きました。水が全面的に抜けていってカップの底に溜まってしまったのです。
これでは保水効果は期待できません。この土で芽が出たのは、適当に水やりをしていたことが、たまたま奏功したからでしょう。手を使って水と混ぜるようにすると、繊維質のものに水が染み込んで膨張する感じがありました。カラカラに乾いた状態の時には少しケアする必要がありそうです。
残りの(C)(D)の土にもヤシの繊維が含まれていましたが、袋に入った状態からしっとりと湿っている感触があり、水をかけるとすぐに染み込んでいきました。(E)は大小の粒状の欠片でできたような土で、これも染み込み具合に問題と感じる点はありませんでした。
この結果だけを見て、どの土が良い悪いと一概に言うことはできません。ただ、それぞれの土の特徴を知っておいた方が失敗を減らせそうだと言うことは分かりました。
徒長してしまう原因は?
一方、再利用の土(A)の方は、芽が出たものの必要以上に間延びした、いわゆる徒長した状態になってしまいました。なぜでしょうか。
そーやん師匠によると、徒長の原因は下の4つほどが考えられるそう。
(1) 日照不足
(2) 夜間の気温が高い(昼間との温度差が少ない)
(3) 夜間に土の水分が多すぎる
(4) 間引き不足
そーやん
きくち
そーやん
きくち
師匠の指摘を受けて改めて土の量を確認すると、確かに少ないのです。プランターの内側にあった「ここまで土を入れる」ラインに合わせて土を入れたつもりでしたが、実際に見た土の表面はそのラインよりだいぶ下。
種の上から土をかぶせることを考えて控えめに見積もってしまったのに加え、水やりで土が少し沈んでしまったためだと思われます。料理初心者が塩加減を控えめにしてしまうのに似ています。
また、(4)の間引きについても、もっと早く、十分に行わなければいけなかったと言えそうです。
待ちわびた発芽
芽が出なかった(B)の土は事前に十分に湿らせておいてから種をまき直し、土をかぶせて再び上から水をやることにしました。
種をまき直してから3日後、土の一部から芽が出てきました。さらに2、3日待つと徐々に芽が生えそろってきました。しかし、芽の出かたにはやはりムラがある様子です。
土には種まきの専用土もあるようなので、今回の土は種まきには向いていなかった可能性もあります。また、それぞれの野菜との相性などもあるのかもしれません。それにしても、種まき1つをとっても学ぶべき知恵やコツがこんなにあるなんて。
種まきの道は1日にして成らず。
ラディッシュ栽培も20日にして成らず。
野菜が豊かに実る菜園までの道のりは、ローマほどに遠いようです。
◆一歩進んで二歩下がる。次回はコンパニオンプランツの特徴を生かした種まきです。
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