コシアブラって何?
近年、都市部でも人気が伸びてきているとはいえ、コシアブラを育てようと思ったあなたはとても珍しい存在です。かなり好奇心旺盛な人なのでしょう。
一般的に認知されているとは言い難い植物ですが、コシアブラとは「ウコギ科ウコギ属」に分類され、沖縄を除く日本全土の、スギ等の人工的な植林が行われていない原生林に自生している樹木です。木材としての利用の他に、若芽を食用として採取されてきました。
同じ山菜でも、タラノメは普及が進んでおり、スーパーなどで手に入りやすくなりましたが、コシアブラを目にする機会はまだまだ少ないといえるでしょう。
現在流通にのっているもののほとんどが自生地の若芽を採取して出荷されたものばかりなので、専門的に体系化された栽培技術というものはほとんどありませんし、研究もあまり進んでいないのが現状です。
野菜や果樹のように栽培品種が生まれている訳ではありませんが、現在も食べられている数少ない日本原産の植物のひとつで、栽培が特別難しいということではありません。
コシアブラを植え付けるには?
もしあなたがコシアブラを栽培しようと思ったとき、「苗の入手」という最初のステップで大きくつまずくことでしょう。もしくは、すでに山に自生していたコシアブラを増殖したいと考えている人もいるかもしれません。
購入苗を植え付けるときの注意点
コシアブラに関する質問で最も多いものは、そもそも苗が根付いてくれずに枯れてしまうというものです。なかなかホームセンターなどでは手に入りにくいので、ネット通販などで購入して、元々の状態が悪いものだったという結論に至ることも多いのですが、以下のような原因も考えられます。
コシアブラの根は表面がつるっとしています。それゆえに定植の際に根鉢の土がぽろぽろと崩れてしまいやすいのですが、その際一緒に細根がぶちぶちちぎれてしまうことがあるのです。細根とは毛のように細いですが、根の最も重要な部位で、太い根は細根を支える土台にすぎないと言っても過言ではありません。
この細根の多くを失ってしまっては、後の生育に悪い影響を与えてしまいますので、強い作物とはいえ植え付けの作業は丁重におこないましょう。
インターネットで“コシアブラの苗”を検索してみると、分根された根だけが販売されているものを見つけました。分根を購入して根から栽培する場合は、次項をご覧ください。
分根での増殖方法
採種した種からの育苗や、取り木、挿し木という手法を使った増殖が推奨されていることもありますが、筆者は家庭菜園でのそのような手法は成功率も低いためおすすめしません。
ここでは根付きがよく、初期成育に優れた“分根”という方法を紹介します。
※ コシアブラを採取する際は、必ず土地の所有者に許可をとって下さい。また、国立公園などでは採取が禁止されています。
3月頃に山に入り、お目当てのコシアブラの木の根元を見てみると、“ひこばえ”と呼ばれる若木が地面から伸びているのが確認できるかと思います。栄養状態によっては生えていないものもあるかもしれませんが、ある程度大きな木であればすぐに見つかります。
その芽の根元を丁寧に掘り、根ごと親株から切り離して掘り上げます。掘った若木についている根が多ければ多いほど初期成育は順調になります。
それを持ち帰り、水につけておけば2~3週間ほどで展葉(葉を広げること)をはじめますので、それから植え付けをすると良いでしょう。
ひこばえが見付からなかった場合でも、地中の根だけを切り取って掘り上げれば、根だけでも増殖できます。
直径1センチ以上の根を長さ10センチほど切り取り持ち帰りましょう。この場合は、できるだけ若い木(1~3年目くらいの木)が採りやすく、生育も良いです。
持ち帰った根は、プランター等で鹿沼土や赤玉土、山土などに深さ2~5センチ程度、株間15センチで埋め込み、新聞紙やわら、落ち葉などを被せます。乾かないように水やりをしていれば、1~2カ月で発根し、発芽が確認できますので、苗木の完成です。
春に出来た苗木は、その年はポットでの育苗に努め、落葉後の12~2月に植えつけましょう。
場所は選びません。日当たりが良いに越したことはないですが、半日陰でも充分生育します。
コシアブラに必要な肥料や収穫方法は?
肥料
自然の山の中で、日本の気候そのままに生育する作目ですので、地植えであればそれほど肥料に気を使う必要はありません。
厳密な施肥設計はまだ分析されていないため、現在(2018年10月時点)分かる指標は経験や推測に基づくものです。一般的な落葉樹に準じて12月頃に、元肥として、窒素成分8%の有機肥料で施用するとすれば、おおよそ1樹あたり500グラム程度の施肥で充分だといえるでしょう。油かす1キロ程度に相当します。
収穫
収穫はとても簡単で、素手で簡単に摘み取ることができます。4月~5月中旬の、タケノコ(孟宗竹)の季節とほぼ同じ時期に、萌(も)えてきた若芽を摘み取ります。特に頂芽(ちょうが:枝の一番先端の芽)が風味豊かでおいしいとされます。あまり採りすぎて、萌えた芽がすっかりなくなってしまい来年の芽がなくなるなんてことがないように、頂芽だけを採って食べるのが来年の芽を増やすバランスの良い収穫量です。
植物には“頂芽優勢”という習性があり、先端部分に栄養素や糖分を集中して送り込むようになっていることが多いです。
特に生食だとえぐみを感じるような食材(タケノコやレンコンなど)の先端部分(レンコンでは第1節にあたる)は軟らかく甘味もあり、栄養たっぷりなので、先端部分は他人に食べられるより先に奪ってしまいましょう!
コシアブラの剪定(せんてい)方法
コシアブラは収穫も剪定もせずに育てると、10メートルの高さにまで達するという植物です。
しかし、収穫は主に頂芽を採ってしまいますので、栽培しているものであれば放置していてもそこまで大きくなることは少ないでしょう。
高くなりすぎないために剪定する、ということもありますが、剪定することで枝の数を増やすことができます。枝の数が増えるということはすなわち頂芽の数を増やすことにつながりますから、積極的に剪定しましょう。
収穫終わりの5月下旬頃に枝の全長の1/5程度で切り戻しておくと、最も栄養が集中する頂芽にいくはずだった養分が分散され、枝を多く確保できるようになります。
いろいろと書いてはおりますが、コシアブラはとても強い植物で、病害虫防除のための農薬散布などがほとんど必要ない栽培容易な品目です。春を彩る山菜を自分の手で栽培してみるのもまた一興でしょう。
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