ブルーベリーは作業が比較的簡易、かつ放任栽培でもある程度の収穫を期待できるのも魅力ですが、その最も大きな理由として、浅根性であるために、ポット栽培・プランター栽培に都合が良いこと、また成木化しても他果樹に比べて面積を必要としないことがあげられます。
下図が栽培暦になります。
ブルーベリーの品種選択のポイント
ブルーベリー栽培をはじめる前に知っておかなければならない一番大切なことですが、ここでくじける人や失敗する人が多いようです。
ブルーベリーの品種はとてもたくさんあります。苗木カタログを見ても、びっしりとカタカナが並んでいて、明らかに情報過多。どれを選べば良いのか分からなくなり手を出していない、という人もいるようです。
ブルーベリーの系統
栽培されるブルーベリーの系統を簡単に分別すると、「ハイブッシュブルーベリー」と「ラビットアイブルーベリー」の2種類に分かれます。
ハイブッシュ系の品種は耐寒性があり、本来は暑さに弱いとされます。
一方ラビットアイ系の品種は耐暑性があり、寒さに弱い傾向があります。
さらに「ハイブッシュ」の中でも「ノーザン(北部)ハイブッシュ」、「サザン(南部)ハイブッシュ」という2系統に分かれます。これは原産国アメリカの北部の品種か、南部の品種かといった区別です。
基本的にはハイブッシュといえば「ノーザンハイブッシュ」を指します。最も種類が多く人気の系統です。しかし先述の通り暑さに弱い。
品質の良い「ノーザンハイブッシュ」を暑い南部でもつくるために生まれたのが「サザンハイブッシュ」です。
日本で言うならば、東北や北海道であればノーザンハイブッシュが栽培できます。
西日本ならばサザンハイブッシュも適していますが、育てやすさの面で、ラビットアイの品種がおすすめです。
受粉させるためには、必ず2本以上の木が必要です。ブルーベリーの実がならないんです、という相談が多いですが、1本だけ、というパターンと、全く同じ品種を2本、といったパターンがほとんどです。
ラビットアイを植え付けるなら、ラビットアイ系統の中から別品種を2本以上選択しましょう。
ブルーベリーを植え付けるときのポイント
次に失敗が多いのは、植え付け時の土壌改良です。
ブルーベリー栽培において留意しておかなければならない最も特異なことは、土壌の適正pHの低さです。他の野菜や果樹での適正pHは6.5~7.0前後が多いのですが、ブルーベリーの生育に適したpHは、ハイブッシュでpH4.3~4.8、比較的育てやすいラビットアイにおいてもpH4.5~5.5と、強酸性土壌になります。
日本の土壌は酸性に傾きやすいので、一般的な作目の栽培では石灰など強アルカリ資材を投与しますが、ブルーベリーでは、「ピートモス」という強酸性の資材を大量に使います。
① 植穴を深さ40~50センチほど掘ります。
② 掘り上げた土に30リットルのピートモスと、50リットルのもみ殻やチップなどの有機物を混ぜ込み、埋め戻します。ピートモスは高価な資材ですが、余裕があればピートモスの量を増やした方が安心です。
③ 苗木の根を広げて深くなり過ぎない位置で固定します。この時に添え木も差しておきます。
④ 残った土をかぶせて高く盛り上がる格好にし、大量の水を散布して根と土を密着させます。
品種の選択と、土壌改良にさえ手を抜かなければ、あとの管理は放っておいても収穫だけできる、と言ってしまってもよいくらい栽培が簡単な果樹です。
肥料
元肥だけでも生育に不満を感じる方は少ないと思います。
有機肥料8-8-8の場合(数字は窒素・リン酸・カリウムの含有率を示す)、露地植えでは年間150グラム程度と、ブルーベリーは果樹の中でもかなり要求量が少ない部類に属します。
3月の中~下旬頃の花前の時期に100グラム程度を元肥として散布します。栽培暦のグラフに示している、5~6月の急激な生育を助けるのが主な目的です。
5月中旬~下旬頃に散布する追肥は、結実している果実の肥大促進と、8月におこなわれる花芽分化(来年の花をつくる作業)を助けるために、おおよそ30グラム程度。
来年4月の開花や新梢(しんしょう)のための貯蔵養分は秋に蓄えられるので、来年の初期成育のために、8月にも20グラム程度の追肥をします。
ブルーベリーの収穫や剪定(せんてい)のコツ
収穫
収穫時期に入ったら、毎日が理想ですが、少なくとも5日おきに収穫しましょう。ブルーベリーは一粒ずつ熟していきますので一粒ずつ収穫します。収穫適期は全体の果色がブルーになってから5~7日後です。まだピンク色が残っているときに収穫すると糖分が足りておらず、酸味を強く感じます。
適期に収穫すると、手で優しくつまむだけで収穫することができます。
有機物マルチング
ブルーベリーは特に有機質の多い土壌を好みます。
落葉期の間に株元に、堆肥などの有機物でマルチング(地面を覆うこと)をしてあげましょう。
剪定
ブルーベリーの剪定は簡易なものです。
基本的には枯れた枝や、強すぎる枝(地際から発生する“サッカー”や、幹から発生する“シュート”など)は優先的に根元から切除します。勢いが強すぎる枝には花芽が付きにくいですし、その枝にばかり養分が優先して送られ、本来良い実がなるはずだった他の枝に養分が行かなくなってしまいます。
かと言ってサッカーやシュートが一本も出ていないということは、その木の栄養状態に問題があるということです。植え付けてから3~4年の間は出ませんが、5年目以降でもシュートが発生しない場合は施肥量を増やしたり、ブッシュ状になった全部の枝を半分近く刈り込んだりして樹勢回復に努めます。
また、下垂した弱々しい枝も切除します。
日陰を多く生み出している内向きの枝を間引き、木全体の内側が透いて風通し、日当たりが良くなるよう、落葉している休眠期に剪定します。
葉がない時には充分透いているように見えるかもしれませんが、それぞれの芽から新梢が発生し、葉が展開することまで考えて切っていきましょう。
図はブルーベリーの“結果習性”です。花芽は勢いの弱くなった枝の先端部分に集中していますので、花芽を全部切り落としてしまわないように注意してください。剪定の際は、結果習性を意識して切る枝を決めるとよいでしょう。ブルーベリーの花芽は、見ればすぐに判別できるほど葉芽に比べてふっくらとしています。
以上がブルーベリーの育て方です。ブルーベリーは植え付けさえ間違えなければあとの栽培管理はなんとなくできてしまうものです。なかなか生育が芳しくないと思う方は、pHが維持できているかを測ってみると良いでしょう。