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スマート農業はここまで来た 次世代農業人「スマートファーマー」とは何か

スマート農業はここまで来た 次世代農業人「スマートファーマー」とは何か

最終更新日:2018年11月06日

今年、「スマート農業のすすめ~次世代農業人(スマートファーマー)の心得~」という書籍が産業開発機構から発行されました。著者は日本農業情報システム協会の理事長・渡邊智之(わたなべ・ともゆき)さん。自身がスマート農業を10年間追い続けた知見をまとめました。企業・農業生産者・省庁・大学と異なる視点から仕事をしてきた異色の経歴を持つ著者が考えるスマート農業とは。渡邊さんに伺いました。

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次世代農業人「スマートファーマー」に向けた書籍

スマート農業

著者の渡邊智之さん

スマート農業の黎明期から現在までを知る著者

書籍「スマート農業のすすめ~次世代農業人(スマートファーマー)の心得~」(発行:産業開発機構)は、2018年5月に発行されました。
2017年に、出版社からの投げかけを受けて、渡邊さんが企画提案したところから執筆が始まりました。
渡邊さんはもともと富士通株式会社に勤め、医療・動物医療に関するイノベーション創造のための企画立案を行っていました。
それまではまったく農業の世界に縁がなかった渡邊さんでしたが、2008年、あるきっかけからスマート農業に関わることになります。

企業・農業生産者・省庁・大学、それぞれの視点から

2008年5月、渡邊さんは宮崎県の農業法人、有限会社新福青果から「ICT活用による農業の効率化」について相談を受けます。
スマート農業という言葉すらなかった当時。経験も知識もなく、学ぶにも先人がいなかった渡邊さんは、農業の世界に飛び込むことにしました。新福青果の農場で播種(はしゅ)から収穫まで学び、“勘や経験”に頼る農業の実状を知ります。当時の苦労は、書籍の2章に詳しく描かれています。
その後、2012年5月からは3年間、農林水産省の職員として農業現場のICT利活用推進に係る業務を担当。2014年には、スマート農業の利活用推進や人材育成などを目的として「日本農業情報システム協会」を設立しました。さらに現在は、慶應義塾大学の研究員という顔も持っています。
農林水産省は、2019年度の新規事業として「スマート農業加速化実証プロジェクト」を挙げ、初年度として50億円を計上しました。このプロジェクトではスマート実証農場の実施計画を公募しており、日本農業情報システム協会では応募に向けた支援を開始するなど、蓄積された知見を広げる活動も行っています。

経験と人脈を基に執筆

こうした経験と、その過程で培った人脈を基に本書は執筆されました。掲載されている豊富な事例も、執筆前から縁があった企業ばかりだそうです。
本書は8章構成で、「生産だけでなく経営やICTおよびデータ分析スキルをもった農業生産者=スマートファーマー(渡邊さんの造語)」を増やすべく、この10年の経緯と現在、そしてあるべき姿や課題について、コンパクトにまとめられています。
ドローンや、AIによる植物工場といった話題の事例や、水田の水位を自動管理する装置など、今後の普及が見込まれると渡邊さんが予測する事例など、最新の情報も豊富に掲載されています。

スマート農業が生み出す“新3K農業”とは

スマート農業

スマート農業を俯瞰(ふかん)する

スマート農業を異なる立場から、この10年間見続けてきた渡邊さん。北海道から沖縄まで講演依頼があれば出向いています。
聴講者は主に企業人ばかりでしたが、ここ数年で農家も増えてきたそうです。聴講する農家は、事業承継を考える50代と、親から継いだ農業を刷新させたい20代・30代とに大きく分かれ、それぞれからの具体的な質問が増えてきたと言います。
渡邊さんが強調するのは、スマート農業の利活用により“新3K農業”が実現できるということ。これまでの「きつい、汚い、危険」という3Kから、「かっこよくて、稼げて、感動のある」新3Kです。
「ICTによりイメージがかっこよくなって、データ分析をすることで稼げるようになり、その結果によって感動が生まれます」。

スマート農業による未来像

本書では、現在実施されているスマート農業を4つに分類します。
「各種センサーを活用した遠隔統合施設制御」「GPSを活用した農業機械の精密制御」「スマートフォン、タブレットを活用した作業・生育管理」「POSと栽培・在庫情報連携による販売管理」です。
つまりスマート農業は、生産現場だけでなく、物流や販売といった消費者の口に届くまでの一連の流れをカバーしていくと渡邊さんは考えています。
さらに、農業者や流通・外食産業、そして消費者がそれぞれに役立つ情報が得られる「次世代食・農情報流通基盤(プラットフォーム)【Nober】」のプロトタイプ(検証)について、最終章の8章で紹介しています。Noberによって、例えば消費者が料理名からおすすめの野菜とその販売店を知ることが可能になったり、生産者とのマッチング、トレーサビリティの向上、フードロスの削減などを生むといった未来が本書では提示されています。

次世代の農業を見据える

スマート農業

経営ビジョンがスマート農業に結びつくことで結果になる

「スマート農業のことを話すと『ICTにすべてをやらせてしまって、考えない農業者をつくろうとしているのか?』と、よく言われます。しかし、ICTが出すのはデータからシミュレーションした答えです。選択するかどうかは農業者次第。ですから、結局考えることは増えるはずです。今まで勘や経験で行っていたことが、データがあることにより考えるようになります」
考えながら動くという、創意工夫に満ちた農業者像を渡邊さんは描きます。

多くの読者に向けて

本書は、スマート農業の全般的なことを知るための言わば「教科書」でもあります。農業者や企業はもちろん、これから農業に就こうと思う学生たちにも読んでほしいと渡邊さん。
「大学卒業者の就職先として、農業が選択肢に入っていない状況は良くない。本書で、これまでの農業と、これからの農業が違うということを知ってもらい、農業が大学を卒業後に就きたい職業だと思うようになってほしい」
スマート農業は、農業と農業者をどのように変えていくのか。多角的な視点から、現状を知ることができる一冊です。

◆渡邊 智之さんプロフィール◆
日本農業情報システム協会理事長。1993年富士通株式会社入社。医療・動物医療・農業に関するイノベーション創造に関与。「スマート農業ソリューション」の開発を主導。2012年より、農林水産省において農林水産現場の情報化推進担当。2014年にICTやIoT、AIなど「スマート農業」の利活用促進、人材の育成を目的とした「日本農業情報システム協会(JAISA)」を設立し、同協会の理事長を務める。

※ JAISA会員企業が提供する多彩な農業ICT機器サービスの紹介や、JAISAの全国ネットワークを活かしたスマート農業加速化実証プロジェクトの計画策定支援、事業実行支援を行っています。
詳しくは、ウェブサイトをご覧ください。

【関連サイト】
農林水産省 「スマート農業加速化実証プロジェクト」 Webサイト

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