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市場はこれからどうなる? 豊洲移転を機に考える卸売市場の未来

齋藤 祐介

ライター:

市場はこれからどうなる? 豊洲移転を機に考える卸売市場の未来

前の記事では、卸売市場の役割の現状について触れてきました。今後、ITやAIといったテクノロジーの発達により、卸売市場の果たす役割が減っていくと思われます。そのなかで、卸売市場はどのように変化していくのでしょうか。今回は、具体的な事例とともに卸売市場の未来像について考えてみたいと思います。
前記事:いま、卸売市場は必要か? 豊洲移転を機に考える卸売市場の役割

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築地にみる観光地としての市場

先日移転をした築地市場は、世界有数の水産物市場として、多くの国内外の観光客を魅了していました。見どころのひとつであったマグロのセリにはカメラを持った観光客が訪れ、今も場外市場には国際色豊かな観光客が人気店に列を作り、お土産を買っていっています。

前記事では、卸売市場を卸売業者同士の商売の場という形で説明しましたが、一般人にとっての築地市場のイメージは少し異なるようです。築地市場は卸売市場の本来の機能を失ってもなお、今まで培ってきた歴史から、観光地として発展していくことが考えられます。

このように元々市場だった場所が、主に観光地として使われている例は欧州でもアジアでも見られる光景です。全国的に市場取引額が減ることは間違いないので、築地以外でも“観光地としての市場”になっていく市場があるかもしれません。

物流拠点としての進歩のなかで重要な「コールドチェーン」

豊洲市場内の様子

商品の取引はITによりひとつの場所に集まらなくてもできるようになりました。しかし、物の輸送自体はなくなりません。市場の「集荷・分荷機能」は相変わらず必要とされ、さらなる発展を期待されていくでしょう。なかでも食品の物流では、後述する「コールドチェーン」が重要になります。

豊洲市場への移行の理由のひとつには、築地市場の設備が時代遅れになっていたことがあります。市場施設は壁がなく、外気とつながっていたため、温度管理などができず、衛生面でも問題がありました。その結果、衛生管理の国際基準であるHACCP(ハサップ)も取得することができませんでした。

豊洲市場は外気を遮断した閉鎖型施設です。そして、24時間低温度に管理する「コールドチェーン機能」を持ちます。コールドチェーンとは、物流の川上から川下まで衛生状況と鮮度を維持するために、冷たくして輸送するシステムのことです。閉鎖された形で低温維持をし、衛生状況をおこなうことで、HACCPの取得を目指しています。

もちろん、日本には宅配業者もあり、小売企業やIT企業が直接物流機能を持つことはあります。しかし、多くの企業にとっては大きな投資を伴う自社物流を持つことが難しいため、市場の「集荷・分荷機能」は引き続き進歩が求められていきそうです。

アフリカからの花も集まる、オランダのグローバル花き市場

豊洲市場のHACCP取得の目的は、輸出入の可能性を広げるためです。グローバル化が進む昨今、国内の流通だけではなく、国際的な物流・交流拠点として市場が発展していく姿を見越したものです。

その事例として、日本ではなく、オランダにある花き市場を紹介します。オランダといえばチューリップというイメージどおり、オランダの花き生産は歴史的に盛んです。そのオランダには世界最大の花き卸市場FloraHolland(フローラホランド)があります。

花き卸市場には世界各地から花の売り手と買い手が集まり、交渉をしています。同市場のアニュアルレポートによると、2017年の取引量は約47億ユーロ(約6000億円)と、日本の花卉市場である約4300億円(2015年、農林水産省調べ)のおよそ1.5倍にも及ぶ大規模な市場です。世界的な市場となっており、取引される花のうち約2割の約8億ユーロ分の売り先はケニアやエチオピア等の海外(アフリカ諸国が主)です。

FloraHollandは世界からの卸売業者を集められるだけの規模や施設を持っており、最新鋭のテクノロジーも導入しています。例えば、入札はトップ画像のように、大きな電子スクリーンを使って行っています。卸売業者はスクリーンの情報を見て、手元の電子端末により入札することができます。

入札した花は倉庫から各業者のトラックに、トロッコのようなロボットで輸送されます。発送施設はすべてコールドチェーンでつながっていて、品質を保ったまま、効率的な取引が可能になっています。

今回は観光・物流・グローバルというキーワードで、卸売市場の未来の姿を考えてみました。新しい文化とテクノロジーによって新しい姿が求められる卸売市場。変化をチャンスと捉えた、魅力的な市場が生まれるとうれしいですね。

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