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海外ベンチャー事情 〜農業×フィンテック〜

齋藤 祐介

ライター:

海外ベンチャー事情 〜農業×フィンテック〜

「フィンテック」という言葉を最近よくニュースで聞くのではないでしょうか。フィンテックとは「ファイナンス(金融)」と「テクノロジー」を組み合わせた造語で、お金に関わるさまざまな領域で新しいサービスを作っています。農業分野でもフィンテックを使った新しいサービスが生まれてきています。日本より規制の緩やかな海外ではフィンテックサービスの普及も早く、先進的な事例が次々と生まれています。本記事では、農業領域のフィンテックサービスの事例を紹介します。

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急速に広がるフィンテック

2015年以降から金融とテクノロジーを結びつけたフィンテックサービスが増えてきました。銀行などの既存の金融機関ではなく、ベンチャー企業を中心に、電子マネーや決済から、資産運用や融資まで幅広く新しいサービスを生み出しています。

規制が多く、新しいサービスが生まれづらかった領域ですが、近年テクノロジーの普及と政府の規制緩和が進み、急速に市場が拡大してきました。矢野経済研究所によると、国内フィンテック市場規模は前年度から1割以上の伸びを見せ、2017年度には1兆円を超すと予想されています。

日本でも広がりつつあるフィンテックサービスですが、日本よりも規制が緩やかな海外に目を向けると、より多様なサービスが既に存在していることがわかります。そのなかから農業に関わるフィンテックサービスを紹介します。

中国最大IT企業が進める農業金融

阿里巴巴(アリババ)集団という中国企業をご存じでしょうか。元々は、中国で最大規模のECサイトを複数運営する企業で、現在は多角化し、フードデリバリー事業や小売店、決済事業等さまざまなITサービスを提供する中国最大手IT企業の一つです。中国全土にサービスを展開していることから、世界最大の小売・流通企業とも言われています。

決済事業である「アリペイ」はフィンテックの成功事例として、日本でもよくニュースで取り上げられています。いわゆるQR決済サービスで、スマホで店舗のQRコードを読み取ると、事前に購入した電子マネーで支払いができるサービスです。このサービスは中国全土に広がっていて、屋台ですら現金は断られ、このQR決済でしか支払いができないといった現象が起きています。

アリペイをはじめ、アリババのサービスは全国的に普及し、日々の生活に入り込んでいます。アリババが次にやろうとしているのが、大きく普及したさまざまな自社サービスを使って得られたビッグデータを活用した金融事業です。

小規模な小売店や農家は自らの信用力を証明する方法がなく、いままで信用がないとされていました。しかし、アリババのようなサービスにより日々ビッグデータが蓄積されることで、今までとは違った形で信用評価できるようになります。

このサービスは、アリババグループのアントフィナンシャル社配下のネット銀行「網商銀行(マイバンク)」により提供されています。農民向けの金融商品は「旺農貸」とよばれ、農産品会社や農村パートナーからの推薦というような農業独特の信用評価の仕組みを構築しているそうです。

アメリカで進む農業支援サービスを通じた信用評価

データ活用ではアメリカ企業も負けていません。前にも記事「なぜアメリカの農業スタートアップが多額の投資を集める事ができるのか」で紹介したファーマーズ・ビジネス・ネットワーク(以降、FBN)は、農業データをWeb上に記録し整理できるサービスを提供していますが、彼らも自ら保有するデータを使った金融事業を展開しています。

FBNでは、農業資材の売買ができるマーケットプレースを展開しています。そのマーケットプレースでものを買うときに割賦払いができるようになっているのですが、FNBユーザーは銀行より手間なく割安な利率での割賦払いができるそうです。

また、優秀な農家と判断されると、収穫物の売上の事前支払いが受けられるサービスもあります。FBNはいままで入力されたデータから、農家の能力を評価します。農業管理がうまくできているか、いままでの収穫量はどうか、収穫物の品質はどうなのか、データをもとに評価を行います。その評価をもとに、優秀な農家を見分け、その農家に対して最大25%の前払いを実行しています。

農業と金融は、一見かけ離れた産業のように見えます。しかし実際には、農業には土地や資材等多くの投資が必要となり、売上が立つまで数カ月かかるという、非常に金融の考えが必要な産業です。海外でも新しい動きに目を向けながら、日本の農業と金融がどう変わっていくのか考えてみるのも面白いかもしれません。

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