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低価格280円~でジビエ普及 神戸の立ち飲み「イノメ」に女性ファン続々!

連載企画:狩猟入門

低価格280円~でジビエ普及 神戸の立ち飲み「イノメ」に女性ファン続々!

今年の夏にオープンした神戸の「ジビエスタンドinome(イノメ)」は280円~のお手頃価格で本格ジビエが楽しめる画期的なお店です。イタリアンバル風の店内では女性グループや若いファミリーがジビエを楽しみ、口コミやSNSで話題となっています。なぜこのようなジビエ店が実現できたのでしょうか? お店を訪ね、マネージャーの武田健志(たけだ・つよし)さんに詳しく伺いました。

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「イノメ」の誕生秘話

ジビエ

左から「丹波篠山おゝみや」の加藤元(かとう・げん)さん、「イノメ」マネージャーの武田健志さん、料理担当の玉置勇(たまき・いさむ)さん。3人が中心となって「イノメ」を運営しています

──珍しいスタイルのジビエ店ですね。なぜ「イノメ」をオープンすることになったのか教えてください。

イノメの経営母体は、兵庫県の丹波篠山市で「天然シシ(イノシシ)肉」を販売する「丹波篠山おゝみや」という会社です。丹波篠山市は日本でも有数の高級シシ肉の産地なんです。高級シシ肉は、古くから食通に好まれてきた歴史があって、シシ肉を用いた「ぼたん鍋」は冬の味覚の最高峰と言われてきました。

しかし、その高価な価格帯は、若い世代にとって決して購入しやすいものではなかったんですね。「丹波篠山おゝみや」は顧客層を広げたいという課題を抱えていました。

──老舗のシシ肉店としても、顧客層を広げる必要があったのですね。

実は私、「イノメ」を立ち上げる前は、大手アパレルメーカーの飲食部門でマネジメントの仕事をしていたんです。たまたま趣味のバーベキューをする仲間内の友人だった「丹波篠山おゝみや」の加藤さんに相談を持ち掛けられ、「イノメ」の企画に携わることになりました。

「立ち飲み」というスタイルは3~4年前から飲食店業界でのブームになっていて、今も若い世代に人気があります。低価格で気軽に利用できるお店は、若い世代にとって魅力ですよね。スタンドタイプの居酒屋なら、今までジビエを食べたことのない人でも利用しやすいのではないかと考えたのです。

ジビエ

JR三ノ宮駅前のビル地下1階にある「イノメ」。多い時は40~50人ほどのお客さんが入店するとか

──なるほど、それで立ち飲みのスタイルに。でも、いわゆるサラリーマン向けの立ち飲みではなく、おしゃれなイタリアンバル風にした理由は。

ジビエって、男性向けのグルメというイメージが強いかもしれませんが、実際に食べてハマるのは女性が多いんですよね。それに女性にジビエを食べてもらうっていうのは、ジビエ業界全体の大きな課題だと思うんです。そのためには、女性が好むようなおしゃれな雰囲気のお店にするのは重要なポイントでした。今は、インスタ映えとかもありますしね。とにかく、まずは若い人や女性に食べてもらわないと、ジビエそのものが普及しないと思います。料理内容も、女性好みのものを多く取り入れるようにしています。

「高い、臭い」の誤解を解く!

生ハム

「本日のおすすめ」のメニューは毎日変わるそう(左)、イノシシのハモンセラーノ(生ハム)は「丹波篠山おゝみや」で加工したもの(右)

──おしゃれな店内も「イノメ」の魅力ですが、なによりもこの低価格がうれしいです。

若いお客さんを呼ぼうと思ったら、価格が手頃でなければいけないんです。1人あたりの予算を3000円程度と考えて、メニューは低価格に設定しています。でも、この価格で出せるのは「丹波篠山おゝみや」からお肉を入荷できるからなんです。「丹波篠山おゝみや」で販売しないホルモンなども「イノメ」では串焼きなどにして提供しています。

ジビエ

定番メニューはシシ肉が中心。“森のツナ”はシカ肉のことです

──お肉はすべて丹波篠山産ということですか。

イノシシとシカは「丹波篠山おゝみや」から入荷し、それ以外のお肉は、随時、全国各地から仕入れています。最近はお客さんからハクビシンを食べてみたいというリクエストがあり、ハクビシンを入荷しました。

──え!? ハクビシンですか……! 珍しいお肉はメニュー開発に苦労しそうです。

メニュー開発は料理担当の玉置さんがほぼ1人でやっています。玉置さんはイタリアンレストランなどで長年経験を積んできて、ジビエ料理に詳しいんです。アナグマやハクビシンなどの中型獣ですと丸ごと入荷するケースも多く、玉置さんが店内のキッチンで解体調理しています。

──イタリアンのシェフは解体もできるんですね……! 今までに調理しにくいものはありませんでしたか。

なかったですね。きちんと血抜きなどの下処理をして、性能の良い冷凍庫で急速冷凍されたお肉はどれもおいしいです。まれに、個体差になりますが、部位によってイマイチだったことはあります。

──下処理と調理の技術があるから、今どきのジビエはおいしいのですね。

冷凍の技術が向上したのは大きいと思いますよ。私はジビエの「高い、臭い」というイメージを払拭(ふっしょく)したいんです。低価格でおいしいジビエをたくさんの人に食べてもらいたい。ジビエ入門のお店として、より多くの人の誤解を解いていきたいです。

農地の周辺でイノシシなんかが増えすぎて農家さんが苦労してるってことも、農業関係者でなくても一般的に認識されてきましたよね。ジビエ業界に関しては、おそらく需要より供給の方が上回っている状況だと思いますから、まだまだこれからです。お店をオープンして4カ月しかたっていませんが、商売として手ごたえは感じています。

女性のジビエファンが増加中!

ジビエ

シシ肉のリエットと自家製パン380円(上)、シシ肉のハモンセラーノ(生ハム)580円(下)※価格は税別

──お店をのぞくと、いつも女性のお客さんでにぎわっているみたいです。家族連れもいますね。

女性は多いですよ。女性だけの2~3人のグループや、男女混合のグループもいます。リピーターさんは多いです。ジビエ好きの女性が、友人を誘って何度も来てくれるとか。男女のグループでも、男性より女性の方がジビエもワインも多く召し上がる傾向があります。お酒は断トツで赤ワインが人気ですね。

土曜日の日中は、お子さん連れの若いファミリーもいます。もちろん、一人でフラっと入って来られる男性のお客さんもいますよ。

──低カロリーで高栄養なジビエは、むしろ女性向けのお肉ですよね。私も、もっとたくさんの女性にジビエの良さを知ってもらいたいです。

ジビエには、自然界を走り回ってきた動物たちのパワーが詰まっています。冷え性や貧血気味の女性に良いと思いますよ。寒くなるこれからはジビエのシーズンです。旬のお肉が続々と入荷する予定ですので、ぜひ気軽に食べに来てください。

ジビエ

店名の「inome(イノメ)」は「イノシシの目」という意味だそう

 
ジビエスタンドinome(イノメ)

丹波篠山おゝみや

写真提供:ジビエスタンドinome

 
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