“おしゃれ農家”を目指すのは大変でした…
「『秋庭農園』を開業したのは、2016年4月1日のことです。青色申告に切り替えて、青年就農給付金(現 農業次世代人材投資資金)を申請しました」―と秋庭 覚さん。
それまでの3年間、覚さんは東京・銀座のレストランで料理人として勤めながら、就農準備として茨城県古河市の実家でお母さんとともに野菜を作って販売していました。料理人などの経験から、当初は野菜セットをレストランに向けて直販し、都心部のマルシェなどにも出店する“おしゃれ農家”を目指していたと話しますが、現実はそんなに甘くはなかったようです。
クタクタになるほどに忙殺された農作業と面倒な事務作業。そこに0歳児と1歳児の子育てが加わり、秋庭家は目が回るような毎日…。「やりたいことがキャパシティをオーバーしていました」と当時のことを妻の寛子さんが振り返れば、「無理をするのはやめました」と覚さんも頷きます。
そこで地元に戻って就農するにあたり、近隣の生産者の方などから栽培ノウハウを教わることができる水稲と、地域でたくさん作られているナスとブロッコリーを生産するという現実的な選択をし、そこに以前からお母さんが大切に育てていたというハーブの生産を事業計画に盛り込んでスタートしました。
「『秋庭農園』では、収穫したお米や野菜は基本的にJAに卸していますが、お米の一部分とハーブについては直販にすることで収益性の良い経営を目指しています」と覚さん。2018年の新米から、茨城県オリジナル品種の『ふくまる』のネット販売をスタート。さらに6次産業化の取り組みとして、元ハーブティーブレンダーの寛子さんがブレンドしたハーブティーや、BarやCaféなどに販売しているハーブのイエルバブエナ(本場キューバでカクテルのモヒートに使用されるミント)が好調だといいます。
今後の目標を伺うと、ふたりが目指しているのは「接客型の農業」だと話します。手始めに、体験農園を開設するために30aの畑を確保し、ビニールハウス1棟をコミュニティスペースに改修。そこでトウモロコシの収穫や芋掘りなど、子供も参加できるイベントやワークショップを開催しています。「農業を通じて、生活者との接点を大切にしたい」と笑顔のふたり―レストランで接客するように収穫後の楽しみ方を提供していくことが『秋庭農園』の目指すところのようです。
導入のきっかけは、『会計freee』のサポート体制。欲しかった時間を創出!
覚さんが就農する以前の帳簿管理は、お母さんが家計簿を兼ねてノートに手書きで行っていたそうですが、覚さんはそれをExcelで管理していたと話します。
「加工品の販売やワークショップの受講料といった事業所得もあるので、帳簿管理は複雑です。会計を勉強したくても、農作業が忙しく、独学で理解していくには限界がありました」と覚さん。さらに、就農3年目の2018年度からは、経理・会計業務を子育てが少しだけ落ち着いた寛子さんが引き継ぐことになり、使いやすく、簡単そうだとWebでチェックしていた『会計freee』を使うことにしたそうです。
導入の経緯をもう少し詳しく伺ったところ、マルシェで交流のある魚屋さんから「『会計freee』には、地域にアドバイザーがいるよ」という話を聞いたことが一番の決め手になったようです。freee株式会社のクラウド会計サービスには、全国各地の5000社を超える会計事務所が認定アドバイザーとして登録されています。「同じ画面を見ながら、その場で細かいところを教えてもらえるサポートがあるので助かりました。アドバイザーの会計士さんは、個人商店やスモールビジネスが専門の方で、時間単位の料金で見てもらうことができました」とサポート体制に安心した寛子さん。
さらに導入の効果も伺ったところ―「最近はBarやCafé向けのハーブの出荷が増え、請求書の作成・発送にも多くの時間が取られていました。田植えや野菜の収穫時期は、請求書の発送が遅れてしまうこともありましたが、その課題も『会計freee』で解決です。ボタンひとつで納品書を請求書に変換でき、さらにワンクリックで郵送までやってくれるんです。郵送代行サービスも活用することで請求業務に費やす時間が今までの3分の1に圧縮できたのは、大きな一歩。ネットバンキングとの連携で入金の確認もしやすくなりました。まだまだ、使っていない機能もたくさんありますが、レポート機能で、どの店がどの程度の量を買ってくれているのかが一目で分かり、ハーブの利益率の高さを再確認することができました」と、寛子さんは手間や時間の削減とともに、シンプルな経営判断にも活用しています。
「これまで確定申告の作業は、栽培が一段落した年明けにまとめて行っていましたが、それでもかなりの時間が取られてしまいます。今回は、『会計freee』を導入したことで、作業時間を圧縮して、その時間を農機具のメンテナンスやお取引先とのプロジェクトなど、来年の準備にあてたいと考えています」と覚さん。
経理・会計業務を引き継いだ寛子さんは、キャッシュレス化を進めつつ、まずは領収書とレシートの山から解放されるためにレシートなどをスキャナーで読み取ったり、スマートフォンで撮影し、画像化を進めています。そのデータを『会計freee』に読み込めば、AI技術の画像処理エンジンが数字の自動入力だけでなく、仕訳の提案もしてくれるので作業負荷を大幅に削減してくれます。また、経理用パソコンなど、ひとつの端末に依存しないのはクラウドサービスの強みです。
「農作業の休憩中、青空の下で寝転がってスマホで経理作業をするのが私の理想像です」と笑顔の寛子さん。
「農業経営者それぞれにやりたいことは異なると思いますが、経理や会計、人事・労務などの事務作業が、やりたいことを阻害する要因になっているのなら、ITとAI技術で効率化して、やりたいことだけに集中できる環境を作り、努力する生産者さんのサポートをしていきたいと思っています。さらに今回のバージョンアップ(2019年1月7日リリース予定)で農業所得の確定申告書の作成がより簡単に行えるようになります」とfreee株式会社の森さん。
最後に抱負を伺うと、「土や作物にふれることで、生きている実感を得られる場所にしたい」と覚さんが話せば、「やりたいことのベースはできているんです」と寛子さん。「栽培し、その先の事業を収益化するためには、自分たちで事業を興していかなければなりません。そのために、自分たちの経営は『会計freee』で管理していくことに決めました」―と力強く語るふたり。
その先のストーリーは始まったばかり。今後の『秋庭農園』の展開が楽しみです。
<取材協力>
秋庭農園
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茨城県古河市大山
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<お問い合わせ>
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