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これで失敗しない! プロに教わる、ジャガイモの育て方~大きく育てるコツを紹介します~【前編】

これで失敗しない! プロに教わる、ジャガイモの育て方~大きく育てるコツを紹介します~【前編】

ジャガイモは、南米アンデス地方原産のナス科の野菜。私たちが普段口にしているのは、丸い形に肥大した地下茎の先端部分です。いろいろな料理に使える上に、初心者にも育てやすい野菜ではありますが、大きく育てるにはいくつかのコツがあります。
東京都練馬区の農業体験農園「百匁(ひゃくめ)の里」の園主で、野菜づくりのノウハウを一般市民に分かりやすく教えるプロ、加藤正明さんに、ジャガイモの育て方を教わりました。
栽培の基本情報はもちろん、植え付けのコツや、植え付け後の栽培管理、収穫・保存方法までしっかりとお届けします。

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加藤正明さん

◆加藤正明(かとう・まさあき)さん プロフィール◆
東京都練馬区農業体験農園「百匁の里」園主。東京都指導農業士。野菜ソムリエ(ジュニア)。34歳まで民間企業に勤務した後、家業の農業を継ぐ。2005年に「百匁の里」を開園し、現在では150区画もの会員数を誇る。一般市民に野菜づくりのノウハウや野菜のおいしい食べ方を伝え続けている。NHK趣味の園芸「やさいの時間」では、番組開始時より栽培管理を担当し、後に講師も担当。著書に「加藤流 絶品野菜づくり」など。

ジャガイモの栽培スケジュールや基本情報を確認

植え付け時期

ジャガイモの植え付けは春が基本。暑さを嫌うので、2月下旬~4月上旬に植え付け、梅雨明け前には収穫します。
温暖な地域では秋植えも可能で、その場合は8月下旬~9月中旬に植え付け、11月下旬~12月頃に収穫できます。

ジャガイモ

ジャガイモの栽培カレンダー

病気など気を付けること

  • ジャガイモには、皮がザラザラし病斑ができる「そうか病」をはじめ、ウイルスや細菌による病気があります。土作りやタネイモを選ぶ際に注意し、予防しましょう。
  • 水分が多く腐りやすいため、水はけの良い土で育てましょう。
  • イモが光にさらされると、緑化して有毒なソラニンが発生します。株元に土を集めてイモの露出を防ぐ「土寄せ」をおこない、収穫後は保存方法にも注意しましょう。

大きなイモを育てるには、植え付け前の準備が大切!

事前の土作り

そうか病予防のため、植え付けの2~3週間前に米ぬかをまいてよく耕しておきます。米ぬかは、ホームセンター・米屋・スーパーなどで手に入り、ジャガイモのうまみ成分を引き出す効果も。

■加藤先生のワンポイントアドバイス■
「土はイモにとって栄養のお布団のようなもの。栄養があって微生物がよく繁殖したふかふかの土が、大きくておいしいジャガイモを育てます」

タネイモの下準備

ジャガイモは、親株となるタネイモから茎が伸び、その先端に新たなイモができます。初心者にも育てやすいのは「キタアカリ」。収穫量も多く、そうか病にも強い品種です。

用意するもの

タネイモ(※)、草木灰(そうもくばい)またはジャガイモ専用の切り口処理剤

※タネイモは、食用や自家栽培したものではなく、ウイルスなどに侵されていないものを園芸店などで購入します。腐敗や黒ずみがなくシワがないもの、しっかりとした芽が複数出ているものを選びましょう。秋植えの場合は寒さに負けてしまわないよう、50~60グラム以上のあまり小さすぎないタネイモを選びます。

(1)春植えの場合、大きいタネイモは、1片50~60グラム以上の大きさに切り分けます。芽の数が均等に付くように、「へそ」(親株とつながっていた部分の跡)を下にして、縦に包丁を入れます。小さいタネイモは、へその部分を削ぎ落とし、丸ごと植えます。少し傷を入れてやることで、成長力が増すのだそう。秋植えの場合も、切り分けずにへその部分を削ぎ落とし、丸ごと植えます。

【重要ポイント】
横方向に切ると、へその部分から縦に走っている内部の繊維を断ち切ってしまい、タネイモの水分・養分が外に流れてしまいます。必ず縦方向に切り分けましょう。

ジャガイモ

上部に飛び出ているのが芽、下部のへこみが「へそ」

ジャガイモ

タネイモの大きさに合わせ、適当な大きさに切り分けます。一番左はへそ部分を削ぎ落とした小さなタネイモ

(2)タネイモは切り口から腐りやすいため、草木灰を付けて予防します。皿などに草木灰を出し、切り口に灰を付けた後、指でさらって払い落とします。そのままにしておくと灰に水分・養分を吸い取られてしまため、きちんと払い落としましょう。

■加藤先生のワンポイントアドバイス■
「切り口を自然乾燥させる方法もありますが、数日かかる上に干し加減が難しいため、草木灰を使うのがおすすめです。草木灰なら殺菌もできるし、すぐに植えられますよ」。

ジャガイモ

草木灰は、切り口にうっすら色が残る程度に、しっかり払い落としましょう

いよいよタネイモを畑に植え付けます!

用意するもの

タネイモ、牛ふん堆肥、有機配合肥料(※)

※有機配合肥料は、うまみ成分のアミノ酸が豊富に含まれた、ジャガイモ用配合肥料がおすすめです。

植え付け

「大きなジャガイモを育てたいなら、タネイモを浅めに植え付けるのがポイント。浅植えすると土が軽く柔らかいため、イモにストレスがかからず大きく育ちます」と、加藤さん。

(1)土をよく耕し、柔らかくします。畝の幅は60~70センチほど。ジャガイモは弱酸性の土(pH5.0~6.0)を好むので、土壌酸度計などで事前にpHを測っておくと良いでしょう。

【重要ポイント】
根や地下茎は深く広く伸びるので、20センチくらいの深さまでしっかりと耕しましょう。

(2)畝の中央に、クワで深さ7~10センチほどの、浅めの溝を掘ります。

ジャガイモ

(3)溝の中に、切り口を下にしてタネイモを1つ置きます。切り口を下にするのは、芽が上向きに伸びるよう、またタネイモが腐りにくいようにするため。

(4)溝の土を崩し、おわん状にタネイモを覆います。後ほど投入する肥料が触れて肥料焼けを起こさないよう、土で守ります。

ジャガイモ

(5)残りのタネイモを植えていきます。株間は最低30センチは取りましょう。自分の足を利用して、次のタネイモの位置決めと肥料用のポケットを作るのが加藤さん流。溝の中に足を入れ、1つ目のタネイモを植えた先にかかとを置いたら、足先のあたりに2つ目のタネイモを植えます。これを繰り返します。

ジャガイモ

(6)タネイモを全て植え終わったら、1つの足跡ごと(=1株ごと)に、牛ふん堆肥1すくいと、配合肥料1つかみをまきます。

ジャガイモ

(7)クワで溝を埋め戻します。決して押し固めず、軽くふんわりと戻すように気をつけましょう。

【重要ポイント】
埋め戻した部分は、空気を含んで柔らかいため、雨が降ると土が下がって水がたまってしまいます。イモが腐る原因になるので、あらかじめ周囲より5センチほど高く盛り上げ、水がたまりにくいようにしておきましょう。

ジャガイモの大きさを決める重要な作業、「芽かき」

植え付けから3~4週間ほどたつと、タネイモから伸びた芽が地上に顔を出します。丈が15~25センチくらいに成長したら、1株あたりの芽の数を減らす「芽かき」をおこないます。芽の数が多いほど多くのイモができる反面、養分が分散するため、1個あたりのイモの大きさが小さくなってしまいます。ジャガイモを大きく育てるには、芽の本数を減らさねばならないのです。

■加藤先生のワンポイントアドバイス■
「Lサイズ(150~250グラム。7~9センチ程度)のイモを収穫したいなら2本、2Lサイズ(250~350グラム。12~15センチ程度)のイモを収穫したいなら1本だけ芽を残し、他の芽は抜いてしまいましょう」

芽かき

(1)残す芽を選定します。茎が太く、色の濃い丈夫なもの、病害虫のいない健康なものを選びましょう。

【重要ポイント】
地表に出ている茎の本数から芽の数を判断すると、誤って全ての芽を抜いてしまう恐れがあるので注意。複数本に見えても、地中で1つの芽から分かれたものである可能性があります。次の(2)できちんと確認しましょう。

芽かき

地上では2本に見える右側の茎は、実は1本の芽から分かれて伸びたもの。
確認せずに抜くと、せっかく伸びた芽が全てなくなってしまうことも……

 
(2)土の中に指を入れ、正確な芽の本数を確認します。もしくは土を少しよけ、茎を1本ずつ軽く揺すってみましょう。他の茎も一緒に揺れる場合は、同じ芽から伸びている証拠です。

(3)残す芽を決めたら、タネイモが一緒に抜けてしまわないように株元を手で押さえつつ、不要な芽を抜きます。

芽かき

しっかりと株元を押さえ、不要な芽を抜きましょう

芽かきが終わったら、追肥と「土寄せ」を。土寄せは定期的におこないましょう

追肥

イモを大きく育てるため、株間に有機配合肥料(「いよいよタネイモを畑に植え付けます!」の項参照)を30グラムずつ追肥します。

土寄せ

イモが光にさらされると、緑化して有毒なソラニンが発生します。イモが露出して日に当たるのを防ぎ、また株元に水がたまるのを防ぐため、土寄せをおこないます。

クワで根や地下茎を切ってしまわないよう、株から70センチ以上離れた、遠くの土をすくって株元に寄せます。一度に大量の土を盛ってしまうと、浅植えの意味がなくなるので注意しましょう。

土寄せは、芽かきの後だけでなく、収穫まで1~2週間おきに繰り返しおこないます。

いよいよ収穫の時!おいしい保存方法も教えてもらいました

収穫

葉や茎が枯れ始めたら、収穫適期(春作では5月下旬~梅雨明け前、秋作では11月下旬~12月頃)。完全に枯れてから収穫しても食べられますが、大きいイモほど「す」が入って空洞化してきてしまうので、葉が黄色くなってきた頃がベストです。

【重要ポイント】
収穫は晴天が2~3日続いた日におこないます。土が湿っている時に無理に収穫すると、カビが発生したり、イモが傷つき、菌が入って腐りやすくなってしまいます。理想は、晴れた日の午後3時以降。掘り上げたイモは日光を浴びて温まるため、あまり早い時間帯に掘り上げると、熱がこもって腐りやすいので注意しましょう。

(1)試し掘りをし、十分な大きさに育っているか確認します。まだ小さいようであれば、掘り上げずに大きくなるのを待ちましょう。

ジャガイモ

イモがまだ小さい場合は、大きくなるのを待ちます

(2)株元を手で持ち、イモを掘り上げます。土の中に残っているイモもあるので、手で探って全て掘り上げましょう。

(3)イモから根や茎を外します。500円玉よりも小さいイモはソラニンを多く含むため、食べずに処分しましょう。

(4)土を払い落とし、一時間ほど軽く日に当て土を乾かします。これは、泥がついた状態では微生物や細菌が付着したままになってしまうため。土を落としたいからといって、水洗いは絶対にNG。食べる直前に洗いましょう。

ジャガイモ

保存と追熟

収穫したジャガイモは、カゴ等に入れて風通しの良い冷暗所で保存します。日光だけでなく蛍光灯の光でも緑化してしまうため、遮光ネットをかぶせるなどしましょう。

■加藤先生のワンポイントアドバイス■
「10~14日ほど保存し、追熟させるのもおすすめです。収穫したての新ジャガももちろんおいしいですが、追熟させるとジャガイモに含まれるデンプンが糖分に変化し、甘みとうまみが増します。また違ったおいしさを楽しめますよ」

野菜づくりのプロ・加藤正明さんに、大きく育つジャガイモの栽培方法を教えてもらいました。初心者がつまずきやすいポイントについても詳しく教えてくださったので、ぜひ本記事を参考に、ジャガイモ作りに挑戦してみてください!

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  1. マイナビ農業編集部(勇崎) より:

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