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市場価格3倍のコメを販売、全国の若手農家1万3000人を束ねるリーダー【農家が選ぶ面白い農家Vol.1】

鶴田 祐一郎

ライター:

連載企画:農家が選ぶ面白い農家

市場価格3倍のコメを販売、全国の若手農家1万3000人を束ねるリーダー【農家が選ぶ面白い農家Vol.1】

いま、農家が会いたい農家に、農家自らがインタビュー! 農家による農家のラジオ「ノウカノタネ」のパーソナリティー・つるちゃんこと鶴 竣之祐さんが、約1万3000人の若手農家を束ねる「4Hクラブ」の全国会長・竹本彰吾(たけもと・しょうご)さんの半生に迫りました。珍しいイタリア米を栽培する理由や、札束の山を前に就農を決意した高校時代など、農家同士だからこそ突っ込める話題が満載です。それでは、つるちゃんの取材スタートです。

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つるちゃん

面白い農家企画・第一弾! 
今回のゲストは石川県の竹本彰吾さんです!
どうも~。はじめまして、竹本です

竹本さん

はじめまして! 早速ですが自己紹介をお願いします!
は~い。僕は竹本彰吾といいまして、石川県でお米を栽培している農業法人・たけもと農場の代表を務めています。それに、農業青年の組織である“全国農業青年クラブ連絡協議会”っていう団体の会長も務めています

農家の話によく出てくる“4Hクラブ”ってやつですね

竹本さんが会長を務める“全国農業青年クラブ連絡協議会”とは、通称4Hクラブと呼ばれる、20~35歳くらいの若手農家ばかりで形成される団体の全国組織です。
我々「ノウカノタネ」の取り組みも、4Hクラブをきっかけに生まれました。JAが母体となる“青年部”の集まりとは違い、完全に独立した農家のコミュニティーで、皆さん若くてやる気にあふれた農業者ばかりが所属しています。

平均価格の3倍! 高付加価値のイタリア米栽培とは

農家

たけもと農場の外観。「米作日本一」の石碑に貫録があります

竹本さんは普通とは違うお米を栽培していると聞いたんですが
そうだね、元々ウチは先代から普通ではない栽培に目を向けていて。親父は早くから“減農薬米”とか“特別栽培米”を作っていたんだよね。その他にも“有機JAS”の認証を受けて、時代に合わせた栽培をしていたんだ。でも僕の代からは完全にギアチェンジをして、イタリアのお米を始めた

イタリアのお米!? なにそれ? おいしいの?
う~ん、こう言っちゃなんだけど、炊いてもマズい(笑)

ええ~?? おいしくない?
そう。でもね、リゾットにすると独特のアルデンテの食感が生まれるんだ。日本のお米でこれは生み出せない。おじやみたいになっちゃう

あ~なるなる(笑)でもすごくニッチな分野ですね。
ちなみに米価の方は……、差し支えなければ
ウチから問屋さんに行くときは600円/1キロだね

え? じゃあ1俵(60キロ)で……(暗算中)
白米にすると1俵3万円くらいだね

高いっ! 普通のお米の3倍くらいしますね!
来年は全部の田んぼにイタリア米植えよう!
でも、売り先を探すのが大変だったんだ。自分で営業して回ってね。一軒の飲食店で扱う量は月3キロとかごくごくわずかなもので、とても在庫をはけさせることができなかったんだよ。そのときは途方にくれていたんだけど、運良くイタリア食材専門の問屋さんに出会えて、光が見えたんだ

ニッチな作物にギアチェンジをするという思い切った経営判断は、安易に真似をすると痛い目にあうのかもしれません。しかし、竹本さんのように他と競合しない商品を生み出し、自ら販路を開拓することで、コメ一本でもこれだけ儲けることができる訳です。
通常、輸入したイタリア米はキロ単価1000円近くするため、600円で売ったとしても買い手としては安い訳です。
目の付け所と、それを信じて動く行動力が、たけもと農場の大きな力と言えるのではないでしょうか。

家業の継承、竹本さん就農の経緯

ひとつ気になったのですが、それだけのことを竹本さん自ら動いて、
親父さんは何も言わなかったんですか? 
農家のこせがれにとっては、新しい経営手法をとるときに先代を説得することの難しさが一番のネックだという声が大きいですが
そこに関してはね、僕と親父には取り決めがあって。これはそもそも僕が就農を決めた経緯にも関係してくるんだけど

ぜひ聞かせてください
あれは僕が高校3年生のとき。部活が終わって、進路について考えていたときだった

一人の人間としてどう生きていくか悩みはじめる時期ですね
親父に自宅の客間へ呼び出されてね。僕と二人で膝突き合わせての、親父による一世一代のプレゼンがはじまるんだ。まずテーブルの上にドーンと出てきたのが、現金。札束

農家

画像はイメージです

すごい……。すごいアイキャッチになりますね。ちなみにおいくらくらい?
大体800万円くらいはあったかな。それを見せられて、「農家は儲からんとよく言われるし、初めはウチも生活が楽じゃなかったことはお前にも分かっとるやろうけど、あるとこにはある、ちゃんと稼いでいるんだ」ってね

ひえ~
そしてね、農業を継ぐってことは、ただ農作業を引き継ぐんじゃない。たけもと農場に関わる全ての人、お客さんや取引先、地域の方々、たくさんの人からたけもと農場に向けられた少なからぬ注目や期待に、農業を通して応えていくことを引き継ぐんだ、ってね。
そして、将来のことを決めるとき、お前の選択肢の中にたけもと農場を考えてくれないかって

なんというジョブズ級のプレゼン……。もうそれは当然
その場で継ぎますって言ったよね(笑)そして、10年で完全に経営移譲する約束をしたから、もう今は完全に僕が経営している。もちろん意見は言われるけど、一回言ったら終わり。それをどう判断するかは僕に任されてる

農業をなりたい職業ナンバーワンに! 竹本さんの目指す先

農家

農業について子供たちに伝える竹本さん

竹本さんはSNSなどを通して“農業をなりたい職業ナンバーワンに”というスローガンを発信されていますよね。すでに、竹本さん自身のキャッチコピーと言ってもいいと思いますが、これはどういった思いから発信し始めたんですか?
そうだねぇ。僕自身、農業をやるって決めたからには誇りをもってやっているし、他の仲間を見ていても、すごいアグレッシブな農業展開をしてるじゃない? それなのに世間の風潮としては“儲からない”とか“3K産業だ”とか言われていて……。農家自身にも、自分達って大したことないよなって雰囲気があることがすごく悔しくってね。それを払拭(ふっしょく)したい気持ちからだね

なるほど。そのためには具体的に何をしていきますか
具体的に今僕ができることとしては、今ある全国の若手農家組織・4Hクラブの取り組みをグッとレベルアップさせて、世間の認知度をあげたいと思ってる。例えば、いまはクラブ員だけが参加している、農業青年のプロジェクト発表とか意見発表を、多くの人の目に届くようにしたいと思っていて。自分の任期中にどうにかインターネットを通した動画での配信というところまで持っていきたいんだ

会長任期は1年ということですが、これだけ大きな全国組織となると、何かを変革するにはあまりにも短く感じます
大変だけどね(笑)

もしかしたら“農業をなりたい職業ナンバーワンに”という思い、竹本さんの親父さんが竹本さんにやったことと本質は同じなのかもしれないなぁと思いました。
竹本さんにとって、農業を“一番なりたい職業”だと思わせた訳ですし
なるほどねぇ、考えたこともなかったけど、そうなのかもしれないね

アツい思いで農業界全体を盛り上げようとする竹本さん。
自分の息子に魅力を伝えられない人が、他人に魅力を伝えられるはずがありません。
竹本家で引き継がれた思いが日本中に広がり引き継がれたとき、きっと農業は「なりたい職業ナンバーワン」になりますよ、竹本さん!

農家

「ノウカノタネ」収録の様子

たけもと農場

全国農業青年クラブ連絡協議会

▼竹本さんが出演した、農家による農家のためのラジオ「ノウカノタネ」は下記から無料で聞くことができます。

面白い農家1号「農業をなりたい職業No.1に」竹本彰吾さん

 
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若手農家3人組が配信 農業系ラジオ「ノウカノタネ」ってどんな番組?

 
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